人気シリーズ「行動心理捜査官・楯岡絵麻」の最新刊「ホワイ・ダニット」

佐藤青南さんの人気シリーズ
「行動心理捜査官・楯岡絵麻」の最新作・
「ホワイ・ダニット」(宝島社)読了。

ドラマ化もされ、読んでいると楯岡の
イメージは、主演女優さんに重なって
しまう。

同棲中のカップルが自分たちの日常を
動画配信する「カップルチャンネル」で
人気のある「はるみきチャンネル」。
男性が一人だけで配信し始めた。
ところがその生配信中、何者かが侵入し、
男性を襲った。
視聴者は、「ドッキリ」を疑ったが、
男性は本当に殺されていたのだ。
犯人は早々に逮捕されたが、警察が納得
できる動機を語ることはなく、なぜか
警察をバカにしたような態度をとった。
そこで、行動心捜査官の楯岡が呼ばれる・・・。
【殺人動画にいいねとチャンネル登録お願いします】

ホストクラブ「アレキサンドライト」で働く
山名が遺体で発見された。
警察が捜査を進めると、山名は店のカリスマホスト・
銀河から日々説教を喰らっていたらしい。
山名が殺された日は、店のホスト仲間15人ほどで、
飲み会をやっていた。そこでも銀河は山名に
説教をしていたが、やがて二人の姿が見えなく
なり、銀河一人が店に戻ってきた。
その証言から、警察は銀河を引っ張ってきていた。
そして、取り調べに楯岡が呼ばれたのだ。
美人の警察官がやってきて気をよくした
銀河は、カリスマホストの実力を見せようと
楯岡に向かうが・・・・。
【指名料はおまえの命で】

天才子役・染井佳乃の母親、史子が自宅マンションの
バルコニーから転落死した。
不慮の事故で片づけられたが、楯岡が葬儀の場で
コメントをする夫に疑惑を抱き、それから五日後、
夫を調べるために、マンションを訪ねた。
楯岡が夫に質問するが、嘘を言っているのは
見え見えだった。
一旦、外に出てから、待機させていた捜査一課の
刑事とともに再度夫に事情聴取すると・・・。
【天才子役はミスキャスト】

楯岡絵麻をいたぶって弄ぶ、殺人鬼・楠木ゆりか。
十二人を殺害した犯人。死刑囚だが、
獄中結婚した夫・畑中を使って、殺人事件を
起こしたのか!?と詰め寄る楯岡の聴取を
のらりくらりとかわす。
殺されたのは、元教師で夜の街でたむろする
未成年を補導する活動で有名になった男。
彼のキャッシュカードを使って金を引き出した
男が逮捕された。楯岡たちは、事件のからくりを
暴くため、男を追及するが・・・。
【誰がために鐘は鳴る】

「ホワイ・ダニット」は、殺人の動機が
テーマになっている。
容疑者はなぜ動機を隠すのか?
彼らにはそれぞれ 事情がある。しかしそれは
身勝手な理由だ。それで人を殺していいはずはない。
容疑者がひた隠す、その動機に迫ってゆく過程は
ひねりが効いていてとても面白かった。
特に、楯岡が容疑者を安心させておいて、
次第に核心をついてゆき、真相を語らせる
シーンは爽快。
ただ、子どもが登場する物語は、少し切なくて
悲しかった。

事件解決後、楯岡の相棒・西野や
捜査一課の連中と打ち上げをやる
シーンはホッとする。

『ホワイ・ダニット 行動心理捜査官・楯岡絵麻』
著者:佐藤青南
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥780(¥709+税)

博士号を持つ異色のノンキャリ・沢村依理子刑事シリーズ第2弾「数学の女王」

第67回江戸川乱歩賞を受賞した伏尾美紀さんの
「北緯43度のコールドケース」(講談社)
第2弾「数学の女王」読了。

前作以上に面白かった。
沢村依理子刑事の凛としたかっこよさが際立つ。

博士号を持ちながら、30歳で北海道警察の
警察官となった沢村依理子は、その異色の
経歴ゆえ、道警では少し浮いた存在だ。

所轄の強行犯係から道警本部の警務部へ
異動になった依理子は、この人事に
疑問を持っていた。
それはある出来事により監察官室から
目をつけられているからだ。

そんな中、新設されたばかりの大学で、
爆破事件が発生した。
学長の「桐生真」宛の荷物を学長秘書の
女性が受け取り爆発。その女性と
近くにいた女子学生が犠牲になってしまった。

