富野刑事シリーズ最新刊!「脈動」

妖しくうごめく、怪異が引き起こす事件を
富野刑事と祓い師・鬼龍光一が解き明かす。
警察小説と伝奇ミステリの融合が面白すぎる
ファン待望の新作。

警視庁内で警官による容疑者への暴行事件、
警察官同士の淫らな行為など、非違行為が
相次いで起こった。

警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・
富野は、ある筋から警視庁内に
亡者の存在を指摘される。

事態の悪化を恐れた富野は、祓い師・鬼龍光一
と奥州勢の隆景らを呼び出し、庁内の捜査を
行った。
その結果、警視庁を守る結界が破られて
いることが判明する。

それだけではない。
富野は、所轄で傷害事件を起こした少年の
送検に立ち会うと、半グレ集団による
少女売春の情報を掴んだ。

全く無関係な事件かと思いきや、捜査を
進めるうちに奇妙な繋がりを見出す!

鬼龍や隆景のほか、今回は新たな組織の
長たちも加わり、警視庁崩壊の危機に
立ち向かう。

所轄で事件の概要を説明する富野は、いつも
どう話すか迷う・・・しかし結局本当の
事を伝えるしかなく、その話に警戒しながらも
富野に協力する同僚たちの心意気が良い。

「超」リアリストの警察組織で、得体の知れない
者の仕業という事件。それがもしかして現実に
起こるかもしれないと思わせる、今野先生の
物語の描き方に感服する。

『脈動』
著者:今野敏
出版社:KADOKAWA
価格:¥2,035(本体¥1,850+税)

どこまで騙される!?「モノマネ芸人、死体を埋める」

「逆転美人」で大注目!藤崎翔さんの
「モノマネ芸人、死体を埋める」
(祥伝社文庫)読了。

元お笑い芸人の著者が描くミステリーは、
絶妙なブラックユーモアが随所に散りばめられ、
読んでいると思わずクスっと笑ってしまう。
しかも、ミステリー小説として完成された、
伏線回収もの!

往年の名投手・竹下のオンリーワンの
モノマネしかできない、モノマネ芸人の浩樹。
本者さんに嫌われては芸人として生きて
いけない弱みがあった。
モノマネ芸人としてそこそこ人気があるのは、
本物さんのおけがだ。太鼓持ちするのは当たり前
と割り切って、竹下の言いなりになっていた。

竹下は野球のことしかわからない世間知らず。
大人だけど子どもみたいなやつ。
結婚していても女癖は全く治らず、そういう
お店に行ってはお持ち帰りをしていた。

ところが、ある日浩樹が竹下に呼ばれ彼の
家に行くと、頭から血を流した女性の
死体が転がっていた。

どうも竹下は裸の写真を撮られたらしい。
それを週刊誌に売ると言われ逆上したあげく
殺してしまったとのこと。

浩樹は警察に通報と言ったが、警察に通報したら、
竹下が警察に殺人容疑で捕まり、竹下のモノマネ
しかできない浩樹は、仕事が無くなってしまう。
竹下に説き伏せられ、二人は死体を埋めることに・・・。

浩樹の完璧な隠蔽工作で、彼らのやったことは
闇に葬られたかに見えたが・・・・。
小心者の浩樹は、いつばれるかと冷や冷やもの。

殺人事件を隠蔽したあとの浩樹の苦闘ぶりは
半端ない。どんどん悪い方へと巻き込まれてゆく。

ブラックユーモアで笑いを誘いながら、巧妙に
伏線が張り巡らされている。
次々と繰り出される「どんでん返し」。
お~っとそういう展開だったのか?
浩樹とともに読んでる方も仰天の連続だ。

欲に溺れた人間の恐ろしさは戦慄ものです!

「やられた!」と叫びたくなる傑作サスペンス!

