益々面白くなる、「後宮の烏3」

段々と面白くなってきた白川紺子さんの
「後宮の烏」。シリーズ第三弾を読みました。

烏妃暗殺を目論んだ、烏漣娘娘が恐れる
「梟」とは何者か?
その「梟」が残した羽根に自らの行く末を
重ねる寿雪。

「烏妃は一人で在るもの」という烏漣娘娘
の言いつけに背き、寿雪の周りには
寿雪を慕う者たちが集まってきている。
しかし、寿雪は虚しさから逃れることが
できないでいる。

ある日、寿雪のもとへ泊鶴宮の妃・鶴妃の
侍女が訪ねてくる。
雨の夜にやってくる、幽鬼を追い払って
ほしいという。
寿雪は侍女から詳細を聞くと心がざわつく。
なにかよからぬことが起こるのではないか….?

この事件を皮切りに、不可思議な事件が
次々と起こり、やがて、政治的な思惑に
絡めとられてゆく。

そしてそのことが寿雪を追い詰めてゆく。

2巻までは、宮城内部の事件を中心に
描かれていたが、3巻からは次第に
外へと事件が広がり、スケールが
大きくなってゆくようだ。

寿雪を慕う鶴妃だが、彼女の一族は
不穏な空気を漂わせている。
また怪しげな「八真教」なるものも出現し
高峻や寿雪を悩ます。

また3巻では、寿雪と衛青のつながりにも
驚かされたり、護衛の温螢の寿雪に対する
忠誠心にキュンとなったりと読みどころ満載だ!

そして高峻は、寿雪を「烏」から開放する
一筋の光明を見出す!!!

寿雪の運命はどう動くのか?
4巻が待ち遠しい~~。

『後宮の烏 3』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥610(税別)

「冤罪」の悲劇を問う!「完全無罪」

前から気になっていた、大門剛明さんの
「完全無罪」(講談社文庫)を読みました。

「冤罪」をテーマにしたミステリーでは
いかにして「冤罪」が生まれたのかを
問うた作品が多い中で、この作品は
冤罪によって生まれた悲劇が描かれていて
胸に迫りました。

大手弁護士事務所に所属する、
駆け出し弁護士・松岡千紗は、幼いころ
誘拐された恐ろしい過去を持っていた。

そんな千紗が、21年前の少女誘拐殺人事件の
冤罪再審裁判の担当に抜擢された。
その冤罪を訴えている男は、千紗を誘拐
監禁したかもしれない容疑者なのだ。

しかし、千紗は自分の過去と殺された
少女のため、事件の真相を突き止めると
心に誓い、容疑者と向き合う。

冤罪を訴えている男・平山は、そんな千紗の
態度にやがて心を開き、捜査に協力する。

平山は小学校の用務員をやっていた。
その頃から隠し撮りを疑われていた。
そして、一人の少女が誘拐され殺害された。
真っ先に平山が疑われる。
平山の車に毛根付きの髪が残っていたことから
DNA鑑定がなされた。そして被害者のDNAと一致。
平山は逮捕された・・・。

警察は平山犯人説で凝り固まった。
しかし、平山は否認を続けた。
ところが12日目に自白する。
一体何があったのか…。

密室での取り調べ、違法な聴取、
先入観…。そこから生まれる思い込み。

クライマックスの度肝を抜く真相に
思わず涙腺がゆるんでしまった。

ミステリー小説の形をとりながら
「冤罪」の悲劇を正面から訴えている。
重厚な法廷ミステリー。

『完全無罪』
著者:大門剛明
出版社:講談社(文庫)
価格:¥700(税別)

「腕貫探偵」シリーズ最新作「逢魔が刻」にぶっ飛んだ!!

西澤保彦先生の文庫「腕貫探偵」シリーズは、
「帰ってきた腕貫探偵」が最新作です。
そして、同じ時期に単行本の新刊も出ました!
「逢魔が刻 腕貫探偵リブート」
早速読みました。
相変わらずの面白さ!さらにさらにパワーアップ!

