超豪華執筆陣!傑作短編揃い!「Jミステリー2022SPRING」

超豪華執筆陣によるミステリーの短編集が
発売になりました!!!!
東野圭吾・今村昌弘・芦沢央・青柳碧人・
織守きょうや・知念実希人
この輝けるラインナップ!ミステリー好き
にはたまりません!
しかも、文庫書下ろしです。新作です!

個人でリノベーションを手掛ける真世は、
ある女性から、築20年以上のマンション
のリノベーションを依頼された。
しかし、真世は女性に対し何となく
違和感を感じてしまう。
詳細を打ち合わせるために、真世は叔父の
カフェバーを使わせてもらうことに。
しかし、この叔父はただ者ではない。詮索
好きでおせっかい。今回も叔父が余計な
推理を働かせ、女性の秘密を暴こうと画策・・・。
東野マジック炸裂!二転三転の展開は圧巻。
短編なのに凄い読み応え!
「リノベの女」東野圭吾

どうしても別れたくない女性の部屋へ話を
聞いて欲しいと言って上がり込み、感情に
任せ女性を殺してしまった健吾。
後始末で頭を巡らせているときインターホンが
鳴った。どうすればいい?
弁護士と名乗る男が、健吾の隙をついて
女性の部屋へやってきた。女性と約束をしていたらしい。
弁護士は、健吾に色々と質問をしてくる。
これは、刑事コロンボ的展開・・・!と思っていたら
やられた!ありえない展開と結末に絶句。
今村さんじゃないと思いつかない展開!凄い…。
「ある部屋にて」今村昌弘

頭がいい子が育つ家が、たまたま殺人犯が
育った家とイコールだった!?
保育園に通う息子の一番の仲良しの男の子は
殺人犯が育った家に住んでいた・・・・。
エリートの道を歩き続け挫折を知らない
男はたった一度のつまずきで、人生を投げ
殺人犯となった。
その男はまだ捕まっていない・・・。
「家」を巡る‘噂’に翻弄される家族の
姿を描く!ひたひたと近づいてくる
恐怖を見事な心理描写で表している。
「立体パズル」芦沢央

ネズミで地雷撤去!?そんな研究をしている
研究所で爆発事故が起こり、研究所副所長が死んだ。
早速、自称頭がいい警察官・由赤丸警部は
部下とともに調査を始める。
自殺願望が強い女性所長や、爆死した
副所長と反目していた第一発見者の
女性所員など、怪しげな登場人物たち。
由赤丸警部の推理が冴えわたり、驚愕の真相が
明らかになる!
マジックのような密室トリック!
ユーモアとシリアスの絶妙な匙加減。
「むかしむかしあるところに死体がありました」の
著者が描く、瞠目のミステリー。
「叶えよ、アフリカオニネズミ」青柳碧人

出張から戻ってきた夫は、リビングで倒れている
妻を発見。どうも死んでいるようだ。
幼い息子は大丈夫か?息子は隣の和室で眠っていた。
警察に聴取されるが、疑われていると感じた。
果たして夫が犯人なのか?
意外な目撃者の登場で、あまりにも予想外の結末!
夫婦とは何?とちょっと考えさせられるミステリー。
「目撃者」織守きょうや

神の使いの黒猫。地縛霊をあるべき場所に
連れてゆくのが役目。普段は人間の飼い猫と
して暮らしているけれど、地縛霊が出そうな
気配を感じると行動を起こす。
飼い主が旅行に出ることになり、早速行動を
開始。すると強い「腐臭」に導かれ辿り着いた
先に若い男性が首を吊ろうとしていた・・・。
これは地縛霊になると思った黒猫は男に向かって
いった。驚いた男は気絶。黒猫は彼の記憶の
中に入り込み、自殺しようとした理由を探る
すると・・・・。
愛する人への思慕を断つことが出来ず悩み
苦しむ男の姿があった。
この新作短編、なんと途中で終わってる!
続きは、最新作「死神と天使の円舞曲」で
とあった。
あ~またしてもやられた。新作買わないと!
「黒猫と薔薇の折り紙」知念実希人

