切なすぎる!警察ミステリー小説、桜木紫乃『凍原』

警察小説を読んで、久しぶりにじわ~っときました。
桜木紫乃『凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂』(小学館文庫)、
この小説、なんとも言えない切なさと悲しみが漂っている、
でも読みながら決して途中で止めることのできない、そういう作品でした。

小説の舞台は釧路、留萌、そして樺太。 広大なる北海道の釧路湿原から事件は始まります。
ある日、小学校4年生の少年・貢が湿原に行ったきり行方不明になった。
湿原の谷地眼に落ちたと思われ、帰ってくることはなかった。
それから十七年が経ち、貢の姉の比呂は、北海道警釧路方面本部に着任する。
その直後、釧路湿原で男性の他殺体が発見される。
比呂は、相棒である先輩刑事の片桐と共に現場へ臨場する。
片桐は、貢が失踪した事件の担当刑事だった。
比呂が刑事となって釧路に戻ったことを複雑な思いで迎えたのだった。
殺された男の名は鈴木洋介。青い目を隠すためにカラーコンタクトを入れていたようだ。
比呂と片桐は、鈴木洋介のルーツを辿るため捜査を開始する。
鈴木は自分の青い目を忌み嫌い、どうしてもこの青い目の理由が知りたくて、調べているうちに何者かに殺された・・・・??
比呂と片桐の推理が進んでいく。
戦争で人生を狂わされた女性の悲劇がさらに悲劇を生む・・・。終戦後の女たちの生き様と、
今の女性たちの生き様が交互に描かれている。
いつの時代も女性が背負わされるものは重い。
その重さから逃げ出したつけをどこで払うのか?そして何で払うのか・・・?
つらい時代を生き抜いた女性をやさしく、包み込むように描いてあり、切なくなりました。
ひとつの事件から暴かれる過去は非情だけれど、物語の底辺には悲しみがあふれいているけれど、
女性たちの再生も描かれています。 異色の警察ミステリーです。

『凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂』
著者: 桜木紫乃
出版社:小学館
価格:¥619(税別)