『モノマネ芸人、死体を埋める』
著者:藤崎翔
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥814(本体¥740+税)

怪談と本格ミステリーで恐怖と謎解きを存分に味わえる「影踏亭の怪談」

第17回ミステリーズ!新人賞受賞作
「影踏亭の怪談」を含む恐怖の怪談
4作が収録されている、稀に見る面白さ持つ
短編集、大島清昭さんの「影踏亭の怪談」読了。

ホラーテイストのミステリー作品は数多い。
霊的な仕業に見せかけたトリックを使っての
殺人だったりする。
なんだ、そうだったのかと怖さも半減するが、
この作品は違った。

読み終わると、恐怖が倍増するのだから・・・。

怪談作家・呻木叫子(うめききょうこ)は、
民俗学の知識を生かしたルポ形式の怪談
作品を発表している。
ある日、弟が姉、叫子の自宅へ行ってみると
異様な姿で意識を失っていた。
叫子はある旅館「K亭」の霊現象を取材していた。
弟は、その取材の過程で姉に何か起きたのでは?と
疑い、「K亭」に調査に赴く。
しかし、そこで、密室殺人に遭遇する。
「影踏亭の怪談」

首無し幽霊の目撃情報が数多くある、Oトンネル
で、大学生男女5人が興味本位で肝試し。
しかし、そのさなか女子学生の一人が行方不明に!
怪談作家の呻木叫子は、その話を取材するため
彼らに接触。その時のことを再現する中、またしても
トンネル内で凄惨な事件が発生してしまう・・・。
「朧トンネルの怪談」

怪談作家の呻木叫子は、地元のお化けが出るという
「ドロドロ坂」に関連し、親友の息子が神隠しに
あったと連絡が入り、早速親友の元へ向かった。
そこには不気味な話や、神隠しの話が数多くあった。
呻木は親友の息子の手がかりを得るため、神隠しの
取材を丹念に行った。
すると、女が誰かを探す「いるかあ」と言う声を
聞いたとの情報が入手する。
そして、ここでもまた殺人事件に遭遇してしまう・・。
「ドロドロ坂の怪談」

警視庁内部で不特定多数の人が空から降ってきた
冷凍メロンで死亡しているという都市伝説が
流れていた。
そんな中、怪談作家の呻木叫子は、廃工場での
心霊番組の撮影中、頭に落ちてきた冷凍メロンの
せいで意識不明の重体に陥る・・・。
空からあり得ないものが落ちてくる、ファフロツキーズ
現象という超常現象の仕業なのか・・・?
「冷凍メロンの怪談」

霊が人を殺したり、密室を作ったりすることはなく、
それらは全て人間のやることだ。
人間が持つ闇と、この世に未練を残し亡くなった
霊が共鳴し、殺人へと駆り立てるのか?
怪談のあるところは、その要因となる事実が
必ず存在するはず・・・。
これらの事件も「霊」の介在が!?

怪談と密室の見事な融合。
密室殺人の真相が解明されると、それが起こった要因
となった怪談の全てが浮かび上がってくる。

その恐怖と衝撃で、寒気が止まらなくなる。

『影踏亭の怪談』
著者:大島清昭
出版社:東京創元社
価格:¥858(本体¥780+税)

女子高生探偵が大活躍の人気シリーズ完結!「卒業生には向かない真実」

「自由研究には向かない殺人」「優等生は探偵に向かない」
に続く第三作は、「卒業生には向かない真実」
人気シリーズもこの三作目で完結となる。

もっとピップの活躍を読みたかったが、
あまりにもつらい事件が彼女を襲うので、
早く解放してあげたいと思っていた。

この完結編は、シリーズ最高傑作だと思う。

卒業を間近に控えたピップは、大学入試直前に
ストーカーらしき人物に嫌がらせをされていた。
無言電話、匿名のメール、ピップの家の敷地に
首を斬りとられたハトの死骸が置いてあった。
さらに、私道にチョークで首のない棒人間が
描かれていた・・・・。

それらの行為が6年前の連続殺人の被害者にも起きた
ことと似ている・・・?
犯人は捕まり服役中だというのに?
でも逮捕された人物は無実を訴えているという。
まさか冤罪で犯人はほかにいるのか・・・?
そう考えたピップは調査に乗り出す。
この時はまだ自分に危険が及ぶことがあるなど
予想もできないでいた。

さらにピッパは、マックス・ヘイスティングス
から名誉棄損で訴えられていた。
ピップは彼のやったことを許せないでいたので、
彼からの折衷案は絶対にのまないと心に決めていた。