この事件を機に、警務部付きで捜査一課に
異動となった依理子。
ところが、爆破事件の捜査は一向に進展せず、
テロ事件ではないかとの疑いも出てきた。
そして、公安との駆け引きの中で捜査を進めることになった。

ある事情で、依理子は突然班長を任されることに!
異色の経歴、さらに新参者の女性刑事だ。
そんな彼女に対し、班員たちは心中複雑な思いだった。

しかし、依理子の真摯な捜査態度を見た
班員たちは次第に依理子に心を開き始める。
そして捜査が進むと、ある重要人物が浮上してくる。

爆破事件の犯人の目的は一体何なのか・・・・?

捜査は一点に絞られたが、依理子は違和感を感じる。
彼女の鋭い洞察力であることに気づくと
事件の真相は一転する。
さらにチーム内のスパイまで炙り出す。

大学研究室という閉じられた空間で根強く残る
アカハラ、性差による無言の圧力。
己の才能に溺れ視野狭窄に陥った天才の末路が
痛々しい。
それによって、依理子の過去の因縁も明らかになる。
現代の大学の闇にも迫った警察ミステリー。

様々な葛藤の中、男性優位の組織で性差を超え、
凛として自分の職務を全うする、
ヒロインの姿に清々しさを感じた。

『数学の女王』
著者:伏尾美紀
出版社:講談社
価格:¥1,925(本体¥1,750+税)

シリーズ完結編!『女副署長 祭礼』

松嶋智左さんの「女副署長」シリーズ完結編
「祭礼」を読了。
とても好きなシリーズなので、3巻で
完結なのはちょっと寂しい気がする・・・。

Y県初の女性副署長として勤務する田添杏美は、
県郊外の佐紋署からY県で最も繁華街にある
A級署の旭中央署に異動になって2年が経過していた。

旭中央署は、6年前に夏祭りで行方不明に
なった女児をいまだに発見できていないと
いう事案を抱えていた。

そんな中、新たな署長が赴任してきた。
30代の女性キャリア・俵貴美佳だ。
杏美はまず、6年前の女児行方不明事件の
事案について説明をした。
女児の両親は毎年チラシを配り情報を
集めていた。旭中央署もずっと一緒に
動いている。

貴美佳は、署長として様々な会合に
参加し、張り切っているようだった。

ところが杏美に監察から声がかかった。
署長に関する極秘の案件だった。

同じころ、二年前の強盗傷害事件の被疑者が
動き出す。そして被疑者の関係者が転落死!
事故ではなく事件の疑いが出てきた。
ところが、旭中央署捜査一課のメンバーが
次々と体調不良で倒れてしまう。

それに伴い、県警本部捜査一課三係の
剛腕・花野警部が助っ人にやってくる。
強盗傷害事件について、意外な方向へと
展開してゆく。

6年前女児が行方不明になった夏祭りの日、
杏美は単独である人物を追った。

旭中央署が抱える3つの事案。
6年前の女児行方不明事件、強盗傷害事件関係者の
不審死、そして署長にからむ不祥事。
一つ一つの事件が非常に丁寧に描かれ、見事に
交錯し、捜査小説としての面白さは群を抜いている。

心の準備ができないまま読んだまさかの結末!
衝撃が強すぎて言葉が出なかった・・・。

『女副署長 祭礼』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥693(本体\630+税)

元女性警察官の執念!「三星京香、警察辞めました」

「女副署長」シリーズの著者・松嶋智佐さんの
「三星京香、警察辞めました」(ハルキ文庫)読了。
著者の松嶋智佐さんは、元警察官で白バイ隊員だった
経験を活かし、警察小説を描く。
警察内部の描写はリアルで読み応えがあります。