どの作品も面白すぎてイッキ読み。
こんな豪華なアンソロジー集、読まないと損しますよ~。

『Jミステリー2022SPRING』
著者:東野圭吾/今村昌弘/芦沢央/青柳碧人/織守きょうや/知念実希人
出版社:光文社(文庫)
価格:1,320円 (本体1,200円+税)

推理小説の面白さが半端ない!「土屋隆夫推理小説集成8穴の牙/深夜の法廷」

土屋隆夫先生は、1949年に推理小説作家として
デビュー。有名なのは、ドラマ化された
千草検事シリーズ。多くの作品がドラマ化
され、人気を博しました。
「影の告発」で日本推理作家協会賞を受賞。
ミステリー小説を読むようになってから
土屋先生作品に出合い、その面白さに
はまってしまいました。

東京創元社から「土屋隆夫推理小説集成」が
全8巻で発売され、本書はその完結巻。
なぜかこの本だけ、本棚から発掘。
読んでみたら止まらなかったです。

「穴の牙」
妹を殺された復讐のために完全犯罪を
もくろんだ兄がはまった穴とは?。「穴の設計書」

夫の出張中に行き倒れそうになった元上司を家に
あげてしまった妻がはまった罠。「穴の周辺」

優しい夫の異変に気付き、夫の出張中に一人
思い悩む妻が陥った罠、そして夫も・・・。「穴の上下」

強盗犯の仲間割れから大金を隠し場所を知った
元刑事。悪魔のささやきに負けてしまい・・・。「穴を埋める」

身に覚えのない強盗殺人事件の容疑者に
されてしまった男。罠を仕掛けたのは・・?「穴の眠り」

男に貢ぎ続ける女、それを当たり前のように
受け取る男。彼らがはまった穴とは?「穴の勝敗」

学生時代に特訓と称して、後輩を苛め抜いた男。
定年間近、その男の上司としてやってきたのが!?「穴の終曲」

以上の7編の短編は、何気ない日常を切り取っているが、
そこには至るところに罠が張り巡らされている。
欲望の赴くままに行動する人間たちが陥る‘穴’。
その愚かしい姿が絶妙なタッチで描かれる。

「深夜の法廷」
幼いころからその美貌で、周囲の人々を魅了してきたヒロイン。
しかし、彼女は自分を裏切ったもの、いじめたもの
には容赦なく制裁を下してきた。
その性格は大人になっても変わらずにいた・・・。
幸せな結婚をした彼女だったが、夫が不倫を
していることを知る。
激しい怒りを内に秘めた彼女。
自分を冷静にコントロールし、夫と不倫相手に
制裁をくだすべく、完全犯罪を計画する・・・・。
彼らを陥れようとする計画が緻密過ぎる。
読んでいるともしかしたら計画成功するかも・・・
と思ってしまった。

そのほか、中編「地図にない道」「半分になった男」を収録

「半分になった男」は、ある資産家の娘の婿になった
男が精神分裂症を患い自殺を図った。
しかし数年後、ある新聞社に投書があった。
自殺した男は殺されたのだ・・・と。
投書の内容から殺人事件をロジカルに推理。
その過程が見事!

昭和時代に描かれた作品もあるが、作品の
古さを感じさせない。
文明の利器が進歩しても犯罪を犯す人間の心理は
いつの時代も変わらないと思った。

短編、中編が何作も収録され、700ページ超の
厚さだが、その厚さ、長さを全く感じさせない、
面白さに引き込まれ、時間を忘れて読みふけった。

『土屋隆夫推理小説集成8 穴の牙/深夜の法廷』
著者:土屋隆夫
出版社:東京創元社(文庫)
価格:2,090円 (本体1,900円+税)

SNSの怖さが際立つ!炎上ミステリー!「俺ではない炎上」

「六人の嘘つきな大学生」(KADOKAWA)で
大ブレイクを果たした浅倉秋成さん。
新卒採用をミステリーに仕立て、企業に
翻弄される就活生の姿を描き出した。
今の日本の就活のあり方に一石を投じた作品で
話題をさらった。