両親には心配をかけすぎるので、そのことは
黙っていた。
不安な気持ちを恋人のラヴィだけに話していた。
ラヴィはピップを守ろうとする・・・。

だが、魔の手はピップに迫っていた・・・。

既刊2作品はこの完結編のための伏線だったのでは
と思わせるくらい、圧巻だ。
すべての謎はこの完結編で繋がるのだ。

しかし、恐ろしいほどに息をのむ、あり得ない
展開が繰り広げられる。
この衝撃と真実は到底受け入れがたいが・・・。

今回もピップの凄まじい行動力と突出した
頭の良さには舌を巻く。
友人たちとの絆の深さと最愛の恋人・ラヴィとの
愛情の深さに感動した。

シリーズ中、一番ハラハラさせられた。

『卒業生には向かない真実』
著者:ホリー・ジャクソン著/服部京子訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥1,650(本体¥1,500+税)

見当たり捜査官の厳しさを描く「心眼」

相場英雄さんの「心眼」(実業之日本社)読了。

指名手配犯の顔を頭に刻み付け、日々街頭に
たち、ひたすら犯人を追う見当たり捜査官。
彼らの激務の過程を描く、傑作警察小説。

警視庁の捜査共助課の新米刑事・片桐は、
見当たり捜査員になってまだ1年足らず。

毎日街頭に立ち続けるが、今だに成果は
上がっていない。

同じ課の先輩刑事の補佐などで、コツは
掴みかけているが、自分の手柄をあげた
ことはなかった。

しかし、同じ課の上司で係長の稲本は1人で
次々と大物手配犯を挙げ、圧倒的な
結果を残していた。
ただ、課の中では一匹狼の彼は浮いて
おり、誰も話しかけなかった。

片桐はそんなことも構わず、稲本に
捜査のイロハを聞きこむ。
だが、軽くあしらわれる始末。

片桐はなんとしてでも手配犯を挙げると
心に誓う。

そんな時、新しい捜査一課長が就任してきた。
一課長は、ハイテク捜査に力を入れ、
非効率極まりない「見当たり捜査」を不要だと
ぶちまける。
「見当たり捜査班」は絶対絶命のピンチに陥る!

見当たり捜査官としてのプライドを傷つけられた
彼らは、稲本始め、チーム一丸となって
犯人確保に邁進する・・・!

犯人確保に情熱を傾ける警察官の地道な努力。
ハイテク捜査も確かに有効だが、それだけに
頼って良いのか?
何十年も積み重ねたベテラン刑事の「眼」は
ただ犯人確保だけではない、その裏にある
事件の本質をも見抜くのだ。

片桐も、稲本の教えによって徐々に成長し、
確かな「心眼」を備えていくだろう・・・。

警察官の仕事について、またハイテク捜査の裏
にある画策や、監視社会についても深いところまで
描いてある、硬派な警察小説。
渋くてとても面白かった。

『心眼』
著者:相場英雄
出版社:実業之日本社
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

恐怖のバイオホラー「ヨモツイクサ」

知念実希人さんの『ヨモツイクサ』(双葉社)読了。
血も涙もない恐ろしいモンスターに
次々と人が襲われる。
禁断の森へと入った者たちの末路が凄すぎる・・・。

著者には珍しく容赦ないほど怖いストーリー。

黄泉の森は、アイヌの人々が恐れた禁断の地。
そこがリゾート開発されることになり、
その会社の作業員が次々と行方不明になった。

警察は当初ヒグマに襲われたのではと
判断したが、殺戮の仕方が尋常ではなく、
伝説の「ヨモツイクサ」の仕業ではないかとの
疑いが・・・・。

次々と人間を捕食する、正体不明のモンスター
「ヨモツイクサ」VS女医。
過去に家族が神隠しにあい、
その原因を探る中で
遭遇したモンスター。

なぜこんなモンスターが生まれたのか?
昔から伝わる伝説を絡め、現代医学を駆使して
不気味な生物の正体を探るヒロイン。

体重が1tもあるヒグマでさえかなわない、
女医の友人で、最強の猟師も敵の罠にはまる!?

恐るべきモンスターとの熾烈な戦いの
描写が圧巻過ぎる!
そして隠された「超」弩級、
それまでの世界観がひっくり返るほどの
衝撃的真相!

難しい医学用語も多数出てくるが、
それを凌駕する圧倒的リーダビリティで
読者を戦慄の物語の世界へと誘う。

超怖いけど面白すぎる作品!

