長い間ありがとうございました。

2012年から綴ってきました、「ミステリーならこれを読め」の
ブログですが、はまさきが退職することになり、ブログ更新は
本日で終了となります。

12年間という長い間、こちらのサイトをご覧頂きました方々、
読んでいただき本当にありがとうございました。

今後は下記サイトで、ミステリー小説のブログを続けて
いきますのでどうぞよろしくお願いいたします。

https://note.com/mystery_hamasaki/n/naf76103d6ace

「逆転美人」に続き、またまたやられた!「逆転泥棒」

藤崎翔さんの「逆転泥棒」(双葉社)読了。

「逆転美人」はミステリー史上初の
トリックが凄すぎて言葉も出なかった・・・。
「逆転泥棒」は、「逆転美人」とは全く違う。
「騙された感」が半端ない凄いミステリー。

善人と書いて「ヨシト」。
その名前とは程遠い、小さな空き巣を
繰り返していたがお縄になり刑務所生活。
二回目のおつとめを経て出所早々、
世話になっている先輩空き巣のスーさんを頼る。
そのスーさんからうまい話を聞かされる。
罪の意識はどこへやら、スーさんの
話に乗りヨシトはある豪邸へ忍び込む。

金目の物を盗み、部屋を出ようとした時、
飾ってあった一つの写真に眼が行った。
そこには初恋の相手、マリアが写っていた。

なんと、自分は高校時代に恋をした
女性の家に忍び込んだのか!?

気になったヨシトは、その後もう一度
彼女の家に行ってみようと思い、あたり
をぶらついていると、そこでばったりと
マリアに出会う。
偶然と言い訳しながら再会を喜んだ。

マリアもとても嬉しそうで、その後
何かと連絡をとるようになり、二人の
距離は急速に近づくが・・・。
マリアから驚きの依頼が!「夫を殺してほしい」と・・・・。

ヨシトがマリアに再会し、マリアの
辛い状況に心を痛める現在と、
切なくも懐かしい彼らの青春時代の
エピソードが交互に描かれる・・・。

芸人出身の著者は、ミステリー小説を
描きながら、ユーモアの味付け加減
が絶妙で、凄く良いタイミングでクスッと
笑わせてくれる。
この作品はさらに青春時代の友情、淡い
恋と切なくなるテイストも加味。
どれだけ引き出しが多いのか!?本当に感嘆する。

究極は、神がかり的な「騙しのテクニック」だ。
「えッ?今までの話は何だったの?」と
ページを逆に捲ってゆくはめになる。

本当に面白かった。脱帽です。

「逆転泥棒」
著者:藤崎翔
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥836(¥760+税)

警察ミステリーの極致「可燃物」

米澤穂信さんの「可燃物」(文藝春秋)読了。
本書は、著者が初めて本格的に警察小説に挑んだ作品。

宝島社「このミステリーがすごい2024」
文藝春秋「2023週刊文春ミステリーベスト10」、
早川書房「ミステリマガジン1月号」の特集
「ミステリが読みたい!」。それぞれの
ランキングで1位を獲得した2023年の傑作ミステリーだ。

群馬県警本部刑事部捜査一課・葛警部が様々な
事件の謎を紐解いてゆく短編集。

「崖の下」
スキー場で起こった殺人事件。
遭難した二人のうち一人が失血死した。犯人は
特定できたが、凶器が見つからない!?
凶器の特定が軸。

「ねむけ」
ワゴン車と軽自動車の衝突事故。
深夜の交差点で起こったその事故は
聞き込みの結果「運転手の信号無視」
という目撃情報。その情報の不自然な
一致は何を意味する?

「命の恩」
人間の右上腕が人気の遊歩道で発見された。
やがてバラバラになった遺体の一部が
次々と見つかる!遺体に不審な点がいくつか
あった。犯人はなぜ目立つ場所に右上腕を
捨てたのか?

「可燃物」
住宅街で連続放火事件が発生。
難航する捜査。その最中、突然犯行が
止まった。いったい誰が何のために
放火事件を起こしたのか・・・?

