東野圭吾さんの文庫新刊「禁断の魔術」を読みました。
単行本で発売されたときは、短編集。
その中の短編の一つである「猛射つ」を長編にした作品です。
教え子に対する、湯川教授の心意気にものすごく感動しました。
ある日、ホテルの一室で女性が大量出血し亡くなっていた・・。
物語はそこから始まる・・・・。
帝都大学理学部助教授・湯川学は、高校の後輩・古芝伸吾
が部長を務める物理研究会の新入生募集を手伝った。
入部希望が全くなく、今後の部活動の継続が危ぶまれ
非常に困っていたからだ。湯川のアイディアで斬新な
実験を行うことにした。非常に難解な理論にときどき
諦めそうになる古芝だったが、湯川の説明を熱心に聞き、
厳しいアドバイスにも耐えた。
その結果、斬新な実験パフォーマンスは大成功し、
部員が集まり、部活動は継続されることになった。
やがて、古芝は湯川が教鞭をとる、帝都大学へ入学した。
工学部機械工学科で学んでいたが、育ての親である姉が急死し、
古芝は大学を中退、町工場で働くことになる。
そんな頃、フリーライターが殺された。
彼は、代議士の大賀を追っていた事が判明。
さらに、大賀の担当新聞記者が古芝伸吾の姉だったことも判明する!
古芝の大学中退の事情を知り、湯川は古芝が働く町工場に行く。
残念ながら会うことは出来なかった。
だが、湯川の来訪を知った、古芝は失踪してしまう・・・。
古芝の失踪を知った湯川は、教え子の‘企み’に気づいてしまう・・・。
愛する姉を失った慟哭。
復讐に燃える教え子を湯川は救うことが出来るのか?
事件の発端、捜査過程、ミステリーとしての展開の仕方は
これ以上ないほど面白い。
しかし、この作品が傑作なのは、湯川と古芝の信頼関係
と教え子に対する湯川の姿勢だ。
湯川の教え子へのブレない愛情が描かれて、とても清々しい。
ガリレオシリーズでは、最高傑作になったのではないかと思う。
『禁断の魔術』
著者:東野圭吾
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥630(税別)