怪談実話!超短編だからこそ怖さが増幅!「忌み地」

こんなに暑い夏は、クーラーをガンガンに
効かせた部屋で、一人怪談集を読む!
すると、さ~っと身体が冷えてくる。

土地にまつわる「怪談実話集」。

怪談社の糸柳寿昭氏と上間月貴氏が全国各地の
忌み地、いわくつきの物件を中心に取材した。

二人の取材を元に作家の福澤徹三氏が、
小説風に書きおこした、前例のないちょっと
珍しい怪談実話集。

糸柳さんと上間さんが、事故物件が集中
している場所で不思議な現象が相次いで
いることに遭遇。
その件は読むとほんとに怖い。

50編弱の短編だが、怖さや衝撃を狙った
描き方ではなく、取材したことが淡々と
描かれていて、その語り口がよりいっそう
読んだ時の恐怖感を際立たせているような
感じがする。

物語のようにすべてスッキリ回収されて
いなかったり、これどういう意味なのか?
と思ったりするけれど、そこが実話なのだ
からと改めて認識させられる。

特に怖かったのは、「うなる男」
挿入されたイラストが怖すぎた!
そして、「封印されたアパート」。

怪談好きにはたまらない、百物語。

『怪談社奇聞録 忌み地』
著者:福澤徹三/糸柳寿昭
出版社:講談社(文庫)
価格:¥600(税別)

頭取並・鳥越新之助大活躍!『玉麒麟 羽州ぼろ鳶組』

シリーズ第8巻「玉麒麟」がめちゃめちゃ面白かった!
今回は、頭取並の鳥越新之助に焦点を絞った作品。

侍火消として順調に成長し、今や頭取並!
剣の腕前は府下十傑に数えられる、新庄藩の
鳥越新之助!

新之助は、豪商一家惨殺及び火付け事件の現場で、
娘を人質に、火消したちに剣を振るったとして、
その下手人にされてしまった。

現場で新之助に気づいた、加賀鳶の三番組組頭・
一花甚右衛門は、何かあると直感。
彼を逃すことに…。

凶悪事件の下手人として手配された新之助だったが、
火盗改めや、新庄藩の活躍を妬む江戸の火消したちの
包囲網を次々と打ち破り、逃走を続けた。

彼に一体何があったのか!

一方、幕府の命令で全ての動きを封じられた、新庄藩・
ぼろ鳶組の面々は、新之助に何があったのか?秘かに調査する。

これまでのぼろ鳶組の活躍や、新之助を良く知り、
今回の幕府のやり方に納得できない、江戸の火消したちは
新之助を、また、ぼろ鳶組を助けるために江戸中を奔走する!

江戸を襲う巨悪。それに翻弄される人間たち。
しかし、その中で、正義とは何かを知る者がたくさんいる。
ぼろ鳶組と反目しあいながらも、「江戸の庶民を守る」
という同じ目的のために、正義を全うする人たちのかっこよさ。

江戸の火消したちの熱き思いが物語中にあふれている!

そして、新之助の律義さ、優しさ、そして強さが前面に
押し出され、鳥越新之助ファンにはたまらない!

『玉麒麟 羽州ぼろ鳶組』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥780(税別)

新たなシリアルキラー登場か!?『SROⅧ 名前のない馬たち』

富樫倫太郎さんの「生活安全課0係り」シリーズ
はテレビドラマ化され、人気を博している。
ちょっとコメディタッチで描かれた警察小説
なので、ドラマにはピッタリ!大好きなシリーズ。

そしてさらに面白いのがこの「SRO警視庁広域捜査専任
特別調査室」シリーズだ。
久しぶりに新刊が発売された。シリーズ8巻目は
「名前のない馬たち」。

東京留置所特別病棟に入院していた
最凶のシリアルキラー・近藤房子は、
担当看護師を殺害し、脱走した。
そして、近藤の魔の手は、その看護師の
娘に近づいていた。

同じ頃、SROのメンバーにも近藤の影響が広がっていた。
誰もが疲弊していた。

そんな中、SRO室長・山根新九郎は、友人と一緒に
行った乗馬クラブで妙な事件が続いていることを知る。

関東近県の乗馬クラブのオーナーが相次いで亡くなっている
という。いずれも死因に不審な点は見られないが、
そのオーナーと一緒に必ず馬が一頭死んでいるのだ。
そんなことはめったに起きないらしい。

山根の頭の中に新たな事件のイメージが広がる….。
山根の指揮のもと、独自に調査を始めたSROのメンバー。
やがて、北海道のある牧場にたどり着く。

最凶シリアルキラー・近藤の調教ゲームは続く。
新たな殺人鬼が生れるのか?