「本物か」
郊外のファミレスで立てこもり事件が
発生した。立てこもり犯は前科持ちの
男だった。避難した人質たちに事情聴取を
行ったが、証言がいまひとつかみ合わない・・・。

葛警部ほか、捜査員たちの地道な捜査で
集められた数々の証拠が細大漏らさず提示される。
それらを精査してゆく過程で生まれる、
小さな違和感や謎を徹底的に追及する葛警部。
そこから事件の真相へと繋げてゆく。

読み進めていくうちに、読者は無自覚なまま、
葛警部と同じように推理させられていることに気づく。

そして、自分の推理に絶対の自信を持って結末までたどり着く。
しかし、「えッ?」と思わず声をあげそうになるほど、
想像を超える真相が待っている。

著者の持つ、鮮やかすぎる「逆転」の衝撃は、
この作品の中でも遺憾なく発揮されている。

ミステリー作品のの特徴である、ハウダニット、
ホワイダニット、ミスリードが思う存分楽しめる。
警察小説でありながら謎解きに特化した、
正統派のミステリー小説。

『可燃物』
著者:米澤穂信
出版社:文藝春秋
価格:¥1,870(本体価格¥1,700+税)

心が揺さぶられる!警察小説「コーチ」

堂場瞬一さんの「コーチ」(東京創元社)を読了。
人気の警察小説シリーズを何作も手掛ける著者。
その中でも「コーチ」は異色の面白さを放つ
連作長編。

東北署刑事課強行班係係長の益山瞳は、
32歳で係を任されることになった。
しかし、瞳は捜査員たちが若い女性上司に
対し不満を持っているいるように感じていた。
そんな時、殺人未遂事件の通報で
現場に赴いた瞳たちは大きな失態を
犯してしまう!
男性優位の組織の中で自分の立場を含め
苦悩する瞳。そこへ現れたのは・・・?

東新宿署刑事・所貴之は、ある傷害事件の
容疑者の取り調べにてこずっていた。
容疑者は、ひょろりと背の高い優男。
しかし話をしてみると図太く、図々しく
人を馬鹿にしたような態度を崩さない。
本音が見えない男だった。
そんな所の応援と称して一人の刑事が
現れる。

目黒西署刑事・西条は、これまでの
捜査中、何度かマルタイの尾行に
失敗した経緯があり、先輩刑事たち
から刑事失格と言われていた。
そして、新たなマルタイの張り込みと
尾行を指示された西条だったが、
またしても見失ってしまう。
自信を失くし自暴自棄になりかけていた
西条の相棒としてある男がやってきた。

人事二課から派遣された刑事・向井光太郎。
期待されながらもなかなか結果を出せず、
それぞれに苦悩を抱えた刑事たちに的確な
助言を与え、刑事として生きてゆく自信と
誇りを回復させる。

しかし、なぜ人事二課なのか?
謎に包まれた向井のことを気にかけつつ、
成長した三人はやがて警視庁捜査一課
殺人犯捜査第四係で合流する。
そこで殺人事件が発生。
被害者は一人暮らしの女子大生だった。

捜査が進むうちにこの事件に向井の過去が
交錯していることがわかる。
向井の「教え子」たち三人は彼の過去を
探り始める。

前半は、仕事に悩む刑事たちに焦点を
あて、向井を通して成長する姿を描く。
時には厳しく、時には包み込むような
優しさで彼らに助言を与える向井の
姿勢や言葉は、仕事に悩む人たちの
心にじわじわとしみ込んでゆく。

後半は向井の教え子たちが、彼のために
事件の真相を追う、警察小説の醍醐味に
あふれている。

数々の堂場作品の中でもひと際輝く
傑作警察小説だと思う。

『コーチ』
著者:堂場瞬一
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥902(本体価格¥820+税)

ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第4弾「ナイフをひねれば」

ホロヴィッツ自身が作品中に本人役で登場し、
元刑事の偏屈探偵・ホーソーンと
コンビを組んだシリーズ「メインテーマは殺人」、
「その裁きは死」「殺しへのライン」に続く
4作目が本書「ナイフをひねれば」だ。

毎回、ピンチに陥るホロヴィッツ。
今回はどんな事件に巻き込まれるのか!?