神出鬼没の公務員探偵「腕貫さん」を
‘だ~りん’と呼び慕う、美貌のセレブ
女子大生、住吉ユリエ。

【ユリエのお見合い顛末記】
そんなユリエにお見合い話が浮上。
住吉グループの総帥・祖母からの話だけに
断れない。しかし祖母の美味しい食事ができる
の一言でお見合いに出かけた。
美味しい食事のあと、見合い相手と二人きり。
気まずい空気が流れたが、もう少し食事を
しましょうとの申し出。ユリエにNOはない。
そして食事をしながら相手から出た話に仰天!
なんと、この男性、とんでもない秘密を
抱えていた!?

【逢魔が刻】
櫃洗大学で教鞭をとる男性講師。
ひそかに住吉ユリエを思っている。
今日も外食をしていたら、ユリエたちがやってきた。
それにしても、先日も外食先でユリエたちと
遭遇しかけた。ストーカーと思われていないか…。
そんな男性講師は自分にテレパシーがあると
思い込んでいた。
複雑な家庭環境で育ったこの男性講師。
ほぼ縁が薄くなっていた父親が亡くなり
葬儀に出席するため、故郷にもどると
彼の実家には警察の規制線が張られ、
警察車両が取り囲んでいた。
幼いころの思い出の食堂に行ってみると
そこに住吉ユリエがいた!!
ところがこの事件、思わぬ方向に転がってゆく。

【マインド・ファック・キラー】
櫃洗大学で臨時講師をしている、外国人
男性講師たち。日本人の女性たちと
きわどい関係を続けている。そんな彼らは
ある日、一泊で日本人女性の知り合いの
別荘でパーティーを行うことに。
ところが、それが信じられない惨劇を引き起こす。
今までにないぶっ飛びのシーンに衝撃!

【ユリエの本格ミステリ講座】
ある日、同級生の男の子から、「親族が関わった
殺人事件を題材にミステリ小説を書いていみたい」
と相談される。ユリエは大乗り気でストーリー
作りに着手。しかし・・・
最後の最後でなんと「腕貫探偵」本人が登場。
そのストーリーをどう作るのか?
腕貫さんに相談することに….。

ユリエのお仲間たち、そして、水谷川刑事など
おなじみの面々が終結!!

ミスリードに大どんでん返し、本格ミステリの
面白さが詰まっている!
笑撃?衝撃!度肝を抜く展開も待っている!

連作ミステリの傑作!

『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』
著者:西澤保彦
出版社:実業之日本社
価格:¥1,500(税別)

本格ミステリ大賞受賞作「刀と傘」が凄い!

昨年発表されたミステリーランキングで
「ミステリが読みたい」国内1位、
「このミステリーがすごい」国内5位、
「文春ミステリーベスト10」国内10位、
「本格ミステリ」国内4位にランクインした、
伊吹亜門さんの『傘と刀』(東京創元社)
を読みました。
本格ミステリ大賞を受賞した新人作家さん
です。この賞にふさわしい、とても
面白かった!

幕末の京都が舞台。
佐幕派・倒幕派の両方から命を狙われていた男が
隠れ家で滅多斬りにされていた。
尾張藩士の鹿野師光はこの件で佐賀藩士の江藤新平と
知り合う。
江藤は惨殺現場とその周辺、被害者の人間関係
を調べ、事件の謎を鮮やかに解いてみせた。

明治になり、江藤は司法省の改革に動き出す。
自分の右腕として、鹿野師光を探す江藤。

江藤は司法改革に抵抗する京都の弾正台を
つぶすために、密偵を潜入させる。
しかし、密偵は自害。だが江藤はその死に
不信を抱く。その事件で鹿野と再会した江藤。
密偵の死は自殺か?他殺か?

