衝撃展開!「イエロー・エンペラー 警視庁捜査一課八係警部補・原麻希」

吉川英梨さんの「警視庁捜査一課八係警部補・原麻希」
シリーズ最新作「イエロー・エンペラー」を
読みました。

ちょっと待って!何この展開!待って~
うそ~・・・!
と思わず叫んでしまった。
なんとなんと「新東京水上警察」の最新作
以上の衝撃が待っている!

殺人事件を首謀したと思われる極右組織の
捜査をすすめている、原麻希ら捜査一課八係。
ある日、自宅で偶然ショッキングな
動画を発見する。
催眠ショーの生配信中、催眠術をかけられた
人物が他の人物に出刃包丁を振り下ろす
場面を目撃した!
あわてて現場に駆け付けるが!

その後、高尾山中で車の中で横たわる
6人の男性の遺体が発見される。
不可解な体勢の遺体もあり、これは
自殺に見せかけた殺人ではないかと疑う。

広田達也は、八係の係長だが、
娘がある事件に巻き込まれたことで
PTSDに陥りパニック障害を発症し、
苦しんでいた・・・・。

原麻希たちが、事件の捜査に奔走する
過程と同時に、広田はパニック障害の
原因を探るため、催眠療法を受けていた。

凄惨な事件、その裏側には恐ろしい
敵の姿があった・・・。

衝撃的な事件の真実にも驚愕するが、
この作品の最大の読みどころは、
麻希と達也の過去が交錯する切ない展開。

原麻希ファンにはたえられない、
切なさに涙が止まらない。

『イエロー・エンペラー 警視庁捜査一課八係警部補・原麻希』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥730(税別)

歌舞伎町を疾走する女刑事!『新宿特別区警察署 Lの捜査官』

吉川英梨さんの警察小説シリーズ
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」
「警部補・原麻希」「十三階の女」。
どのシリーズも面白くてはまる!

最新作「新宿特別区警察署 Lの捜査官」
は、警察小説としては異色の展開!

家庭を持つ警察幹部の女性刑事・新井琴音、
部下はなんとレズビアンであることを
カミングアウトしたおよそ刑事らしくない
超個性的な刑事・堂原六花。

そんな二人は、新宿のホテルで起きた
女性殺害事件と、歌舞伎町で起きた
無差別殺傷事件を追うことに!

しかし、無差別殺傷事件の方は
事件を起こした犯人も自殺してしまった。

二つの事件は何がきっかけで起こって
しまったのか?

LGBTの人々がが多く集まる
歌舞伎町という街を知り尽くす
堂原の捜査力とL署の面々の奮闘で
二つの事件の真相が明らかになってゆく・・・。

琴音の夫は捜査一課の刑事。
妻が夫より階級が上になったことで、
夫婦仲はぎくしゃく中。

家庭と警察幹部としての仕事の
両立で疲れ果てる琴音。
男性たちの本音は腹立たしい!。
六花の琴音に対する言葉。
あまりにもリアル過ぎて、
読んでいて苦しくなる場面もあった。

この作品、なんでこんなにも
心をざわつかせるの?

また、LGBTの人たちについて真摯に
向き合い、丁寧に描き、少しでも
理解したい寄り添いたいという
思いが感じられた。

今の世の中の、全ての「生きにくい」と
思っている方々に読んでほしい―
これは著者のメッセージ・・・・。

『新宿特別区警察署 Lの捜査官』
著者:吉川英梨
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

元白バイ隊員の著者が描く!「女副署長」の捜査魂!

「虚ろの聖域 梓凪子の調査報告書」
で第10回島田荘司選ばらのまち福山
ミステリー文学新人賞を受賞し
デビューした松嶋智左さんは、
元白バイ隊員。
その経験を活かし描いたのが、
本書「女副署長」(新潮文庫)だ。

数か月前、日見坂署に副署長として
赴任してきた、田添杏美警視。
警察官人生33年というベテランで
あり、県内初の女性副署長という
ことで周囲の目は厳しい。

夏のある日、大型台風が接近
し、大雨に見舞われていた。
夜になり、台風被害対策本部
が設置され、署内の緊迫度は
頂点に達していた。

そんな中、地域課警部補の死体
が警察署の敷地内で発見され、
署内に衝撃が奔った!
胸にはナイフが突き刺さっており、
明らかに他殺。
直後に封鎖されるが、土砂降りの
雨で遺留物が流されてゆく。
犯人は今だ庁舎内に隠れているのか?
それとも、同じ警官の仕業なのか?