ホーソーンを主人公にしたミステリ作品を
書くのに耐えかねたホロヴィッツは、
ホーソーンに契約の打切りを告げる。

だが、ホーソーンは納得しなかった。
後味の悪い別れ方をした二人・・・。

ホロヴィッツは自分が書いた戯曲の
舞台の初日、打ち上げに呼ばれた。
ところがその場に辛辣な劇評家が現れる。
そこで、ホロヴィッツの戯曲は酷評された。

翌朝、その劇評家の変死体が発見される。
殺人に使われた凶器は、昨夜の打ち上げで
参加者全員に配られた記念の短剣。
その短剣からホロヴィッツの指紋が検出された。
そして、ホロヴィッツは逮捕される・・・。

彼を逮捕したのは、前回の事件で
ホロヴィッツに煮え湯を飲まされた警部だった。
彼は無実を訴えたが、「指紋」という
ゆるぎない証拠があるため警察は納得しない。

ホロヴィッツは自分を助けてくれるのは
あの男しかいないと確信するが・・・。

随所に隠された伏線の数々。
その伏線の見事すぎる置き方に感服する。
何気ない聴取の中に事件のキーが隠されているのだ。

そして、今回は著者自身が逮捕されるという
前代未聞の展開。
味方はほぼいない中、ホーソーンだけが
頼りだというのに、いつもの調子で
ホロヴィッツも読者もドキドキものだ。

さらに、あまりにも意外な展開と結末!!!
シリーズ中、一番面白かった。

周囲の空気を全く読む気がない「超」
KYだが、卓越した推理力で事件の真相を
暴く探偵・ホーソーン。
「超」人気のミステリー作家でありながら、
自虐と思わせるほど作中で無能さを
アピールするホロヴィッツ。

この二人のコンビ、まだまだ読みたいから、
ホロヴィッツさん、ホーソーンとの契約を
切らないで欲しい~~~。

『ナイフをひねれば』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)

天久鷹央シリーズ最新刊、2冊同時発売!「吸血鬼の原罪」&「推理カルテ完全版」

知念実希人さんの人気シリーズ
「天久鷹央の推理カルテ」が
2冊同時発売!
「吸血鬼の原罪」と「推理カルテ完全版」
(実業之日本社文庫)です。

「推理カルテ完全版」は、短編集。

小鳥遊が、天医会総合病院の
統括診断部に配属され、天才的な
頭脳を持つ女医・天久鷹央と出会う。
その才能と「超」変人ぶりをまざまざと
見せつけられ、日々彼女に振り回される。

しかし、鷹央はどんな優秀な医師でも
診断することが出来なかった、難解な
病気の診断を下し、数多の患者の
命を救ってきた。
そんな鷹央が、大ピンチに陥っている!
そして、統括診断部の存続も危うい!
一体、彼女は何をしたのか・・・?
なぜそんなことになったのか・・・?

謎に包まれた「病気」の原因を探ると
ともに、頑なな患者や家族を時に厳しい
態度で諭す。その光景は傍目には
厳しすぎるくらいに映るかもしれないが、
彼女の患者の命を救うという使命感と
医者としてのプライドがひしひしと
伝わってきて、読んでいて清々しい
気持ちになる。
天久鷹央という人となりが凄く
伝わってくる作品ばかりだ。

書下ろし長編「天久鷹央の事件カルテ 吸血鬼の原罪」

男性の変死体が発見される。
その死体は、体中の血液が抜き取られ
首元には二つの傷痕があった。
まるで、吸血鬼に血を吸われたような
不気味な死体に困惑した警察は、
天医会総合病院の天久鷹央を頼ることに・・・。
鷹央は初めは面倒くさそうにしていたが、
死体の詳細を聞くと、がぜん張り切りだした。
本当に吸血鬼がいるかもしれないと言い出し、
小鳥遊たちは調査に駆り出されることに。

不気味な男の目撃情報、途中まで本当に
吸血鬼がやったのでは?と思いながら
読んでいたが、やはり鷹央は天才だ。

ホラータッチで描かれた今作。
不気味なシーンが多数あり、ちょっと怖い。
そんなホラーを科学的に解明し事件の
全貌を暴いた天久鷹央の推理は圧巻!!
あっと言わせる真相は相変わらず凄い!

あっという間に読み切った2作品。
天久・小鳥遊・鴻ノ池のトリオはさらに
面白くパワフルに!