そして、本書「俺ではない炎上」(双葉社)は、
SNSの怖さを徹底的に描き切ったサスペンスミステリー。

外回り中の大手ハウスメーカーの営業部長・
山縣泰介に支社長から緊急の電話が入った。
「すぐに帰社しろ、絶対に裏口から入れ!」

突然のことで狼狽する泰介は、自分が
「女子大生殺害犯」にされていることを知る。
すでに、実名、写真付きでネットに素性が
晒され、ツイッターは大炎上していた。
確かに大昔ツイッターのアカウントを作った
記憶はあるものの、使用したことなどなかった。
自分ではないと訴えるものの、上司は信じず、
自宅謹慎を言い渡される。

それでも、きちんと説明すれば誤解はすぐに
解けるだろうと楽観していた泰介だったが、
SNS上ではさらに荒れていた。

そのアカウントは巧妙に作られ、何度確認しても
泰介のアカウントにしか見えない。

誰が、何のために・・・?泰介は戦慄する!
頼りにしていた部下、友人、そして家族でさえも
泰介の言葉を信じてくれなかった。

「これはヤバイかも」とネットに上がっった
写真がリツイートされる。それは僅かな
時間で拡散され、泰介はあっという間に
殺人犯として追われるはめに・・・。

怖い!読んでいてこんなに怖いと思ったことは
あまりない。誰もがSNSをやっている。
だから誰でも起こりうること。他人事では
いられない。いつ自分が巻き込まれるのか
と思うとすごく怖くなった。

また、SNSに上がった写真とわずかな情報
だけで、「犯人」と決めつける安易さ。
それに同調する、正義をふりかざす人たちの
理不尽なまでの暴挙。人間とはここまで残酷に
なれるのか・・・・。

そして、著者がこの作品に仕込んだミステリーの
大仕掛け!
「えッ?」と思わず叫びたくなる、大逆転の展開。
しかし、さらなる罠が待ち構える。
そう簡単には真相にたどり着けない。

二度読み必至の、強烈炎上ミステリー。

『俺ではない炎上』
著者:浅倉秋成
出版社:双葉社
価格:1,760円 (本体1,600円+税)

西村京太郎 初期の傑作ミステリー短編集「完全殺人」

最近、西村京太郎さんの初期に描かれたミステリー
作品にとても面白いものが多数あると気がついた。
「華麗なる誘拐」(河出文庫)、「殺しの双曲線」
(講談社文庫)、「七人の証人」(講談社文庫)
などかたっぱしから読んで、この「完全殺人」
(祥伝社文庫)を手にした。
上記の3点は長編だが、「完全殺人」は短編集。
ぶっ飛び展開もありつつ、時代をまったく感じ
させない、斬新な設定のサスペンスミステリー集。

全く知らない美しい女性からいきなりラブレターを
渡された男性。困惑しつつも返事を書いて渡そうと
出会った場所で待つことに。しかしそこに別の女性が
現れて・・・・。ぶっ飛んだ真相に男性は怒り爆発・・・!
「奇妙なラブレター」

釣りを楽しむために温泉宿にやってきた男性。
そこで出会った美しい女性と一夜限りの関係を・・・。
ところが翌日の朝、女性が遺体で発見される。
そして男性は何者かに襲撃を受けた!
男性が導き出した真相とは・・・・。
お~そういうこと!思わず膝を打ちたくなった。
「幻の魚」

空き別荘に集められた四人の男女。彼らは過去に
殺人を犯しながらも逮捕されていなかった、
いわば「完全殺人」の成功者たち。
彼らを集めた男は、「最もすぐれた殺人方法を
示したものに大金をやる」といった。
様々な殺人方法が語られるが・・・・。
男の真意に戦慄する!
「完全殺人」

余命幾ばくも無いがん患者の男性は、同じ病気で
苦しむ男からある提案をされる。
その提案を男性は拒み続けるが・・・
あまりにも理不尽なラスト。声も出ない衝撃。
「殺しのゲーム」