何かを誰かをとても大切に考えることは良い。
しかし、それがひとりよがりになってはいけない。
あまりにも一つの部分しか見なかったら….?。
恐ろしいことになるかも知れない….。

8巻も面白く、堪能できました!!

『SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室Ⅷ 名前のない馬たち』
著者:富樫倫太郎
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥820(税別)

本屋さんは大変だ!書店員が大活躍!『店長がバカすぎて』

あまりに面白かったので、ミステリー小説ではないけど
掲載しちゃいます。

でもミステリー的要素もありますよ。

武蔵野書店に勤務する契約社員・谷原京子は
28歳の独身。とにかく本が好きで、
文芸書の担当として一生懸命、本を売る日々。

店長は、山本猛という名前ばかりは勇ましい。
頼りになるのかならないのか・・・。
そんな店長の元、日々イライラが募り笑顔に
なれない日もある。
そんな京子の心の支えは、先輩書店員・小柳真理さん。
小柳さんに憧れて書店員になりたくて、武蔵野書店に
入ったようなものだ。
しかし、ある日小柳さんに、店を辞めることになったと言われ……。
京子にとってその衝撃ははかりしれない!!!

書店の仕事は、とても大変だ。
毎日送られてくる商品、検品、品出し、問い合わせ、注文、返品、
本は重いので、腰痛になる。だいたい書店員は腰痛持ち。

この作品にはそんな書店の仕事の「あるある」があふれている。
そして書店員の悩みが、憤りがあまりにリアルに描かれているので、
共感しまくりで、現場から長く離れていた私自身も
身につまされる場面が数々出てきた。

また、書店員がどれほど本が好きなのか?
それをいかにして読者に伝えようと日々悪戦苦闘
しているか?そのあたりを読むとじわ~っと
胸にしみてきました。

さらに、この店長!バカなのか、それとも凄い人なのか?
わからないくらいに、めちゃめちゃ面白い。
この作品の爆笑要素はすべてこの店長の面白さなのだ。
場の空気を読んでいるのかいないのか!
陰でバカよばわりされているこの店長さんこそがミステリー!

ほかにも謎めいた登場人物がいる!そんな人たちの
謎めいた行動もミステリアス~~~。
クライマックスはまるでミステリー小説の「大どんでん返し」
のようです!

面白いです!めちゃめちゃ面白かったです。

『店長がバカすぎて』
著者:早見和真
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,500(税別)

日本人探偵とアメリカ人刑事が活躍!異色の「バディ」もの。

堂場瞬一さんの「over the edge」と「under the bridge」
を読みました。

NY市警緊急出動部隊の分隊長、モーリス・ブラウンは、
大手IT企業のCEOから、日本へ派遣した上級
副社長・ホワイトの捜索を依頼される。
ホワイトとブラウンは戦友だったが、しばらく
連絡をとっていなかったので、ホワイトが日本へ
行ったことも知らなかった。そのホワイトと
突然連絡がとれなくなったらしい。
表向きは日本の警察の視察という名目で来日
したブラウンは、秘かにホワイトの捜索を始める。
しかし、動き始めた矢先、何者かに襲われる。
それを助けたのは元刑事の探偵・濱崎だった。

日本でのホワイトの失踪に事件性をかぎつけた
濱崎は、ブラウンを手伝うと言った。
ただ面白いからという理由に反感を覚えた
ブラウンだったが、外国で自由に動けない
こともあり、いつのまにか二人は手を組む。
「over the edge」

マンハッタンで発生した立てこもり事件。
日本人女性が人質になったが、無事に救出された。
その事件について上層部から捜査を依頼された
NY市警のブラウンは、事件を追うことに。
一方、日本を脱出しNYに潜伏した探偵・濱崎は、
解放された人質が旧知のヤクザの情婦だったことを
知り、その立てこもり事件には裏があるとにらみ、
濱崎とブラウンの二人は、今度はNYで同じ事件を
追うことに・・・。
「under the bridge」

ヤクザとの不敵切な関係を指摘され、警察官の
辞め、探偵になった濱崎は、何でも屋のような
仕事で日々暮らしている。
片や、軍隊で厳しい訓練に耐え、その後NY市警の刑事に
なったブラウンは、まじめでちょっと融通が効かない。
そんな二人が仲良く捜査をできるわけがない。

友人同士にもなれない、お互い分かりあえないが、
なぜかお互いを放っておけない。
そんな微妙な距離感を保ちながら、事件を追う二人。

警察小説としての面白さが十分に堪能できるうえ、
まじめなブラウンと斜に構えた皮肉っぽい濱崎の
異色の「バディ」ぶりがとてもかっこよく思える。
二人の軽妙な会話も楽しめる!
ハードボイルドタッチのミステリー。

