イヤミスの極致!「鬼畜の家」

第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。
タイトル「鬼畜の家」に惹かれ、単行本発売後
すぐに読みました。

著者は深木章子さん。
弁護士の仕事をリタイヤして、還暦後描いた強烈なミステリー。
とても新人が描いたとは思えない設定と描写。
凄いインパクト!さらに読みやすい文体に一気読みした作品です。

文庫化された表紙が美しすぎます。

鬼畜の~

元刑事の探偵・榊原は、従妹から施設にいる北川由紀名を紹介される。
母親と兄が車ごと崖から転落死したのに、保険金がおりないという。
榊原は、その事件に興味を抱く。
そして彼女の口から語られる家族の真実・・・・。
「私の家は鬼畜の家でした・・・。」
保険金目当てで家族を手にかけてゆく母親。その母親も
自動車もろとも海に転落。末娘だけが生き残った。
母親による巧妙な殺人計画、娘への殺人教唆、家族の資産の収奪。
母親の所業はまさに「鬼畜」・・・・。
信じ難い、娘の語る「鬼畜の家」の全貌。

母親の狂態がクローズアップされ、ものすごいインパクト!
尼崎の事件を彷彿させる内容。

探偵・榊原が関係者から集めた証言と一人残された
由紀名の告白でやがて見えてくる事件の真相。それは
こうだろうと思い描いてた予測を見事に裏切り、さらなる
恐ろしい企みにつながっていた。

内容があまりに悪に満ちていてただ面白いというには残酷すぎる。
だが、いったいどんなラストになるのか・・・。
先が読みたくて止まらなかった。
だから、クライマックスの強烈などんでん返しには
思わず「え?!」と叫んでしまった。

結構前に読んだのに、鬼畜の母親の所業はすっかり
忘れていたけれど、どんでん返しの強烈さは
鮮明によみがえってくる。
ドロドロでイヤミスの極致ですが、怖いもの見たさの感覚で
読み出したら止まらない、驚愕のミステリー小説。

『鬼畜の家』
著者:深木章子
価格:¥730(税別)