ぺトラ・ブッシュのデビュー作にしては凄すぎる「漆黒の森」

ドイツのミステリーが面白い。
ネレ・ノイハウス、アンネ・ホルトにはまり
何かもっと面白い作品はないか・・・と
海外ミステリ棚を物色していたら、
「漆黒の森」というタイトルが目に飛び込んできて
手に取ってみたら、ドイツの新人作家のデビュー作だった。
ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作。
これは面白い!でしょう。

漆黒

編集者のハンナは、取材のため‘黒い森’を訪れていた。
ガイドブック編集のため、森の中をトレッキング中に女性の
死体を発見する。
被害者は、10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だった。
だが、胎児が消えていた!

フライブルグの刑事警察のモーリッツ首席警部は
捜査のため村を訪れた。

閉鎖的な村での聴取は困難だったが、粘り強く聞き込みを
した結果、村に伝わる‘鴉谷’の不吉な言い伝えや、10年前の
嬰児失踪事件が明らかになってくる。

殺害された女性の家族関係は複雑だった。自閉症の息子を編愛する
母親、その母親と対立する父親と、長男夫婦。
母親と自閉症の息子が中心となった家は奇妙なバランスで
成り立っているように見えた・・・・。

モーリッツ首席警部とハンナは、投宿先が同じこともあり、
事件のことを話し合う内、この村には過去にも奇妙な事が起こっていたことがわかる。

そのうちに第2の殺人事件が起こってしまう・・・。

漆黒の森で何が起きているのか?
閉ざされた小さな村に隠された忌まわしい秘密とは何か?

漆黒の森の描写、閉鎖的な村の人々の複雑な人間関係、
自閉症の男性の思わせぶりな動き・・・
その描き方は新人離れしていて、とてもデビュー作とは
思えない面白さ、素晴らしさ。

最後にアッと言わせる真相と、特別な愛情の表現に思わず
うるっと来る。

ドイツ本国では、モーリッツ首席警部&ハンナシリーズとして
第3作目まで発売中。
早く次作が読みたい。

『漆黒の森』
著者:ぺトラ・ブッシュ/酒寄進一(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,280(税別)