妻を寝取られた男が復讐のために妻の相手の
男性を殺害することを決意し、行動を起こした
矢先、「AMAアリバイ製造協会」と名乗る男から
アリバイを保証するから男を殺せと促される。
驚愕のどんでん返しが凄い!!
「アリバイ引き受けます」

何者かに線路に突き落とされたが生還。記憶が
ないくらい飲んだバーで毒殺されそうになったが
これも生還。誰かに狙われていると感じた
男性は、社内の出世競争に巻きこまれたかと疑う。
そして、怪しい人物を探れと部下に命令するが・・・。
こんな屁理屈で殺されたら、たまったもんじゃない!!!
「私は狙われている」

新婚の夫婦。夫が出張中に妻が殺された。
妻は「S」というダイイングメッセージを残していた。
警察はイニシャルが「S」の関係者を洗うが・・・。
妻が夫に残したメッセージ。妻の愛と夫の執念が
真相を導き出す。切ないラストに涙。
「死者の告発」

探偵事務所で働く男性は、高額の成功報酬付きの
案件を担当することに。しかし、同僚の男の
話を聞いてその案件を同僚に譲った。ところがその
同僚の遺体が発見される。男性は調査はまだ
終了していないとし、独断で調べあげると
信じられない真相に突き当たった。
権力の横暴に巻き込まれたサスペンス。
「焦点距離」

本格推理、サスペンス、どんでん返し、西村京太郎さんの
傑作短編が堪能できる貴重な1冊。

『完全殺人』
著者:西村京太郎
出版社:祥伝社
価格:¥660(本体¥600+税)

闇を押し付けられる恐怖!「闇祓」

話題になっていて、早く読みたいと思っていた
辻村深月さんの「闇祓」(KADOKAWA)を
読みました。

読後感じたことは、現代社会は「闇」に
覆われているということ。
今身近にも闇が迫っている、他人ごとではない
と思いました。

寡黙で何を考えているのかわからないから
クラスで一人浮いている転校生・要に、
親切に接する真面目な委員長・澪。

しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。
ちょっと距離感の取り方に疑問を持った澪は、
友人たちに相談するが「好かれてるんじゃない?」と
からかわれる始末。

ところが、唐突に「今日、家に行っていい?」と
尋ねたり、家の周りに出没したりするようになりと
かなりヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は
憧れの先輩・神原に助けを求めるが――。

デザイナーズマンションのようにリフォームした
団地で、住人たちが次々と事故や不幸に見舞われる。
そこには一人の不気味な主婦がいた。

小学校に男子児童が転校して来てから、クラスの
様子がおかしくなった。彼の正義を振りかざし、
クラスを支配する・・・。

あるサラリーマンは、営業部に異動してきた
ベテランの男性社員を執拗に怒鳴る上司に
辟易していた。同僚の女性先輩に相談し、
何とかしようとするが・・・・。
ベテラン男性社員の異動から部内が険悪になってゆく・・・。

「闇をおしつけ、周囲の人達を不幸のどん底に突き落とす。
そしてたくさんの人が死ぬ」

「闇」をまとったやつらが周囲の人間を
巻き込んでゆく。身近にある名前を持たない
悪意が増殖し、闇となり迫ってくる・・・。

4つの短編に描かれる物語は、
普通の人間が徐々に壊れてゆく様が非常に
リアルに描かれ、他人事とは思えない。

直接の暴力や言葉で相手を追いつめるのではなく、
ただ闇が持つ「正義」の理論を押し付けるだけ。
それだけで人は何が正しいのか?自分はどうすれば
良いのかわからなくなり、自我を失い、ある者は
自殺、ある者は殺人に走り、ある者は狂気に陥る。

その闇を祓うのが「闇祓」だ。
闇をまとうやつらを追いつめ、そして闇を祓う。

序盤、度肝を抜かれる展開から目が離せない!
いっきに読ませる面白さであっという間に
読み切ってしまった。

生きてる人間の悪意が一番怖いかもと思った。

『闇祓』
著者:辻村深月
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,870(¥1,700+税)