①『over the edge』
②『under the bridge』
著者:堂場瞬一
出版社:早川書房
価格:①¥800 ②¥820(いずれも税別)

火龍の悪夢が再び江戸を襲う!『狐花火 羽州ぼろ鳶組』

じっくり味わって読んだ7巻「狐花火」。
とても切ない物語が心に響きました。
じわっと泣けました。

天才花火師と謳われた秀助。
しかし、花火の事故で愛娘を失いその衝撃で
最愛の妻は自ら命を断った。

事故の原因になった怠惰な江戸の火消に
復讐を誓い、秀助は江戸を焼いたのだった。

二年前、秀助は新庄藩火消頭取・松永源吾
と対決!捕えられ火刑になったはずだった!

しかし、今また秀助の仕業と思わせる火事が江戸で頻発。
水では消えない炎、噴き出す炎、そして自然発火…。

「火」を自在に操れるのは、秀助だけだ。
もしや秀助は生きているのか・・・?
誰もがそう思ったが、秀助は両腕を切りとられている。
一人では絶対に火付けはできない。
では、秀助の技を習得した者がいたのか?

松永たちは、江戸を守るため必死で下手人を探す。

そんな頃、番付狩りが横行していた。
江戸の火消したちに次々と降りかかる災厄。
また、麹町定火消・日名塚要人の怪しい動きが
松永たちを苛立たせる。

そして、秀助の手口と酷似した大火災が江戸を襲った!

秀助の後継者にまつわる謎、
日名塚要人の真の目的とは何か?
大火災はなぜ起こるのか?
数々の謎に向き合いながら、松永たちは、大火災と闘う!

松永たちが火付の下手人を追う現在と
秀助の過去が交互に描かれるが、その過去の物語が
切なすぎて心に突き刺さる。

『狐花火 羽州ぼろ鳶組』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥760(税別)

「虚構推理」の世界がもっと楽しめる!「虚構推理短編集」

以前、タイトルに惹かれ手に取った、長編「虚構推理」。
鉄骨を振るい人を襲う亡霊「鋼人七瀬(こうじんななせ)」
のミステリーを一眼一足の美少女が解決するという
奇想天外な設定に驚愕した。

その「虚構推理」の短編集を発見!
一眼一足の美少女・岩永琴子の推理が存分に楽しめる!!!

怪異たちに知恵を与える巫女になった、
一眼一足の美少女・岩永琴子。
怪異たちからおひい様と呼ばれる、一風変わった女の子だ。
そんな彼女には心強い相棒がいる。
永遠に死なない恋人・桜川九郎だ。

岩永のもとへは、妖怪や幽霊たちから相談が持ち込まれる。

例えば、何百年生きる水神の大蛇から、自分が棲まう沼に
他殺体を捨てた犯人の動機は何か・・・?とか。

うなぎ屋で、店の客の一人に妻殺害の真相を暴いたり・・・。

孫を交通事故で失った男の怒りと無念の心が、
木の人形に宿り、その人形の暴走をとめてとの依頼。

日本に一台しかないギロチン台から、持ち主の
殺人の謎を解いて欲しい!?

山奥で化狸がつくるうどんを食べたために、
たまたまアリバイが出来ちゃった殺人犯に
嘘の真実を創ることになったり….。などなど。

琴子は、これらの事件や相談事を完璧なロジックで
解明し、最善の方法で導く凄い巫女。

そして綺麗に収まる話もあれば、背筋が凍る
ラストが待っている短編もある。

全て虚構の世界のお話なのに、いかにも
現実にありそうっぽく描いている。そこにとても惹かれる。

なんだか妖怪、怪異たちの方が人間らしく
描かれているところがとてもユニークだ。

私たちが普段見ている世界は、この世のほんの
一部分で、この虚構と言われる世界が
実はあるのではないか?と思ってしまう。

琴子の九郎の距離感の描き方もとても素敵。

もっと「虚構」の世界を堪能したいと思わせる短編集だ。

『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』
著者:城平京
出版社:講談社(タイガ文庫)
価格:¥720(税別)

驚愕のトリックに瞠目!「扼殺のロンド」

「十三回忌」がとても面白く、探偵・海老原の
キャラに惹かれ、続いて「扼殺のロンド」を
読みました。

小島先生の作品は、非常に凝ったトリックが
随所に散りばめられているので、読み進める
のが楽しい。

倒産した自動車工場で壁に激突したと思われる
車があり、その中から男女の変死体が発見された!
女性は腹から胃腸を抜き取られ、男性は高山病で
死んでいた。
鍵のかかった工場内、車の方はぶつかった衝撃で
ドアも窓も開かない。
犯人は如何にして犯行に及んだのか?

