運命に翻弄される子供たちを描くミステリー。「青い雪」

第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作
麻加朋さんの「青い雪」を読みました。
子どもたちが主人公でとても悲しい展開が
胸に突き刺さる。慟哭のミステリー作品。

雪の降る夜に起こった飛び降り事件。
その飛び降り事件に巻き込まれて亡くなった女性。
それがのちの悲劇の始まり・・・。

的場家、柊家、蓮見家の3家族が夏の数日を別荘で
共に過ごしていた。
的場家は主が政治家で息子の秀平と娘の希海。
柊家は娘の寿々音、蓮見家は幼い娘の亜矢。
そして両親と妹を火災で失った大介。
蓮見家の夫婦が大介を息子のように大切にした。

子どもたちは様々な事情を抱えていたが、
皆で集まるこの夏だけは、本当の家族のように
兄弟のように過ごしていた。

男子はヒーローノートに名前を残したいと
張り切り、実際に人助けをしそのノートに
記した。

そんな子供たちも思春期に突入する。
淡い恋の始まりや、思春期特有の悩みなどを
持ちつつ楽しい夏の休暇を過ごすはずだった。

しかし、ある夏の日、蓮見家の一人娘・亜矢が
かくれんぼをしているときに行方不明になって
しまう。
事件性を疑われたが、手掛かりはほとんどなく
幸せだった夏のひとときは永遠に失われてしまった・・・。

悲劇から数年、それぞれの家族の形が徐々に変化してゆく。
そんな時現れた一通の告発状。
それが幼女失踪事件の真相を暴く鍵となる・・・。

前半は子供たちに焦点を充てた青春物語。
後半は幼女失踪事件の謎を解いてゆくミステリー。

緻密に設定された幼女失踪事件の謎を解く過程が
非常に面白く読める。

家族の愛とは絆とは何かを考えさせられる、
また、孤独にのみこまれてしまう恐怖のような
ものを感じた。

デビュー作とは思えない完成度。凄く面白かった。

『青い雪』
著者:麻加朋
出版社:光文社
価格:¥1,870(本体1,700¥+税)