国家転覆をはかり、収監されていた囚人。
その日のうちに処刑される予定だったが
毒殺された。誰が毒を盛ったのか?
動機のあるものは何人かいたが、すぐに
死を迎えるのにわざわざ毒殺するとは?
その動機が衝撃的!

市政局次官と女中が妾宅で何者かに殺害された。
彼らを襲った犯人は、妾によって銃殺された。
たまたまその家の前を通りかかった江藤は、
単純に見えたこの事件の裏にある企みに
気づく・・・。

幕末から明治へと時代が激しく変わる。
そんな過渡期ゆえに起きた数々の事件。
現在のような科学捜査はない。
人間の怜悧な観察眼と論理的頭脳のみが
事件の謎を解く。
その鮮やかな謎解きに瞠目する。

江藤と鹿野は数々の犯罪に関わるが
その過程でぶつかる二人の正義。
江藤の目的をためなら手段を選ばない
強引なやり方に憤りを覚える鹿野。
そんな二人を待ち受ける最後の事件とは?

幕末から明治にかけて、激動の時代の
息吹が圧倒的臨場感をもって描かれる。
時代小説としても本格ミステリとしても
楽しめる凄いミステリ。

『刀と傘 明治京洛推理帖』
著者:伊吹亜門
出版社:東京創元社
価格:¥1,700(税別)

江戸の少女たちが大活躍!「大江戸少女カゲキ団」

「大江戸少女カゲキ団」、ミステリーでは
ありませんが、読んであまりにも可愛くて健気な
少女たちの心意気に感動したので、紹介しちゃいます。

時は江戸中期、庶民の娯楽といえば芝居見物。
歌舞伎は大流行している。

役者だった父と、父の追っかけを
やっていた母との間に生まれた芹。
芹は幼いころ、父のもとで芝居の稽古
に励んでいた。
しかし、あることがきっかけで芝居や
踊りからすっかり遠ざかってしまう。

芹はこの時代の女の子にしてはかなり
背が高い。そのこと気にしていた。
女中として働いている「掛け茶屋まめや」
のおかみさんは、そんな芹を毎日
励ましてくれる。

ある日、芹は久しぶりに心の中で師と仰ぐ
東花円の稽古所を覗いた。
そこには、大店のお嬢さんたちが、花円に
怒鳴られながら稽古の真っ最中。

それを見た芹は、自分だってお金を払えば
師匠に弟子入りできるのに…

心に広がる嫉妬心。踊りを捨てきれず、
花円の稽古を覗いては、一人道端で稽古を
繰り返す芹だった。

しかし、お金をかけて立派な師匠に学んでも
一向に上手にならないお嬢さんたちもいる。

父の呪縛から逃れられず、悶々と日々を送る
札差しの娘・才。
茶問屋・駿河屋の娘・奈加は、稼業が厳しくなり
稽古どころではない。
才にあこがれる、魚屋の娘・紅。
あまり稽古に熱心でないが、才のあとを追いかけている。

そんな4人の女子たちが出会い、一つのことを
やり遂げようとする。
最初は喧嘩ばかりしていた4人だったが、
やがて、思いは一つとなり目標に向かって
ただひたすら精進するのだ。

読んでいてなんだか胸があつくなった。
自分がこの娘たちと同じ年ごろ、こんなに
一生懸命何かに没頭したことがあっただろうか?

そう思うと、彼女たちのがんばる姿に
思わず応援したくなった。
とってもとっても素敵な作品。

「着物始末暦」シリーズの中島要さんの
新シリーズ。
次回作、期待しています!!

『大江戸少女カゲキ団』
著者:中島要
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥640(税別)

東京湾臨海署安積班最新作「炎天夢」。悩む安積係長!