静岡県警の小沢刑事と笠木刑事らが捜査を
進めると、死んだ二人は姉川家のいとこ同志だと判明。

そしてその後も、姉川家の親族が次々と「密室」で
不可解な死を遂げていく。

その不可解さに刑事たちはもうお手上げ状態だ。
いったいどうやって・・・・。
そんな時、海老原が笠木のもとへやってきた。
難事件が起きた時、どこからともなく現れる、
風のような探偵だ。

そして、海老原は「密室」のトリックを
暴いてゆく…。

これでもかというくらい「謎」が仕掛けられ、
さらに凝ったトリックに圧倒される。
この謎とトリックの着想は、ひときわ異彩を
放っている。
ほんとに凄いミステリー小説!

次は「武家屋敷の殺人」(講談社文庫)に挑戦!

『扼殺のロンド』
著者:小島正樹
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥694(税別)

知念実希人さん幻のデビュー作!そして原点「レゾンデートル」

今や人気シリーズもあり、著作多数。医学系の
ミステリー作品がほぼベストセラー入り!
そんな知念実希人さんのデビュー作「レゾンデートル」
を読みました。

読み始めてから、その衝撃的な内容に驚愕
しながらも、場面展開のうまさにぐいぐい
引き込まれ、気がついたら読み終わっていた!
そんな感じでした。
主人公たちの切なく悲しい運命に、泣けて
しまいました。

「レゾンデートル 存在理由」。
悲運の主人公はそれを手にすることが出来ただろうか。

末期癌を宣告された医師・岬雄貴は、自暴自棄に
なり、酒浸りの日々を送っていた。ある日、何気なく
ぶつかった不良たちに因縁をつけられ、暴行を
受ける。雄貴はその復讐のためだけに生きようとした。
そして、復讐を遂げるが、現場には一枚のトランプが
残されていた。

そのカードは、世間を騒がせている連続殺人鬼
「切り裂きジャック」のものと同じだった。
その後、切り裂きジャックと名乗る男から
ある依頼を受けた雄貴。ジャックとの奇妙な関係が始まる・・・。

家出同然で上京した南波沙耶は、風俗系のカメラマン佐川の
モデルをしていた。
ある日、親友の恵美からペンダントを預かる。
その後、佐川の他殺死体が見つかり、親友の恵美も何者かに
殺されてしまう!

切り裂きジャックによる連続殺人、カメラマンと少女の死。
雄貴と沙耶。
そして、事件を追う刑事!

パズルのピースのように、バラバラだった事件がやがて
ひとつに繋がったとき、ありえない真実が姿を現す!

デビュー作とは思えない傑作!

『レゾンデートル』
著者:知念実希人
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥759(税別)

女の恐さを思い知る!「ウツボカズラの甘い息」

検事・佐方貞人シリーズの他にも、女性を主人公
としたサスペンス作品を描く、柚月裕子さん。

美しくなりたい、男性から良く思われたい、
お金持ちになりたい!他の誰よりも幸せだと
思われたい!など女性の欲求は果てしない。

家事と育児に追われ、自分自身を顧みることが
出来なかった専業主婦の文絵は、ある日
趣味で応募していた懸賞に当たり、ある大物
タレントのディナーショーへ行った。

そこで中学時代の同級生・加奈子に再開する。
中学時代は地味で目立たなかった加奈子だったが、
美しく変貌し、文絵は全く気づかなかった。

文絵は幼いころ、太っていたためいじめにあい、
中学校進学と同時に転校。そのために必死に
ダイエットをし、近所でも評判の美少女になった。
イジメの過去を知らない中学校の同級生たちは、
文絵の美しさを褒めた。

加奈子に再会し、高級化粧品のビジネスに誘われた
文絵は、中学校時代の自分に戻るべく美しさに
磨きをかける…。
家事育児以外にも生きがいと大金を手にした文絵。

しかし、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として
突然逮捕されてしまう!

無実を訴える文絵だったが、事情を知る加奈子は
姿を消し、さらに詐欺容疑もかけられてしまう。

全ては文絵の仕業なのか?それとも?

あくなき欲望に身を捧げ、破滅へと向かう女性。
人を騙し続け、自身が生き残るためならば
手段を選ばない女性の恐ろしさを描く!

柚月さんには珍しい、嫌ミスの傑作!

『ウツボカズラの甘い息』
著者:柚月裕子
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥770(税別)