台風被害対策という非常事態に
なんと警官の刺殺体!?
これ以上ない大失態に杏美は、
副署長として、所轄署の名誉
をかけて犯人を挙げる決意をする。

だが、杏美の決意を挫くような
事態が同時多発的に起こる!
留置場での不可解な出来事、
署長の娘にかけられる容疑、
被害者の隠れた貌。
署員たちの秘密。
さらに、警部補殺害事件を巡る
剛腕刑事課長との激しい対立。

元警察官であった著者の経験が
随所に活かされ、本書の現場の
描写が非常にリアル。

さらに、警部補殺害事件は、
誰がいつどのようにして殺害したのか?
警察署内というクローズな空間での謎の
設定と、どんでん返しに次ぐどんでん返し
は本格ミステリーの王道を行っている。

女副署長・田添杏美がいかにして、
それらを解決に導いたのか?
この物語の面白さを堪能して欲しい。

『女副署長』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥670(税別)

最強の女スパイ小説第2弾!これ以上ないほど危険任務『十三階の神-メシア』

「女性秘匿捜査官・原麻希」
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」など
多くの警察小説のシリーズを描きつづける吉川英梨さん。

どのシリーズもめちゃめちゃ面白く、
1作品読んだら必ずはまってしまう。
作品に登場する女性刑事たちはとても
魅力的で大好きだ。

シリーズ第1弾『十三階の女』で衝撃的な
登場を果たした、最強の女スパイ・黒江律子。

公安の中でもエリート中のエリートが集められた
精鋭部隊、組織は警視庁の「十三階」に属し、
国家をテロリストや異分子から守るため、
時に非合法で非情な手段に出る。
盗聴・盗撮・身分偽装など何でもやる。

そんな黒江律子に与えられた新たな任務は、
禁断の暗殺指令だった!?

かつて地下鉄で大規模テロを起こし、
教祖はじめ、多数の信者が死刑判決を
受けた「カイラス蓮昇会」。
その教祖の死刑執行が迫り、警察は対応に
苦慮していた。

そんなとき律子の母がカイラスの後継団体に
入信してしまい、律子は窮地に陥った。
何とか母を止めなくては・・・。
しかし、相談できる上司の古池は行方不明に
なっていた。

ところが、校長と呼ばれている上司から
カイラス後継団体に潜入し、その裏の
教祖の正体を探れとの指令が入る。
裏の教祖は、若い女性を侍らせているという。
なんと、その上司は律子の妹を潜入させるよう
迫る。

抵抗した律子だったが、妹はあっさり引き受け
まんまと潜入に成功する・・・・。

オウム真理教事件を彷彿とさせる背景で、次々
と試練を与えられる律子。
律子が唯一心を開くことのできる、上司・古池
もおらず、十三階の誰も信用できない、
誰が味方で誰が敵なのか?それすらわからない
そんな状況でも律子は必死で仕事を続ける。

今作の怒涛のストーリー展開に、読んでいる
こちらも巻き込まれてしまいそうになる。
いったいどうなるのか?
さらに、クライマックスのどんでん返しは、
今までにないほどの驚きが待っている!

律子の途方もない頑張りにちょっと切なくなってしまった。

しかし!次回作も期待大~!

『十三階の神-メシア- 警視庁公安部特別諜報員・黒江律子』
著者:吉川英梨
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥680(税別)

面白すぎてノンストップ!「逃亡刑事」

中山七里さんの警察ミステリー「逃亡刑事」が
面白すぎて止まらなかったです!