昨年から、1年の初めに読む本は今野敏作品だと
決めた。なので、買ってすぐには読まない。
年初めに読む本がなくなるから。
で、今年は大好きなシリーズ、安積班の最新作
を読んだ。

安積が、強盗傷害事件が片付いたあと、帰宅しようと
していたところへ管内で火事発生の無線が流れた。

強行犯第二係の相楽が率先して現場へ向かった。
ホッとしたところへ今度は海で死体が上がった
という一報が入る。

結局、帰ることをあきらめ、安積は、村雨たちを
現場に向かわせた。
村雨からの連絡で、殺人事件だと判明。
殺されたのは、グラビアアイドル・立原彩花。
須田の博学によって身元が判明した。

近くのプレジャーボートで被害者のものと思われる
サンダルが発見された。
船の持ち主は、被害者が愛人との噂がある芸能界の
ドン・柳井武春だった。

柳井には黒い噂が絶えない。芸能界への影響力も
大きかったため捜査本部では、柳井犯行説が
有力だった。

さらに、刑事部長の白河がこの捜査本部へ顔を
出した。多忙な刑事部長の臨席に誰もが驚く。
そんな中、白河刑事部長と柳井が非常に親しい
間柄であることが判明する。
白河の臨席は、捜査本部に圧力をかけるためなのか?

そして、継続捜査班から安積に柳井が関わった
13年前の事件について、再度柳井を聴取したいと
内々で頼まれる。

安積の前に幾重にも立ちはだかる捜査の壁。

しかし、安積は苦悩しながらも頼るべき
仲間に頼り、決して思い込みに流されず
公平な目で関係者に向き合う。

今回は、いつも安積を敵視していた相楽が
安積の捜査に協力してゆく。
安積に影響されたのか?相楽の変化も見逃せない。

そんな安積に、安積班のメンバーにいつも
元気をもらう。

2020年も気持ちよくスタート出来た!
感謝です。

『炎天夢 東京湾臨海署安積班』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,700(税別)

高校生探偵の凄さに舌をまく!「紅蓮館の殺人」

東大ミス研出身、25歳のミステリー作家・
阿津川辰海さんの「紅蓮館の殺人」。
「このミステリーがすごい 20202年版」国内第6位、
「ミステリが読みたい2020年版」国内第5位、
「2020本格ミステリ・ベスト10」国内第3位。
年末の名だたるミステリーランキングで10位以内に
ランクインした凄い作品。

山中の館に隠棲した文豪に会うために、
高校の合宿を抜け出した「僕」と葛城。

しかし、落雷による山火事に遭遇した。
危険が迫る中、「僕」と葛城は文豪の館に
たどり着き救助を求めた。

館には文豪の息子と孫の青年と孫娘がいた。
山火事で火の手が回って下山できないと
説明すると、彼らはしぶしぶ館に入れてくれた。
途中、下山中のぶっきらぼうな女性とともに
彼らは館で山火事から避難した。

しばらくすると、おなじく下山できなくった
保険外交員の女性とその客という男性も
避難してきた。

館には仕掛けがたくさん施してあり、ミステリ
好きでこの館の主人である文豪のファンだった
「僕」と葛城は探検を始める。

その間、火の手は徐々に館にも迫ってきていた。
館の中を探検するうちに「僕」は、文豪の孫娘と仲良くなる。
明るい彼女の性格に元気をもらう「僕」。

ところが翌朝、その孫娘が吊り天井で圧死している
のが発見された!
事故か?殺人か?
葛城は推理をしようとする。
そこへ保険外交員の女性が「事故」だと言い放った。

火の手はもう目の前に迫ってきている。
住人と他の避難者たちは推理よりも脱出を優先
すべきだと語る…。

葛城によって次々と登場人物たちの「嘘」が
暴かれてゆく!
さらに、10年前に起こった殺人事件の謎も
絡み合い、吊り天井事件の真相も複雑に
なってゆく。

山火事で館に閉じ込められる特殊なクローズド
サークルと、館焼失までのカウントダウンを背景に
葛城のロジカルな推理が冴えわたる!
生存と真実!彼らは生きて真実を知ることが出来るのか!?

