今年も江戸川乱歩賞受賞作が発売となりました。
受賞作は「道徳の時間」
著者は呉勝浩さん。
タイトルからして面白い!
呉さんは、タイトルにこだわりがあったそうです。
「この作品の始まりは、タイトルでした。」
と語られています。
主人公である、ビデオジャーナリスト・伏見が暮らす街で
「生物の時間を始めます」「体育の時間を始めます」などという
メッセージを残すイタズラ事件が連続で発生していた。
そんなころ、地元の陶芸家が死亡。その現場にも
「道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?」という落書き
が残されていた。
陶芸家は殺されたのか?イタズラ事件と陶芸家の死亡事件は同一犯なのか?
という疑いが強まった・・・。
そんな頃、伏見に13年前に小学校で起きた殺人事件のドキュメンタリー
映画の仕事が舞い込んできた。
その事件とは、小学生を含む300人の前で教育界の重鎮が青年に刺殺された事件。
犯人は、動機も背景も一切黙秘したままで無期懲役の判決をうけた。
だが、裁判の過程で「これは、道徳の問題なのです」とだけ語っていた。
現在と過去の事件には何かの繋がりがあるのか?
ドキュメンタリー映画の撮影中、女性ディレクターが証言者に
ある意図を持って質問しているが、一体何のためなのか?
伏見は憤りを感じながらも、現在と過去の事件の謎に挑んでゆく・・・・。
ミステリーで「謎が謎を呼ぶ展開」という言葉があるが
この作品はまさにそれ!
次々に謎が提示され、主人公がその謎に翻弄されてゆく。
それは読者も同じ・・・。
一体どうなっているの・・・・?
読み進むうちにその謎が解明されそうだが、またどこかの時点で
「え・・・?」となってしまう。
結局、最後の最後まで謎が解けないのだ。
なので、クライマックスはかなりの驚きです!
物語全体を覆う不思議な世界観にも魅了されてしまいます!
今年の乱歩賞も大収穫でした!
『道徳の時間』
著者:呉勝浩
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)