中山作品の中でも特に、
悪徳弁護士・御子柴シリーズや
渡瀬警部補、犬飼刑事が登場する
警察小説が大好きですが、
「逃亡刑事」の主人公、高頭冴子警部の
キャラが際立っていて、彼らがかすんで
しまいそうです!

千葉県警捜査一課で検挙率トップの班を
率い、アマゾネスと異名をとる、
強行犯係の係長の高頭冴子警部は、
正義感が強く、信念もって捜査にあたる
絶対的な上位下達で係をまとめる。
捜査能力にも長け、部下からの信頼も厚い。
身長180㎝、柔道・剣道いずれも強い
そんじょそこらの男どもなど朝飯前に片付ける!

施設に預けられ、そこで子供たちを指導する
教官に虐待をされた8歳の少年は、母親に
会うため、施設を脱走する。
その途中、少年はとんでもないものを目撃する!
危険な目にあいそうだったが、なんとか
その場を逃げ切った。

少年が脱走した翌日、閉店したカーディーラーの
店舗内で、単独で麻薬密売ルートを探っていた
刑事の銃殺死体が発見される。

捜査にあたったのは、高頭班。
高頭は広域暴力団宏龍会の幹部・山崎と
交渉し、麻薬ルートの情勢を探った。
山崎によると、謎の麻薬ルートがあるという。

事件を目撃した少年は、犯人の顔を見ていた。
少年の証言を参考に、押収物を調べると
千葉県警がぶっ飛んでしまうくらいの
危ない事実をつかむ。

ところが、事件の真相を知った高頭は、
真犯人に嵌められ、警官殺しの汚名を着せられる。
自分の無実を証明できるのは、その殺人を目撃
した8歳の少年ただ一人!

高頭は少年を連れ警察組織から逃亡する!
県警内部を敵に回し、高頭は逃げ切れるのか?

アマゾネス・高頭警部があまりにもかっこいい!
警察の正義のために命の危険も顧みず、真相を
暴こうとする姿勢に拍手喝采!

また、二人が逃亡中に出会う人情厚い人々が
彼女たちをサポートする。
何が正しくて、何が悪なのか?
高頭は彼らとの出会いの中で人間として
警察官として成長するのだ。

めちゃめちゃ面白く、時間を忘れて読み
ふけりました。
高頭班の活躍、もっと読みたいです!

『逃亡刑事』
著者:中山七里
出版社:PHP研究所(文庫)
価格:¥780(税別)

過酷な運命を背負う刑事を描く!『ブラッド・ロンダリング』

吉川英梨さんといえば人気の警察小説
シリーズが何作もあります。
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」
「警部補・原麻希」「十三階の女」。
どのシリーズも面白くてはまります。
シリーズ1作目を読んでしまうと、
次から次へと読みたくなるのです。

また、シリーズでない作品は、社会的
メッセージが強いかなと感じます。
「雨に消えた向日葵」は少女誘拐事件を
通して、日本社会の病理に斬り込み、
心が揺さぶられました。

そして、最新作『ブラッド・ロンダリング』は、
過酷な運命を背負わされた人たちの悲痛な叫びが、
胸に響きます。

警視庁刑事部捜査一課に新人刑事が配属された。
彼の名前は、真弓倫太郎。父親も祖父も警察官。
しかし、彼には絶対に知られてはならない秘密があった。

その日、マンションの駐車場の車に真っ逆さまに
突き刺さった死体が発見された。
男の身元はすぐに判明。雑誌記者で、遺書が
遺されており自殺と断定される。
しかし、遺体の靴に残っていた塗料が気になった
警視庁刑事部捜査一課の二階堂汐里は
事件性があると感じた。

汐里は、なかなか心を開かない倫太郎を気遣う。
そして、グイグイと捜査に引っ張り込む。

記者の周囲を探っている内に、ある人気女優の
スキャンダルを追っていたことが判明する。
そして、女優が所属する芸能事務所では最近に
なってその女優のマネージャーが辞めたことが
わかった。
だが、そのマネージャーも自殺死体で発見される!