クールな高校生探偵・葛城が凄すぎる!

『紅蓮館の殺人』
著者:阿津川辰海
出版社:講談社(タイガ文庫)
価格:¥870(税別)

「大江戸科学捜査八丁堀おゆう」第6弾!北からの黒船!?

江戸と現代を往来する、元OLの関口優佳・
通称おゆう。
江戸で起きた事件の謎を現代の科学捜査で
解き明かす!
めちゃめちゃ面白い時空探偵ミステリー。

その第6弾は、ロシア絡みだ。

ロシアの武装商船の乗組員・ステパノフは、
日本の鹿島灘あたりに漂着した。
村人に見つからないように潜入したつもり
だったが、役人に見つかり捕えられてしまう。
ところが、役人の目が離れたすきに逃走してしまう。

江戸では、異人が府内に潜入したと、
鵜飼伝三郎の上司である戸山から直々に話が出た。

トップシークレットだ。その場に集められたのは
鵜飼をはじめとする同心たちと優秀な岡っ引きたち。
その中には現代と江戸で二重生活を送るおゆうもいた。

その異人は江戸に入ったかも・・・という情報で、
極秘裏に異人を捕えよとの命がくだった。

そんな折、ステパノフの移送責任者の配下だった
鉾田代官所手代・狭間甚右衛門が殺害される。

甚右衛門の目撃証言から、割賦のようなものを
持っていたとの情報があがり、そこから
捜索を開始・・・。

捜索の末、江戸に潜伏していたステパノフは
おゆうたちによって捕えられ、お目付役が準備
した隠れ家に幽閉されてしまう。

おゆうは、甚右衛門殺害の謎を探るため、
一旦現代に戻り、現場の遺留品を
鑑定専門の宇田川に預ける。
その折、ステパノフの盗聴を命じられる。

おゆうは盗聴器を仕掛けるため、また事件の
からくりを探るために、ステパノフ付の
女中として、隠れ家に通うことに成功する!

おゆうの機転で次々と暴かれる、ステパノフの
秘密。
彼は一体何者なのか!?

下手をしたら外交問題に発展しかねない大事件を
おゆうはいかにして解決に導くのか!?

今回は盗聴器が大活躍!
外国船がちらちらと日本海に出現し始める頃が舞台。
ロシアのエカテリーナ女帝に謁見した
実在の人物、大黒屋光太夫が登場したり
「異人」をみた江戸の人たちの驚きがリアルに
伝わってきたりと本当に面白い。
そしてクライマックスに描かれたエピソード!
へえ~そういうことって思わず唸る展開!

そして一番興味深いのは、ドローン事件から
江戸にちょこちょこやってくるようになった
宇田川。おゆうをはさんで鵜飼伝三郎と
火花を散らすシーンが、とても面白い!

第6弾も堪能しました!

次回作が待ち遠しい!

『大江戸科学捜査 八丁堀おゆう 北からの黒船』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥680(税別)

皇后になるまでの関小玉を描く第4弾「紅霞後宮物語 第零幕四」

「紅霞後宮物語」の本編も非常に面白いけれど、
皇后・関小玉の若き時代を描く、「零幕」
シリーズも凄く面白い。
大好きなシリーズ。

兄の代わりに武官となり、いまや閣下と
呼ばれるほど偉くなった小玉は、
母が亡くなり、やっと休暇をとり
義姉の三娘(さんじょう)と
甥の丙のいる実家へと戻った。

そこへ、従卒の清喜も休暇をとってやってきた。
そしてちゃっかり居ついてしまう。
清喜の人柄からか、母を亡くした悲しみを
まぎらすことができた3人だった。

ところが、そこへ副官の文林までやってきた。
三娘は、小玉に対する文林の接し方を
見ていぶかしむ。文林は小玉に好意を
抱いているのでは・・・・と。

そんなとき、とんでもない事件が起きる。
小玉のかつての許嫁がまたまた求婚して
きたのだ。
妻が死んで本当に好きだったのは小玉だったと・・・。

小玉からすればそんな勝手な言い分は通らない
自分を捨てて、金持ちの令嬢と結婚し、
小玉が村から出ることになった原因を作った男だ。
決して復縁はない。
ところが、小玉が首をたてに振らないならと
いうことで強行突破に出たのだ!
いきなり結婚式!?
しかも村ぐるみで。

