強烈なデビュー作二上剛氏「黒薔薇刑事課強行犯係 神木恭子」

講談社が主催の「第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト」受賞作
「黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子」。
著者の二上剛氏は、元・大阪府警暴力犯担当刑事という経歴。
退職後に本作品を描き上げた。
元刑事が描くリアリティあふれる警察小説だ!

黒薔薇

大阪府警の新人刑事、神木恭子は、ある会社の社長の刺殺事件の
捜査を担当していた。
神木が所属する強行犯係は、神木を含め6人の捜査員がいる。
神木は新人のため、主任の折原とコンビを組んでいた。
折原は、強面で女性刑事蔑視の傾向がある。
それゆえ、折原が大の苦手だった。
だが、係長の矢野が神木に期待していたため、何とか必死に
折原のセクハラまがい、パワハラまがいに耐えていた。
そんななか、この刺殺事件は決め手になる手掛かりが得られず
そろそろ3ヶ月が経過しようとしていた。
ある時、神木は酔っぱらった老人の「孫娘の行方が知れず、殺されてしまう」
という訴えを聞いた。酔っ払いなど放っておこうと考えたが、
クレームになるのは困ると思い、詳しい話を聞くこと、孫娘の
痕跡を調べてみようと考え、老人宅へ向かった。
そこで老人は、孫娘・リサとそのリサを連れ去った乾義男と
言う男について語った。その乾の話を聞いているうちに
神木は抱えている刺殺事件の手掛かりを得る。
神木の手柄で刺殺事件の解決を見る。
この働きで矢野係長、折原たちは、神木をようやく一人前の刑事として認める。
だが、事件が解決したのもつかの間、その老人宅の床下から
嬰児を含む死体七体が発見された!!
老人の供述から、次々と事件が白日の下の曝されることになるのだが・・・。
二つの事件の背後に蠢く闇・・・。それは府警上層部の内に宿る
強固で広大な闇だった。

体面重視の違法捜査、キャリアとノンキャリアの凄まじい暗闘。
そこに絡め取られてゆく神木恭子。
だが、父の死の真相を知った時、神木は復讐を決意する。

知られざる警察の暗部。
その具体的描写は現場を知る著者だから描ける!!
信頼していたものが、ガラガラと音をたてて崩れていくような感覚だ・・・・。
そんな汚泥で淀んだ警察で、神木はどう泳ぐのか?
神木の人間性の変化も怖い!

今までの警察小説とは一線を画す!
読み応え十分、さらに新人としては天晴!
ロマンノワールな警察小説。

『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』
著者:二上剛
出版社:講談社
価格:¥1,700(税別)