事件性ありと見た汐里たちは、本格的に捜査を
開始。やがて一つの集落を消滅させた凄惨な
大火事にたどり着く。

都会で起きた二つの変死事件、
かたや、奈良の限界集落で起きた自殺事件。
そして過去に起きた凄惨な火災事件。
三つの事件が繋がった時、あまりにも哀しい
真実が浮かび上がる・・・。

捜査の過程で発覚した、大火災事件。
加害者家族が背負ったあまりにも過酷な運命。
どこに行こうと必ず暴かれる。逃げ場はない。

また、不可解な行動を続ける新人刑事・真弓倫太郎。
一体彼はどんな秘密を抱えているのか?
倫太郎が語った「僕は刑事になってはいけない」
という言葉の意味は?

婚約者を殺され心に深い傷を持つ、汐里。
今だ癒えぬ哀しみと苦しみを抱えつつ、
仕事を続けている。それを周囲に悟られぬように
男っぽく振る舞うが、本当は優しさに満ちている。

そんな汐里に好意らしきものを抱く倫太郎だったが…。

ブラッド・ロンダリング──
過去を消し去り、自らの出自を新しく作りかえる血の洗浄。
そこまでしなければならないほど、この国の
加害者家族は生きられないのか?
本人には何の罪もないのに!?
その怒りが、痛みが、叫びが心にガツンと響く。

歪み切った正義に支配された今の日本。
それが、どれだけの人を傷つけているのだろうか?
そんな中でも、傷ついた人の心に寄り添う
優しさが随所に描かれている。

ラストに汐里たちの上司・柿内が、悩む倫太郎に
かけた言葉にしびれた!!
この物語の終わりにふさわしい思った。

『ブラッド・ロンダリング 警視庁捜査一課殺人犯捜査二係』
著者:吉川英梨
出版社:河出書房新社
価格:¥1,600(税別)

緊迫感あふれる追走劇!「ダークナンバー」

クールすぎる、警視庁刑事部分析捜査係の女刑事と
野心家で超上昇志向・TV局の女性記者が
タッグを組んで、連続放火犯を追う。
緊迫度MAXの本格警察小説。

警視庁刑事部分析捜査三係の渡瀬敦子は、
プロファイリングで捜査本部のサポート
を行う。

現場の刑事たちからは、「プロファイリング」
は全くあてにされていないが、渡瀬は絶対に
引かない強さを持っている。

そんな渡瀬は、東京小金井市~小平市~
西東京市で起きている連続放火事件を追っていた。
監視カメラとプロファイリングで事件の
発生予測地点を示すが、外れるばかりで
捜査本部からの反発が強くなっていた。

一方、ある事件報道のミスで閑職へ飛ばされた
東都放送報道局の土方玲衣は、記者復帰を狙い
中学の同級生だった、渡瀬に接触する。

難事件に挑む女性捜査官―。視聴者の注目を
集める内容を看板番組「ニュース・Ⅹ」で
取り上げることを思いついたのだ。
渡瀬には土方にNOと言えない弱みがあった。

土方は渡瀬の番組をより盛り上げるため、
連続放火事件と同じころ埼玉県で発生していた、
連続路上強盗致死傷事件を調べていた。

やがて、土方は二つの凶悪事件がある線で
繋がっているのではないかと気づく。
二人は情報共有し、この事件の背後にある
驚くべき事件の真相にたどり着く・・・。

そして、衆議院選挙の開票日、土方は
前代未聞の事件中継を画策する!!

複雑にからむ二つの事件。
次第に明らかになる犯人像。
犯人の目的は一体何なのか?

さらに、クライマックスの犯人追走劇は、
土方、渡瀬、犯人と3人の視点で描かれ、
それぞれの思惑が交差し、緊迫感が半端ない。
土方と渡瀬の執念は犯人確保につながるのか!?

警察捜査の過程の面白さ、意外な犯人像と
事件の真相に驚愕しつつ、
渡瀬と土方、二人の女性の仕事に対する
強い思いが心に突き刺さった作品。

『ダークナンバー』
著者:長沢樹
出版社:早川書房
価格:¥960(税別)

昭和・平成の豪華作家陣が描く警察小説アンソロジー『葛藤する刑事たち』

警察小説の黎明期から覚醒期まで
3期に分け、その時代の警察小説
作家による傑作短編を集めた。
警察小説がどのようにの進化して
きたのかが読めます!