強烈キャラ炸裂!女性弁護士の活躍「元彼の遺言状」

2020年第19回「このミステリーがすごい大賞」受賞作
新川帆立さんの「元彼の遺言状」(宝島社文庫)読了。
発売当時から話題になっていました。
その時は読むタイミングを逸してしまい・・・。
今回のドラマ化のタイミングで読みました。

すでにドラマも視ていましたので、
脳内で剣持麗子は綾瀬はるかさん・・・。
ヒロインのイメージに凄くはまっている。
さすがです。

お金がすべてと言い切る剣持麗子は、
大手企業のクライアントを多く担当する弁護士。
クライアントの利益を最優先するために
多少強引な手を使うことも・・・・。
ところがそれが裏目に出てしまい、彼女が勤務する
ローファームからボーナスの減給を言い渡される。
納得できない麗子は啖呵をきって会社を出て行った。

怒りが収まらない麗子。大学時代の元彼・栄治に
連絡をとった。ところがその電話で栄治が亡くなった
ことを知る。あまりにも突然のことで麗子は言葉を失う。

その後、栄治の友人だと言いう男・篠田から
栄治の遺産のことで相談にのって欲しいと
依頼される。

栄治は、大手製薬会社の御曹司。次男だったが、
会社を継いでいたので、莫大な遺産が遺った。
しかし、栄治は奇妙な遺言を残していた。
その遺言のせいで、一族が困惑しているらしい。

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
この遺言状に導かれ、麗子は一族が開く
「犯人選考会」に篠田の代理人として参加することに。

栄治の遺産を詳しく調べると、なんと数百億円も
遺産があることが発覚!

守銭奴・麗子は、その遺産の分け前をゲットするために、
依頼人を犯人に仕立てあげようと、あの手この手を使い、
さらに口八丁手八丁で一族にアピールした。
そして、手応えを得る・・・。

ところが、その遺言状が保管されている金庫が
盗まれ、さらに栄治の遺言状を管理していた
顧問弁護士が何者かによって殺害される。

「僕の全財産は僕を殺した犯人に譲る」
という斬新な設定に驚愕、困惑・・・?
被害者は殺されるって知ってるの?
と読んでる途中でモヤモヤと・・・・

しかし、物語が進むにつれ、きちんと
ミステリーの根幹である「フーダニット」、
に流れてゆくところ、面白い。
そして、何よりこの強烈なヒロインの活躍に
魅せられ、グイグイと読ませられた。

途中で麗子がクライアントから首を言い渡され、
ショックを受けるところ、妙に納得。
必要とされるから、仕事のやりがいあるので、
必要ないと言われ落ち込む麗子に共感。

ミステリーの形で、女性のお仕事に対する
気持ちもしっかり描かれ、とても面白かった。

ドラマも面白いし、続きが読みたくなった。

『元彼の遺言状』
著者:新川帆立
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥750(¥682+税)

爽やかすぎる、胸アツ!青春ミステリー!「図書室のはこぶね」

名取佐和子さんの「図書室のはこぶね」
実業之日本社読了。初読みの作家さん。

高校生活を通し一番盛り上がる、「体育祭」。
その高校では、名物ダンスがあった。
名曲「サタデーナイト」でクラスごとに特色を
出して踊る、「土ダン」だ。
長年続くこの「土ダン」のルールにに異議を
唱える生徒が現れ・・・・。

女子バレー部のエース・百瀬花音(ももせかのん)は、
高校3年生。
高校最後の試合を前に足に怪我を負い、出場出来なかった。
そして、その怪我の影響で高校最後の体育祭も
競技参加できず、暇を持て余していた。

そんな時、親友の紗千から図書委員の仕事を頼まれた。
紗千は、間近に迫った体育祭の準備が忙しく、
図書委員の活動が出来ず、花音に声をかけたのだ。

本とはいっさい無縁の生活をしていた花音。
図書室に行くと、図書委員の俵朔太郎(たわらさくたろう)
がいた。

朔太郎は、妙な距離感で花音に話しかけてくる。
花音はとまどいながらも、朔太郎との距離を縮めてゆく。

学校で一番盛り上がりを見せる「体育祭」はもう間近。
図書館は誰もいないが、きちんと仕事はある。
朔太郎から仕事を教えてもらい本の返却作業をしていた花音は、
ケストナーの「飛ぶ教室」がカウンターに置きっぱなしに
なっていたのを見つける。
蔵書数は1冊なのに、手元には2冊ある。

しかもこの1冊は10年前に貸し出されたもの。
10年後に返却されたのはどういうこと?