県警本部刑事部捜査一課の三星京香は
後輩の女性刑事が警察内部でパワハラを
受けていることに気づく。
その張本人は、なんと刑事部長だった。
後輩の弱みに付け込み、パワハラを
行っている現場に踏み込んだ京香は
刑事部長に拳を振り上げ、怪我を負わせて
しまう。
そして、十年勤め上げた警察人生に終止符を打った。

その後、幼馴染の弁護士・藤原岳人を頼り、
彼が勤めている県内有数の弁護士事務所で
調査員として働くことになった。
離婚した夫から娘の親権を得ようと、京香は
岳人に間に入ってもらっていた。

岳人が抱えている案件は、奇妙な事件だった。
被告人の男性が、たまたま通りかかった
被害者の男性にお金を貸して欲しいと迫り
拒絶され口論になり、近くにあった看板で
殴りつけ後頭部に怪我を負わせた事件だった。

被告人の情状酌量の証人として、親交のあった
女性に法廷で証言して欲しいということで、
打ち合わせをする予定だったが、その女性の
行方がわからなくなってしまったのだ。

京香は、その女性の行方を捜すことに。
相棒は警察嫌い、パラリーガルの女性だった。

元警察官だった京香は足を使って調査する
ことに慣れている。
女性を探す過程で、この事件の胡散臭さが
際立ってきた。

女性を見つけ、3人で戻ってくる。
岳人に連絡するが、既読にならない。
娘を岳人に預かってもらっていたため、
京香はまず岳人の家に向かった。
ところがそこで、岳人の遺体を発見する!
娘は別の場所で静かに寝息を立てていた。
京香は安堵と恐怖と凄まじい怒りを感じた。
岳人を殺したのは誰なのか・・・?

この胡散臭い事件は、複雑な人間関係が
絡み合い、とんでもない真相に繋がってゆく。
そして、同時に岳人は誰に殺されたのか?
という謎を追ってゆくことになる。

三星京香の、元警察官としての矜持が
幼馴染の死の真相を暴く!

警察の事件捜査の描写が圧倒的にリアル!
さらに殺人事件の謎解きは、犯人当ての
本格的展開。
警察小説としても、本格ミステリー小説としても
楽しめる、傑作警察小説!
どうか、シリーズ化して欲しい。

『三星京香、警察辞めました』
著者:松嶋智佐
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥770(本体\700+税)

シリーズ第2作目、衝撃展開!「悪魔を殺した男」

特殊犯罪対策室で、猟奇殺人事件を
捜査する、天海&阿久津コンビが再び登場!

アメリカで犯罪心理学を学び、
犯罪心理のスペシャリストとして、
警視庁に新たに設立された
特殊犯罪捜査室に呼ばれた、
天海志津香警部補。
相棒は、捜査一課のエースで、
検挙率NO1を誇る、阿久津誠。
彼には、物や人物に触れると
過去が見えるという特殊能力が
備わっていた。
その能力のおかげで、阿久津は
「予言者」と呼ばれていた。

前回の捜査で、数日間しかバディを
組まなかったにも関わらず、
天海と阿久津の間には「相棒」以上の
気持ちが芽生えていた。

天海は新たな事件を抱えていた。
若い女性が顔や頭皮の皮を剥がされて
殺されるという、あまりにも残酷な、
猟奇的皮剥ぎ連続殺人に遭遇。
難事件を予想した、天海は、
かつての相棒・阿久津に遺留品を
視てもらうことに・・・。

天海には、初めの事件の犯人の
目星はついていたが、阿久津の
特殊能力に頼った。
そして、天海は犯人をおびき寄せる
ために、独自に行動を起こす。

特殊犯罪捜査室・室長の大黒から
天海に新たなバディが紹介された。
警察内部監察室の永瀬という男だ。
彼は、警察学校時代阿久津と同期だった。
実は、永瀬は上司から阿久津に本当に
特殊能力があるのかどうか掴んで
来るように言われた、いわばスパイ
のような役割も担っていた。

天海と永瀬、二人で捜査を進めて
ゆくと、警察のさらなる暗部に直面する。

天海と阿久津にとって、誰が味方で
誰が敵なのか?
怪しすぎる人物が多く登場する。

変質者を装って、阿久津を罠にはめる者、
警察による恐ろしい企ての数々。
本当の悪魔は誰か!?
二転三転する展開、
巨悪との息詰まる攻防。

そして、超絶技巧のどんでん返しは圧巻!