『ヨモツイクサ』
著者:知念実希人
出版社:双葉社
価格:¥1,848(本体¥1,680+税)

ドラマ化好評!「合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明」

柚月裕子さんの『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
(講談社)読了。
主役の二人をテレビでは天海祐希さんと松下洸平さんが
演じていて、あまりにもはまっているので、
読んでいると二人のイメージが頭に浮かんできて
楽しい読書だった。

不祥事で弁護士資格をはく奪された、
上水流涼子は、「上水流エージェンシー」
を立ち上げた。

請け負う仕事は、ちょっとヤバそうな仕事。
ただ、傷害と殺人だけは絶対に受けない。
それがルールだ。

相棒は、頭脳明晰でモデル並みの容姿を持つ貴山。
人間嫌いだが、動物には愛情を注ぐ。

第一弾では、詐欺師、資産家、ヤクザ、賭博に
からんだ事件を解決。

第二弾は、中編3作品を収録。

謎の積み荷を乗せた車を捜索して欲しいとの依頼。
積み荷は何か尋ねるが、とにかく捜索の一点張り。
高額な報酬に、涼子は依頼を引き受けるが、
貴山は、渋い顔をしている。しかし引き受けた
からには動くしかない・・・調べてみると
とんでもない積み荷だと言うことがわかり・・・。
「物理的にあり得ない」

母親から、息子の親権を取り戻して欲しいとの
依頼が入る。成功報酬は500万円。
しばらく依頼がなかったために、涼子は
飛びつくが、貴山はまたしても渋い顔。
旦那と離婚して6年も経過してから依頼する
とは何か理由があるのでは・・・?
二人が母親の周辺を調べると、案の定
母親の浮気性が原因で旦那から三行半をつきつけられ
離婚に至っていた。
そんな母親は、ある計画を練っていた・・・。
「倫理的にあり得ない」

腐れ縁の丹波刑事から珍しく依頼された。
上司の娘が精神を病んで入院している。
彼女を立ち直らせて欲しいとのことだ。
涼子は精神科医ではない。
そんなことは医者の仕事だと突っぱねたが
丹波は引かない。
メリットもあると言われた涼子は渋々
依頼を受ける。
病院で出会った少女は、生きる気力を無くしていた。
一体、何が原因なのか?
涼子たちが調べると、彼女の病の影には
悲劇が隠されていた。
「立場的にあり得ない」

今回も、悪い奴らにはそれ相当のに罰を与える
涼子たち。
欲に目がくらんだ者たちへの制裁は厳しい。
逆に、心を病んだ少女への想いは温かく
誰にも救えなかった少女を救うのだ。

読後の爽快感は、今作も半端ない。
上水流涼子と貴山コンビ。
ドラマ化されて、天海祐希さんと
松下洸平さんの息もピッタリで、
面白さも倍増!

絶対に読んで欲しい一冊。

『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』
著者:柚月裕子
出版社:講談社
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)

ネタバレ厳禁!納得の「世界でいちばん透きとおった物語」

今一番話題のミステリー作品
杉井光さんの「世界でいちばん透きとおった物語」
(新潮文庫NEX)読了。

ミステリー作家の大御所と言われた
宮内彰吾が亡くなった。

宮内は妻子がありながら、多数の女性と
浮名を流した。
その中の一人の女性とは子どもまで作っていた。
宮内に隠し子がいることは業界では誰もが知る
事実だった。

その隠し子が「僕」だった。
亡くなった母親から話を聞いていたが、
会ったこともない父の死には何の思いもなかった。

ところが、本妻の息子から遺作があると
知らされる。
校正をしていた母の仕事仲間で編集者の
霧子も驚いていた。

遺作を出版して販売すればまた売れる!
本妻の息子に、父の遺作
「世界でいちばん透きとおった物語」の捜索を
依頼された「僕」は、霧子の助言をもとに
探し始める。

母とともに穏やかでつましい生活を送っていた
主人公が、父の死で様々な人たちと出会いながら
父という人物を次第に身近に感じてゆく過程は
とっても良かった。
また、遺作捜索で出版を阻む人物は誰なのか?
ミステリー的展開も興味深い。

しかし、この作品にはとても重要なファクターが
隠されている。

あまりにも触れるとネタバレする危険性が
あるのでこれ以上書けないが、読み進めてゆくと
仰天する仕掛けに度肝を抜かれること、間違いない!

『世界でいちばん透きとおった物語』
著者:杉井光
出版社:新潮社(新潮文庫NEX)
価格:¥737(本体¥670+税)

今注目の社会派ミステリー作家・望月諒子さんのデビュー作「神の手」

先日、ドラマ化放送されたばかりの
望月諒子さんの「神の手」読了。
フリージャーナリスト・木部美智子
シリーズ第一弾。
たまたま読み終わっていて、
ドラマを視たので、小説の中の不明な点が
スッキリわかって良かった!