朔太郎から読んでみたら?と貸し出され、
花音は久しぶりに「飛ぶ教室」を読んでみた。

次の日、朔太郎と二人、図書館業務をこなしていたら、
まるで女の子みたいな男の子が半裸で図書館に
駆け込んできた。1年生のようでクラスメートから
追われているようだ。二人は彼を匿い、事情を
聞いた。
この1年生のクラスは、今度の土ダンで野球場を
テーマに踊るらしい。彼は客席を回るビールの
売り子で女装をする役になった。花音と
朔太郎は「ピッタリじゃん」と心の中で
思ったけど言わなかった。
しかし、彼は絶対に女装をしたくないと言った。
何か事情があるらしい・・・・。

花音は「飛ぶ教室」に挟まれていた
あるメモを見つけた。
そこには「方舟はいらない、大きな腕白ども
土ダンをぶっつぶせ!」と書かれていた。

「土ダン」をぶっつぶせ・・・?不穏。
一体誰がなぜこんなメモを?

謎めいたメッセージに衝撃を受けた
花音はこの謎をどうしても解明したくなった。
そして朔太郎や1年生の男の子も巻き込んで
謎解明に奔走する!

図書室で繰り広げられる、学園小説だと思ったら
とても爽やかなミステリー。

体育祭まえの1週間の物語の中に、緻密に
伏線が配置され、それが徐々に回収されると、
10年前の悲しい過去が明らかにあり、泣ける・・・。

そして、すべの謎があきらかになるクライマックスは、
ある一つの思いを実らせるために、誰もが一つになる!
感動的なラストだ!

仲間の固い絆、友情以上恋愛未満の切ない心、
素敵な大人たち、ストーリーの面白さに加え、
魅力的な登場人物たち。
しみじみと味わって読んだ。とても面白かった。

『図書室のはこぶね』
著者:名取佐和子
出版社:実業之日本社
価格:¥1,760(¥1,600+税)

はぐれ者の男が一途に生きる道を究める!「底惚れ」

時代小説もわりとよく読んでると思うけれど、
この作品は、詳しく紹介されるまで知らなかった。
青山文平さんの「底惚れ」(徳間書店)。

江戸時代版ハードボイルドと帯に謳われている
通り、主人公の男が終始江戸っ子口調で語るので、
それがとても粋に感じられ、この作品に
ぴたりとはまりとても良かった。

一季奉公を重ねて四十も過ぎ、自分を持て余し
はぐれ者だった男が、殿さまのお手付きになり
子供を産んだ後、里に帰される女・芳に惚れた。
芳は二度と戻れぬ宿下がりを命じられ、その
同行者として男が選ばれたのだ。

殿様は芳にひどいことをしたもんだと憤った男。

芳に奉公先を見返す話を持ちかけたが、
男を刺して逃走した。

男は思った。芳に殺されるなら本望だ・・・。
でも、芳は本気で殿さまのことが好きだったんだ。
俺みたいな男を刺して、俺が死んだら芳は
人殺しになっちまう。それだけはダメだ・・・。
死にかけた男はそんなことを思った。
幸い、男は一命をとりとめた。

何をしても中途半端な生き方しかできなかった男が
惚れた女に刺されたおかげで生きる目標を持った。
そして、芳に人殺しでない事を伝えるため、
芳を探し出すことを決心する。
そのために、男はとんでもない策を打ち出す!

その策を練るために男は様々な人物たちと出会う。
彼らは、男の覚悟に惚れ男のために誠意をつくす。

最底辺を懸命に生きる江戸の庶民の暮らしや
江戸情緒がたっぷりと描かれ、その中で
愛の力でよみがえった男の一途な生き方が映える!