『悪魔を殺した男』
著者:神永学
出版社:講談社(文庫)
価格:¥990(本体¥900+税)

県警のアマゾネス最大のピンチ!「越境刑事」

県警のアマゾネスの異名をとる、高頭冴子警部が
主人公の警察小説。「逃亡刑事」に続く、
「越境刑事」を読了。

今回、高頭警部は命の危機にさらされる。
そんな中でも、彼女の芯である、「正義」
を全うしようと命がけで闘う姿に心を打たれる。

千葉県警捜査一課で検挙率トップの班を
率い、アマゾネスと異名をとる、
強行犯係の係長の高頭冴子警部は、
正義感が強く、信念もって捜査にあたる
絶対的な上位下達で係をまとめる。
捜査能力にも長け、部下からの信頼も厚い。
身長180㎝、柔道・剣道いずれも強い
そんじょそこらの男どもなど朝飯前に片付ける!

そんな、高頭警部は、最近留学生の不審な
失踪が相次いでいるという噂を耳にする。
その真偽を確かめるために動き出した高頭班。

だが、その数日後、中国国籍で新疆ウイグル
自治区出身の留学生カーリの死体が発見された。
本格的に捜査に乗り出した冴子は、事件の裏に
ある国の捜査機関が絡んでいることを掴む。

そんな矢先、カーリの雇い主のカーディルも殺害された!
さらに、自分の身に危険を感じ、冴子に保護を求めていた
カーリの同僚女性・レイハンが何者かに連れ去られてしまう。
その容疑者を特定した高頭だったが、逃亡されてしまった。

レイハンを救い、事件の真相を暴くため、
冴子と部下の郡山は、中国への捜査を強行するが、
そこで合流した新聞記者とともに、襲撃を受け、
冴子は拉致されてしまう。
そこで冴子は、ウイグル民族が置かれた恐るべき
状況を目の当たりにする。

冴子のおかれた状況は想像を絶する!
日々、命の危険にさらされ高頭は死んでしまうので
ないかと、ハラハラさせられる。
こんな残酷なことがあっても良いのかと、
眼をそむけたくなる。

そんな中でも、絶対に「レイハンを救い出す」という
冴子の強い思いと優しさに泣ける。

著者が命の危険を顧みず、真っ向勝負に出た、
傑作、警察小説!

『越境刑事』
著者:中山七里
出版社:PHP研究所
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)

スリリング!脳科学捜査官VS連続爆弾魔!『脳科学捜査官 真田夏希』

鳴神響一さんの「脳科学捜査官 真田夏希」読了。

婚活を頑張っている一見普通の女性。
実は、心理学から人を分析する。その能力で
捜査に協力する女性刑事・真田夏希が主人公。
彼女のプロファイリングが犯人を炙り出す!

友人の紹介で出会った男性と
みなとみらい近くのレストランで
食事を楽しんでいた時、爆発事件が
起こった。

捜査のため、その場に臨場した刑事たちを
見てヤバイ!と思った真田夏希。
しかし、相手の男性に刑事だとバレてしまった。

神奈川県警初の心理特別捜査官として
採用された真田夏希は、連続爆破事件の
捜査に駆り出された。

SNSを使い爆破予告を繰り返す犯人に
翻弄される警察。
そんな警察をあざ笑う爆弾魔。
警察の無能ぶりはSNSを通じて拡散されてゆく。

夏希が分析した犯人像や捜査方針への
提案は、犯罪の助長となるとお偉方から
バッサリ切り捨てられた。
どうすれば・・・。と悩む夏希を救ったのは
なんと・・・・!?