第一期(黎明期) 
松本清張『声』
新聞社の女性電話交換手は、深夜に繋いだ
電話先から不審な男性の声を聞いた。
耳朶に残る、不審な男の声・・・。

藤原審爾『放火』
ある社長の建築中の家が放火された。
若い巡査は初めての放火事件で張り切るが、
聞き込みをしてゆくと意外な事実が浮かび
上がる。

結城昌治『夜が崩れた』
暴力団と関わりのあった兄を持つ
刑事の婚約者。その兄が強盗殺人
事件を起こした。刑事は単独で事件を
追うが・・・。

黎明期の警察小説の面白さは、刑事たちが
徹底して現場にこだわる捜査。チーム力で
捜査を行う警察小説の醍醐味を味わえる。
特に松本清張の「声」は、印象に残る
ストーリー展開。
また、小説に登場する事件も現在に
通じるところがあり、今読んでも新鮮に感じる。

第二期(発展期)
大沢在昌『老獣』
新任の警官が老婆の許を訪ねる。
彼はこの街を守れるか・・・?
不思議な世界観が印象に残った。

逢坂剛『黒い矢』
女性が夜帰宅途中、ボーガンの矢が刺さるという
事件が発生した。御茶ノ水署の斉木と
梢田は捜査に駆り出される。
犯人はすれ違った暴走族のはずだったが・・・
人気の御茶ノ水署シリーズ。

今野敏『薔薇の色』
ジャズバーの一輪挿しに活けてある薔薇の花。
いつもは赤いバラだが、時々、違う色の薔薇が
ある。その意味は?交機隊の速水が出した
問いに、安積班の須田と村雨が推理を展開する。
果たして安積班長はどう答える・・・?
安積の推理に誰もがうなる。
大好きな短編。東京湾臨海署安積班シリーズ。

発展期は、それぞれ警察小説にシリーズ化が
生まれ、そのキャラクターたちの魅力と、
事件要素、そして推理、リアルな警察捜査の
過程が描かれて面白さが増した。

第三期(覚醒期)
横山秀夫『共犯者』
銀行強盗の通報訓練のはずが、実際に
銀行強盗が起こってしまった!
「顔FACE」の平野瑞樹巡査が主人公。

月村了衛『焼相』
対テロ用に開発された歩行型軍用有人兵器を
着用した極悪犯が、児童を人質に立て籠もり
事件を起こした!
SITとSAT、攻防の行方は・・・!
近未来警察小説、「機龍警察」シリーズの短編。

誉田哲也『手紙』
女性会社員が殺害された。姫川玲子は
その捜査本部で女性警官とパートナー
を組む。姫川はこの頃から上昇志向が
強く、コンビを組んだ女性警官を出し抜いて
真相を暴くことに成功する。
女刑事・姫川玲子の若かりし頃のエピソードだ。

この頃は、多くの女性刑事が登場する。
男性社会の警察組織の中でいかに生き抜くか?
平野瑞樹のようなタイプや、姫川の
ようにタフに生き抜く強さが描かれる作品もある。
また、複雑な警察組織内部に焦点をあてた
作品が多く生まれた。「機龍警察」は特に
特捜部と刑事部との軋轢が非常にリアルに
描かれ、さらに近未来のSF的な面が見事に
融合した傑作だと感じる。

思う存分警察小説が堪能できる短編集だ!

『葛藤する刑事たち 警察小説アンソロジー』
著者:村上貴史編集
出版社:朝日新聞出版
価格:¥800(税別)

女刑事・原麻希再登場!「警視庁捜査一課八係 警部補・原麻希レッド・イカロス」

捜査一課八係・八班に異動となった
原麻希の新たな活躍を描く!