物語全体がかっこいい!

『底惚れ』
著者青山文平
出版社:徳間書店
価格:¥1,760(¥1,600+税)

監禁パニックホラー!「ママ」

窪田正孝さん主演で映画化が決まった、
衝撃ホラー「スイート・マイホーム」の著者
神津凛子さんの第2弾「ママ」を読みました。

なぜ自分がこんな目に合わなくては
ならないのか?
娘と二人、健気に生きる母親を襲った
突然の恐怖!

シングルマザーの後藤成美はパートで生計を
立て、一人娘のひかりと二人慎ましく暮らしている。
貧しいけれど、ひかりがいれば何もいらない。
愛する人が残してくれた唯一の生きがい・・・。

パート先では、成美と同じ境遇のママ友もできた。

しかし、成美たちが暮らす団地で隣人の行き過ぎた
おせっかいに頭を悩ませていた。
成美はその隣人に、「どうしても母になれなかった女」
を感じ、自分の母親と似ていることで、嫌悪感を
抱いていたのだ。だが・・・。

ひかりから決して目を離してはいけないと
改めて誓ったその後、突然、首を絞められ
意識を失った。
目を覚ませば見知らぬ密室で手足を拘束されていた。
一体なぜ?
成美をよく知ったような態度で迫る、目の前の男は
誰なのか? 娘のひかりはどうなったのか?

なぜこんな目に合わねばならないのか?

恐怖と絶望に支配される成美。
このまま死んでしまったら、ひかりに会う
ことはできない。
絶対にひかりのもとへ行く!
その思いだけが成美を動かす。

成美とひかりの小さいながらも幸せなひとときの
シーン。読んでいると泣けてくる。
だからこそ、この監禁シーンの異常性が際立つ。

男が成美を監禁した目的とは何か?

戦慄の展開だが、圧倒的なリーダビリティで
最後までいっきに読ませられた。

『ママ』
著者:神津凛子
出版社:講談社(文庫)
価格:¥770(¥700+税)

圧巻の展開!「アリスが語らないことは」

ピーター・スワンソン著「そしてミランダを殺す」
「ケイトが恐れるすべて」に続く、サスペンスミステリー
「アリスが語らないことは」(創元推理文庫)読了。

今回はどんな展開が待っているのか?
ワクワクしながら読みました。
まったく!スワンソンは、ミステリーファン
を裏切らない!!
えッ!?と思わず声がでてしまう意外過ぎる展開。

卒業式を数日後に控えた大学生のハリーは、
継母のアリスから父親の事故死を知らされる。
あまりにも突然の出来事で、ハリーは悲しみよりも
驚きの方が強かった。
友人のポールと二人、急ぎ実家へ戻る。

美しい継母アリスは憔悴し、困惑しハリーに
すがった。
刑事によれば、父親は海辺の遊歩道から転落する前、
何者かによって頭を殴られていたという。
ハリーはアリスにそのことを問いただすが、
アリスは事件について話したがらず、ハリーは小さな疑問を抱く。

ハリーの父親はミステリー小説好きで、自営で書店を2店
持っていた。その二つは、ハリーの父の友人たち
に任せていた。
父親は誰かに恨まれていたのか?
ハリーは父親の友人たちに聞いてみるが、そんなことは
ないだろうと言う。
そんな中、父親の女性問題が浮上する。

彼らの過去と現在を行き来する物語。
淡々と描かれるが、その物語は、徐々に狂気を
孕んでゆく・・・。

父の死は悲劇か、それとも巧妙な殺人か? 

読み進めてゆくとあるシーンで今までの世界観が
一変する。それこそ思わず「えっ?」と一瞬
止まる。そして心がざわつき始める。

えええ~~~ッ

予想をはるかに超えた展開は、それまでの作品を
凌駕する。

凄すぎる圧巻のサスペンスミステリー。

『アリスが語らないことは』
著者:ピーター・スワンソン著/務台夏子訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)