犯人は、ARのようなキャッチャーゲームや
ネットゲーム、SNSなどを駆使し犯罪を
繰り返す。
そんな犯人に夏希は果敢に挑んでゆく。
そして、犯人の暴走を止めるため、心の闇に
迫り、寄り添おうと試みるが・・・。

SNSを使った犯人とのやりとりや、
犯人の計画に踊らされる警察の様子など
リアルな描写が興味深い!

ヒロイン・夏希だけでなく、脇を
固めるキャラも面白い!
鑑識の小川、警察犬・アリシア、
夏希をバックアップした曲者などなど
今後の展開にどう絡んでくるのか?

シリーズ2巻「イノセント・ブルー」に続く!

『脳科学捜査官 真田夏希』
著者:鳴神響一
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥748(本体¥680+税)

最強の女スパイ小説第4弾!『十三階の母』

吉川英梨さんの人気シリーズ、
最強の女スパイ・黒江律子が主人公の
「十三階」シリーズの最新作
「十三階の母」を読みました。

黒江律子は、公安の中でもエリート中のエリートが
集められた精鋭部隊、組織は警視庁の「十三階」に
属し、国家をテロリストや異分子から守るため、
時に非合法で非情な手段に出る。
盗聴・盗撮・身分偽装など何でもやる。

前作「十三階の血」で衝撃のスパイ夫婦となった
黒江律子と上司の古池慎一。
しかし、天方首相の娘・天方美月に狙われ
アメリカに逃亡し、息子と3人で束の間の
平和を味わっていた。
しかし、アメリカ滞在中、黒江は何者かに
つきまとわれる。

同じ頃、十三階のトップのもとに黒江の名を
騙った時限爆弾が届き、事態は一変!!

急遽日本へ帰国した黒江と古池。
彼らの子供は信頼する協力者に預けられた。

息子との別離で心を痛める黒江は、
自らの後継者を育てあげることで
バランスを保とうとした。
だが、古池から紹介された女性警官・
鵜飼真奈は、なんと黒江が失敗した
新幹線テロの犠牲者だったのだ。

黒江は鵜飼にテロ失敗は自分に責任が
あったと正直に告白。
彼女に罵倒されたが、その後は黒江を
受け入れ黒江の後を引き継ぐ覚悟を
決める。

「イレブン・サインズ」による
新たな新幹線テロの情報を得た十三階は
鵜飼真奈を投入した。
しかし、鵜飼の必死の捜索にも関わらず
確たる証拠が掴めず、鵜飼のミッションは
終了する。

十三階爆破未遂、怪しいテロ情報など、
十三階はこれまでにないほど不確かな
情報に振り回される。

それは「何者かの意図」によるもの
ではないか・・・?
十三階を潰そうとする黒幕とは?
壮大な「悪意」が十三階に牙をむく!

それを迎え撃つ古池。そして、黒江の母
としての覚悟が、彼女をさらに強くしてゆく。
緊迫のスパイサスペンスシリーズは
新たな局面を迎えた!?

夫婦となった古池と黒江。息子と引き離された
悲しみが黒江の心を押しつぶそうとする。
そんな黒江を深い愛情で支える古池の姿が
ひと際心に刺さった。

次回作が楽しみで仕方ない。

『十三階の母 警視庁公安部特別諜報員・黒江律子』
著者:吉川英梨
出版社:双葉社
価格:¥1,540(¥1,400+税)

正義の心が熱い!「女副署長 緊急配備」

松嶋智左さんの「女副署長」に続くシリーズ
第2弾「女副署長緊急配備」を読みました。

警察官としての矜持がどんな些細な罪も
見逃がさない。

県警初の女性副署長として、日見坂署に
赴任した田添杏美。
台風襲来の日、県警を揺るがす大事件が
勃発!杏美の機転で事件は解決。しかし、
不祥事の責任を問われ、日見坂署よりも
さらに規模の小さな、県郊外の佐紋署に
左遷された。