「女性犯罪」捜査班にいた原麻希は、捜査一課
八係に異動となった。
係長は麻希の元恋人だった広田達也だ。
さらに、以前「女性犯罪」捜査班で一緒だった、
鍋島も一緒だ。

そこへ平成生まれの手塚大翔巡査部長が配属されてきた。
何かあればすぐにスマホで調べ始める手塚を見て、
広田は渋い顔をする。「スマホ刑事」などと揶揄
する始末。

だが、広田の刑事としての矜持を見た手塚は、
スマホで調べるのも大事だが、刑事は足を
使って捜査をするという広田の言葉で一歩踏み出す。

気弱だった手塚は、広田の言葉で徐々に刑事として
目覚めてゆく。

そんな経緯の中、ある住宅街で年配者の不自然な
連続孤独死が発覚する。
事件性があると判断した麻希は、八係のメンバーで
捜査を開始。

そこで、連続孤独死の一人の女性の遺品から
ノートが発見される。そこには「米村さん
ごめんなさい」と綴られていた。

捜査が進むにつれ、連続孤独死事件の裏に、
過去に日本中を震撼させた悪質な詐欺事件が
関わっていたことが判明する。

麻希たちの捜査、手塚が必死で集めた情報、
誰も期待してなかった鍋島の意外な活躍で
事件の全貌が明らかになるかと思えたが….。

それは予想だにしない巨悪と繋がっていた!

この作品、いつもと感じが違う思ったら、
原麻希の猪突猛進の捜査シーンよりも、
手塚の活躍に焦点を充てている感じ。
手塚の成長も描かれて新鮮だ。

八係の捜査は、誰もが違う方向から調べて
いたのに、最後にピタッとはまって思わず
凄い!!と叫んでしまった。

警視庁捜査一課八係シリーズ、最高に面白いです!

『警視庁捜査一課八係 警部補・原麻希 レッドイカロス』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社
価格:¥640(税別)

最強の女スパイ登場!『十三階の女』

「女性秘匿捜査官・原麻希」
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」など
多くの警察小説のシリーズを描きつづける吉川英梨さん。

どのシリーズもめちゃめちゃ面白く、弱そうに見える
けど、覚悟を決めたらやたらに強くなる女性たちが
とても魅力的で大好きだ。

『十三階の女』は今までの女性刑事とは全く違う。
公安の女性刑事が主人公。

警視庁の公安秘密組織に属する、公安の中でも
エリート中のエリートが集められた精鋭部隊、
組織は警視庁の「十三階」に存在する。

国家をテロリストや異分子から守るため、
時に非合法で非情な手段に出る。
盗聴・盗撮・身分偽装など何でもやる。

その十三階で最強と言われる女性刑事・黒江律子は
新人でありながら、突出した仕事ぶりで
上司の信頼も厚かったが、テロリスト
「名もなき戦士団」から情報を得るため、
ハニートラップを仕掛けたものの失敗!
北陸新幹線を爆破されてしまう。
己の未熟さを痛感した律子は、仕事から離れる。

だが、「十三階」は律子を見捨ててはいなかった。

「名もなき戦士団」を壊滅させるため、新たな
ターゲットを絞り、律子は再びハニートラップで
男を惹きつける。彼の心を自分に向けるため、
様々な情報を引き出し、取引に使う。
次第に男にのめり込んでゆく律子。
男を本当に愛してしまったのかだろうか?
任務に没頭するあまり、壊れてゆく律子・・・。

律子の行動は、どこまでが演技でどこまでが本気なのか?
嘘と真実の狭間で主人公自身が激しく揺れ動いている。
そして、読んでいる方も翻弄される。

愛したかもしれない男との壮絶な騙し合いで疲れ果てる
律子。弱く脆い、そんな風に思えたがクライマックスで
彼女の強さが爆発する!

今までのシリーズで登場した女性刑事と一線を画す。
職務に対する凄まじいまでの熱量が、律子の魅力。

この作品で新たな女性刑事像が確率されたようだ。
めちゃめちゃ面白かった。
次回作が待ち遠しい~。

『十三階の女 警視庁公安部特別諜報員・黒江律子』
著者:吉川英梨
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥713(税別)