怒り狂った小玉は、家族皆で都へ出る決心をする。

そして、三娘は子どもの頃に出会った占い師の
言葉を思い出す。小玉を見た占い師は、
「あの娘は、やがて高き御位にのぼるだろう」
と言った。

占い師の予言は実現し本編では、小玉は皇后となるが…。

小玉の恋の変遷と、家族の絆、そして…。
コメディタッチで描かれるが、今回は切ない展開が
心に響く。

続きが気になる、はまる面白さ。
次回の展開はどうなる!!

『紅霞後宮物語 第零幕四 星降る夜に見た未来』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫
価格:¥620(税別)

犯罪ミステリーの最高峰!『罪の轍』

今年話題の犯罪小説「罪の轍」を読みました。
昭和38年に起きた、「吉展ちゃん誘拐殺人事件」
をモデルに描かれた犯罪小説です。

昭和38年。アジアで初めて開催される
東京オリンピックの前年、東京は熱狂に
包まれていた。

二十歳の青年・宇野寛治は、北海道で
漁師の仕事を手伝いつつ貧しさと孤独、
そして蔑みの日々を生きていた。

ある日、寛治は漁師仲間の男に弱みを
握られたあげく、その男の奸計にはまり
海難事故にあってしまう。

数か月後、東京都荒川区で元時計商の
老人が自宅で殺害された。
警視庁捜査一課の落合刑事は、捜査の過程で
子供たちから北国訛りの青年の情報を得る。
やがて捜査線上に行方不明と思われていた
宇野寛治の存在が浮かび上がる。

その矢先、浅草署管内で小学1年生の
児童が誘拐される事件が起こる!
犯人の要求は身代金50万円。

警察は必死で児童と犯人を捜索するが
杳として行方が知れない。
警察の捜査を嘲笑うかのように逃亡を
続ける不気味な犯人の正体とは?

警察の度重なる捜査ミス、早期解決を望む
世間からの重圧、限られた時間の中で刑事
たちは極限まで追い詰められてゆく。
それでも警察一丸となって、
絶対に犯人をとらえ、
児童を親元に還すという強い思いが
ひしひしと伝わってくる。

そして刑事たちの執念の捜査で事件の
全貌が明らかになったとき、
言葉を失うほどの衝撃を受ける。
何が人間を犯罪者へと変貌させるのか?
なぜこんな悲劇が起こったのか?
描かれた真相の重さに胸が締め付けられる。

敗戦後すさまじい勢いで発展を遂げる日本。
しかし、貧富の差はやはり激しい。
オリンピックのために集められた労働力。
山谷と呼ばれる労働者の宿泊施設の実態や、
活動家と警察の攻防も臨場感たっぷりに
描かれる。

また、当時の警察組織についても詳しく描かれている。
未熟な誘拐事件捜査のため、ミスを重ねる警察。
逆探知などまだ導入されておらず、犯人の
声を録音しテレビで放送するという手段で
捜査を行っていた。

世間から置き去りにされた
一人の青年の孤独な魂の彷徨を、
緻密な心理描写と緊迫感あふれる圧倒的リアリティーで
描き切った、犯罪ミステリ。
その熱量のすさまじさが、行間からにじみ出ている!

『罪の轍』
著者:奥田英朗
出版社:新潮社
価格:¥1,800(税別)