『天久鷹央の事件カルテ 吸血鬼の原罪』
『天久鷹央の推理カルテ 完全版』
著者:知念実希人
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:吸血鬼¥847(本体¥770+税)
   カルテ¥803(本体¥730+税)

見事な仕掛け!?「8つの完璧な殺人」P・スワンソン

「時計仕掛けの恋人」「そしてミランダを殺す」
「ケイトが恐れるすべて」「アリスが語らないことは」
「だから、ダスティンは死んだ」、
など、著者の描くミステリー作品は予測不能!
いつも、信じられない結末に息をのむ展開!
そして、最新作「8つの完璧な殺人」は
なんと、ミステリーの名作が8つも登場!
著者の名作ミステリーへのオマージュが半端ない!

雪の夜、ミステリー専門店店主・マルコムの
もとへFBIの女性捜査官が訪れた。

マルコムは10年前に、完璧な完全殺人を描いた
犯罪小説8作品をリスト化し、お店のブログに
掲載していた。

その8作品とは、
「赤い館の秘密」A・A・ミルン
「殺意」フランシス・アイルズ
「ABC殺人事件」アガサ・クリスティ
「アクロイド殺人事件」アガサ・クリスティ
「殺人保険」ジェイムズ・M・ケイン
「見知らぬ乗客」パトリシア・ハイスミス
「The drowner」ジョン・D・マクドナルド(邦訳なし)
「死の罠」アイラ・レヴィン
「シークレット・ヒストリー 黙約」ドナ・タート
ミステリーファンならば一度は手に取っているはず・・・・。

その捜査は、この「完璧な殺人」を模倣した
連続殺人が起こっているという。
犯人は、マルコムが掲載したリストに従って
殺しているのか?

犯人はなかなか浮かび上がってこない。
マルコムはリストにある完璧な殺人を描いた
作品をよく知っている。疑惑の渦中にある。

著者がどれほど上記の8つの作品を読み込んで
いるのか・・・?わかる。
作品の中で行われる殺害方法を研究し
応用し実行する。

著者の巧妙な仕掛けにはまり、思いも
よらない方向へと導かれる。

名作ミステリーのストーリーも楽しめて、
さらに、本編の謎解きも楽しめる!
2重の面白さに、ワクワクが止まらない!

海外ミステリーファンには超おススメの1作。

『8つの完璧な殺人』
著者:ピーター・スワンソン/務台夏子(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)

どこまでも翻弄される!?「だから、ダスティンは死んだ」P・スワンソン

「時計仕掛けの恋人」「そしてミランダを殺す」
「ケイトが恐れるすべて」「アリスが語らないことは」
など、著者の描くミステリー作品は予測不能で
読者はいったいどこへ連れていかれるやら…。
とドキドキしながら読み、驚愕のラストでがつん!
とやられてしまう展開が癖になる作品ばかりで
新作が発売されるとつい、読みたくなってしまう。
しかし、この作品「だから、ダスティンは死んだ」
は、最後に「がつん」とくるのではなく、「がつん」
の連鎖が半端ない!

ボストン郊外の閑静な住宅街へ越してきた
ヘンリエッタと夫のロイドは、隣に住む
マシューとマイラ夫妻とすぐに打ち解け、
食事に招待された。

食後、マシューの書斎へ案内された時、
ヘンリエッタは眩暈を覚えそうになる。
それは、二年半前のダスティン・ミラー
殺人事件で、犯人が被害者宅から持ち
去ったとされる置物を目にしたからだった。

見間違いかと思ったが、翌日口実を設け
もう一度マシューの部屋に案内をしてもらった。
しかし、その置物はなくなっていた。

昨日のヘンリエッタの態度で、マシューに
気づかれ、置物を隠したのだと確信した
ヘンリエッタ。彼は殺人犯に違いない・・・。

それから、ヘンリエッタはマシューに
ついて調べ、彼につきまとう。
警察にも通報するが、逆にヘンリエッタは
隣家から接近禁止命令を受ける羽目に・・・。

次々と「えッ?何で?」と首をひねりたくなる
ありえない展開が続く。
そして、複数目線で語られる物語は、
読み進めると誰の目線なのかわからなくなり、
まるで迷宮に入ったかのような錯覚に陥る。

この展開は、著者にしかできない。
真相は暴かれたにも関わらず、その先に
まだ隠された何かがあるのだ!

これだから、スワンソン作品は止められない!
著者の作品は、中毒性を持っている。
一度はまると抜け出せない。
超絶サスペンスミステリーなのだ!