ところが、杏美の赴任直前、署長が
急病で緊急入院。署長代理も任されて
しまう。
そこは、ほとんど重大事件の起きない
のんびりした田舎の署だが、その分
地元の有力者たちとの距離が近く、
杏美は赴任早々憂鬱な気分になる。

しかし、それどころではない事件
が次々と起こる。
バイクによるひったくり事件が発生し、
緊急配備が発せられた。
そんな折、なんと18年ぶりに管内で
殺人事件が発生する。
さらに、ほぼ同時刻、海岸で警備課所属の
若手巡査が意識不明の重体で発見された。

いくつもの事件が同時並行で起き、
殺人事件は県警捜査一課が出張って
くる。杏美のライバルである、花野警部
の登場に心がざわつく杏美。

また、杏美と三十年来の因縁がある
巡査部長の動きも不穏な空気を醸し出す。

杏美の温かな声掛けで、シングルマザーの
女性巡査や、父親の介護に悩む総務課
巡査が、地道に捜査を続け、それぞれの
事件はやがて一つに繋がってゆく。

今まで表立って捜査をすることがなかった
若手警官や、女性警官が杏美の下で
自らの職務に目覚め、新たな目標に
進もうとする姿に胸が熱くなった。

女副署長・田添杏美の活躍に益々期待大!

『女副署長 緊急配備』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥737(¥670+税)

この世に未練を残した霊の心を癒す「霊視刑事 夕雨子2」

青柳碧人さんの「霊視刑事 夕雨子1」
があまりにも良かったので、第2弾
「霊視刑事 夕雨子2 雨空の鎮魂歌」を
読みました。

事件や事故に巻き込まれ、この世に心が
残ってしまい、成仏できない人たちの霊を
癒す物語。

中野署の刑事、大崎夕雨子は、小さいころから
この世に未練を残す霊と会話が出来るという
特別な能力があったが、祖母からもらった
色あせたストールを巻いている時だけは
霊の気配は感じられないでいた。

刑事課に配属された夕雨子の相棒は、
本庁の捜査一課から異動になった、
辣腕女性刑事・野島友梨香。

日本語学校の校長が殺害された現場で、
死んだ校長本人から犯人の名前を
聞いた夕雨子。しかし、別の霊が
それを否定する!
「アリガトウという言葉」

自己肯定感の低い漫画家が事故死した。
その現場で本人から事情を聞いた
夕雨子。両親との確執、売れない
漫画。自分なんて・・・・
そんな彼女の心を救おうと必死に
彼女の願いを果たそうとする。
「涙目のさよなリーヌ」

ある日、署長から呼ばれた夕雨子と
野島。必ずエレベーターを使って
署長室へ来いと、妙な注文をつけられる。
そしてエレベーターに乗ったとたん
男の霊が二人の前に現れる。
そして、「俺の名前を思い出せ」
思い出さなければ、ずっと閉じ込める
と脅される。この男、一体誰?
「俺の名は。」

上司から、女性が行方不明になった
と知らされる。その女性は野島が左遷
されるきっかけとなった因縁の事件の
関係者だった。上司から二人はこの
事件に首を突っ込むなと釘をさされるが。
「ハチミツの雨は流してくれない」

「俺の名は。」での野島の手柄話が
ユーモアたっぷりに描かれていて面白い。
最終話の「ハチミツ~」は、絡みに絡んだ
事件の真相を、野島が解きほぐしてゆく。
その真相があまりにも残酷。
野島の相棒の死の真相も明らかになる。

予想だにしない犯人像、衝撃的結末。
心優しい霊たちに助けられる二人。
癒し、そして癒される。
このシリーズが大好きだ。

また、夕雨子は幼い頃行方不明になった
親友・公佳を探し出すまであきらめない。

夕雨子の霊視と野島の行動力と鋭い
推理力で難事件に挑むシリーズ第2弾
とても面白かった。

『霊視刑事 夕雨子2 雨空の鎮魂歌』
著者:青柳碧人
出版社:講談社(文庫)
価格:¥748(¥680+税)