文芸系雑誌の編集長を務める三村のもとへ
広瀬という医師から電話が入った。
「高岡真紀という女性を知っているのか?」と。
三村には記憶のない女性だった。
ところが、その女性名義で小説のゲラが送られてきた。

その作品は、三村が過去に封印した作品。
小説の作者は来生恭子でという女性で、
行方不明になっていた。

なぜ来生恭子の小説を高岡真紀が持って
いるのか?
三村は高岡と会うが、顔は全くの別人。
しかし、しぐさは恭子とそっくりで、、
10年前に三村に話したことと全く同じこと
を話した。

三村は高岡真紀に疑惑を抱く。

フリージャーナリストの木部美智子は、
3年前の誘拐事件でただ一人行方不明に
なってしまった男の子の取材を続けていた。
ある日、同じジャーナリスト仲間の
高岡真紀から、盗作疑惑の情報を得る。

それは、つい先日新世紀文学賞を受賞した
本郷素子「花の人」についてだった・・・。

そして、木部はその盗作疑惑を取材するうちに、
三村に繋がり、やがて来生恭子に辿り着く。

恭子は妹に夥しい数の作品を預けていた。
なぜ彼女は多くの作品を妹に預けたまま
失踪したのか?
そこには恐ろしい真相が隠されていた。

読み進むうちに謎が深まる展開。
誰がどこでどうつながってゆくのか?
迷宮をさまよっているような感覚に陥る。

来生恭子の小説を描くことへの異常なまでの
執着、何かを描かずにはいられない、
生きられない、その業の深さに戦慄する。

この深い謎を、記者・木部とともに
追いかけている気持ちで読んだ。

圧巻のデビュー作!!

『神の手』
著者:望月諒子
出版社:集英社(文庫)
価格:¥935(本体¥850+税)

悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ最新刊「殺戮の狂詩曲」

中山七里さんの数多くの作品の中で
一番好きなシリーズ。

弁護士・御子柴礼司シリーズ最新刊
「殺戮の狂詩曲」(講談社)読了。

少女を惨殺した過去を持つ、弁護士・御子柴礼司。
悪名高い弁護士で高額な弁護費用、
裁判に勝つためならどんなあくどい手も使う。
しかし、御子柴は少しずつ変化してゆく。

高級老人ホームで働く忍野は、入念な計画を
たて、ある夜実行に及んだ。
それは、この施設に入所している老人34人全員を
抹殺することだった。

しかし、9人を惨殺したところで、
戦闘不能にしたはずの介護職員に取り抑えられ、
現行犯逮捕された。

取調べで殺害動機を聞かれた忍野は、
「生産性のない上級国民。生きていたって
何の価値もない。消えてもらった方が
世のためだ。」と嘯き、反省の態度すら
見せない。

ニュースでは、「令和最悪の凶悪事件」と
報道され、ワイドショー他メディアを賑わせた。

その凶悪犯・忍野の弁護を名乗り出たのは、
悪評名高い、御子柴礼司だった。
御子柴の過去が公になり、依頼人が減っている
のに、こんなバケモノみたいな被告の
弁護などしたらさら依頼人が減ると心配する
事務員・洋子。
そして、顧問先のヤクザ事務所の山崎も
仕事を選べと言ってきた。

そんな雑音に社会正義で真向対決する御子柴。

御子柴は彼なりに忍野に裁判の厳しさ、遺族の
怨嗟の恐ろしさを説くが、取り調べで供述した
ことを繰り返す。
本当に忍野が自分で考えたことだろうかと
疑い始める。

この裁判、御子柴が勝っても負けても
ダメージは大きい。損害は図りしれない。

それなのに、どこに勝機があるのか?
最後の最後までわらない。
ところが、そんなタイミングでとんでもない
どんでん返しがぶち込まれている!
あまりの衝撃に言葉を失う!

またしても、御子柴の激烈な反撃に
やられてしまう。
御子柴って実在するのではないかと
疑ってしまうくらい、強烈な個性を
放っている。

実際にあった事件を彷彿とさせる物語。
ここまで描いた著者の勇気に脱帽だ。

『殺戮の狂詩曲』
著者:中山七里
出版社:講談社
価格:¥1,760(¥1,600+税)