『だから、ダスティンは死んだ』
著者:ピーター・スワンソン
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)

シリーズ四作目は和菓子がいっぱい!「宝づくし 出直し神社たね銭貸し」

櫻部由美子さんの「出直し神社たね銭貸し」の
シリー四作目「宝づくし」(ハルキ文庫)を読了。

貧乏神に見込まれ、出直し神社でうしろ戸の
婆に仕えるおけい。
毎回、頼まれごとを引き受け、一生懸命に
働くおけいの姿に元気をもらう。

神無月、お蔵茶屋〈くら姫〉の女主人・
お妙が出直し神社にやってきた。
以前借りたたね銭八両の倍返しのために
訪れたのだ。

久しぶりにお妙に会ったおけいは、お妙が
密かに温めている華やかな催しを聞いて胸が躍った。

そんなおけいに、うしろ戸の婆から命令が下った。
それは、同心・依田丑之助からの依頼で、
丑之助の恩師の未亡人・房江の世話をする事だった。
そして、「宝探し」をすること。

房江は一筋縄ではいかない、とても頑固な
女性で、おけいもめずらしく手を焼いた。
それでも、おけいの気働きの良さで少しづつ
心を開いてくれているようだった。
病で、もう長くないとわかっている房江は、
なんとしても家を出て行った息子に会いたいと
おけいに泣きつく。
おけいは房江の頼みごとを聞き、息子の行方を
探すことに・・・。すると・・・。

ある日、小石川の狂骨先生が竹林の中で
みすぼらしい老人を見つける。しかし、
身元がわからず、困惑する狂骨だったが、
老舗菓子店「吉祥堂」の主人が病を得て
から姿を見なくなったことを聞き、もしかしてと、
長屋の菓子店「志乃屋」の女主人・おしの
に身元を確認させる。すると、案の定、
吉祥堂の主人・吉右衛門であった。
一体、吉祥堂で何があったのか・・・?

ミステリアスな二つの謎がやがて明らかになる
過程は、本格的なミステリー作品を読んでいるようだ。

そして、くら姫の華やかな催し物は、なんと
「宝づくし」にちなんだ菓子の競い合い。
今回は「志乃屋」のおしのや、房江の世話を
していた時に出会った二人の菓子職人も登場し
おいしそうなお菓子がふんだんにでてくる。

謎解きの面白さとおいしいお菓子を想像して
ダブルで楽しめる展開。
さらに、おけいの周囲の人たちの人情話に
涙がほろり・・・。

巻を重ねるごとに面白さがましてゆく!
今後の展開も楽しみです!
おけいの淡い恋もいつか実って欲しい!!!!

『宝づくし 出直し神社たね銭貸し』
著者:櫻部由美子
出版社:角川春樹事務所(文庫)
価格:¥836(本体¥760+税)

富野刑事シリーズ最新刊!「脈動」

妖しくうごめく、怪異が引き起こす事件を
富野刑事と祓い師・鬼龍光一が解き明かす。
警察小説と伝奇ミステリの融合が面白すぎる
ファン待望の新作。

警視庁内で警官による容疑者への暴行事件、
警察官同士の淫らな行為など、非違行為が
相次いで起こった。

警視庁生活安全部少年事件課の巡査部長・
富野は、ある筋から警視庁内に
亡者の存在を指摘される。

事態の悪化を恐れた富野は、祓い師・鬼龍光一
と奥州勢の隆景らを呼び出し、庁内の捜査を
行った。
その結果、警視庁を守る結界が破られて
いることが判明する。

それだけではない。
富野は、所轄で傷害事件を起こした少年の
送検に立ち会うと、半グレ集団による
少女売春の情報を掴んだ。

全く無関係な事件かと思いきや、捜査を
進めるうちに奇妙な繋がりを見出す!

鬼龍や隆景のほか、今回は新たな組織の
長たちも加わり、警視庁崩壊の危機に
立ち向かう。

所轄で事件の概要を説明する富野は、いつも
どう話すか迷う・・・しかし結局本当の
事を伝えるしかなく、その話に警戒しながらも
富野に協力する同僚たちの心意気が良い。

「超」リアリストの警察組織で、得体の知れない
者の仕業という事件。それがもしかして現実に
起こるかもしれないと思わせる、今野先生の
物語の描き方に感服する。

『脈動』
著者:今野敏
出版社:KADOKAWA
価格:¥2,035(本体¥1,850+税)