最強の女刑事・淵神律子シリーズ第2弾『スカーフェイスⅡデッドリミット』

「SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室」、
「生活安全課0係」シリーズなど、今人気の
警察小説を描き続ける、富樫倫太郎さんの
異色の警察小説、「スカーフェイス」。

前作が非常に面白かったので、シリーズに
ならないかなと思っていたら、第2弾が発売されました。

律子の荒っぽさは変わらず、警視庁内部でも
敵が多い淵神律子。

しかし、特別捜査第三係のメンバーは、淵神の
優秀さを知っている。

ある時、一人の男が人体の一部とパソコン持って
警視庁に出頭してきた。
それらを詰めたバッグの中から一枚のメッセージが
出てきた。そこには「淵神律子以外のものはさわるな」
と書いてあった。

淵神は、出頭してきた男に覚えがない・・・。
過去の事件が関わっているのか?

そしてパソコンの映像には、生き埋めにされた
若い女性の姿と48時間後には酸素が無くなるという
カウントダウン表示があった。
早急に動かなければ女性が死んでしまう!

淵神をメインとする捜査態勢に捜査一課の面々は
激昂するが、上からの指示で矛を収めざるを得ない。

重要データへのアクセス権をとりつけた、淵神は
特別捜査第三係の円・藤平とともに捜査を開始。
やがて、被害者二人の身元が判明する。

被害者はある「AV」で繋がったのだ・・・・。

律子はこの捜査に没頭する。しかしその裏では
もう一つの事件が進行していた。

警察小説としては非常に面白い。
だから、次々とページが進んでしまう・・・。

ちょっとしたはずみで底辺に落ちた女性たち。
小さな夢を持ちつつ、それを叶えようと必死な女性たち。
そんな彼女たちを言葉巧みに誘い、最悪の場所へと陥れる!
人の心を持たない、ケモノのような人間たちの
所業に淵神たち刑事は言葉もない・・・。

衝撃を通り越し、心に痛みが永遠に残る哀しいストーリーだ。

『スカーフェイスⅡ デッドリミット 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』
著者:富樫倫太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥780(税別)

驚異のデビュー作!探偵小説にニューヒロイン誕生「虚の聖域」

すごい新人さんが出ました!
元警察官の松嶋智左さんが描いた、
『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』は
第10回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作です。

ある事件を起こし、警察を辞めた梓凪子は、
小さな探偵事務所の調査員になっていた。

そんな凪子の元へ調査の依頼が舞い込んだ。
それは、姉・未央子からの依頼だった。
女手一つで育てた息子・輝也がビルの屋上から転落して
亡くなった。その事件を調べて欲しいと言うのだ。
犬猿の仲の姉・未央子の依頼は断りたかったが、
凪子にとっては、たった一人の「甥」のこと。
仕方なく調査を始めるのだった。

警察では自殺と判断されていた。
しかし、学校でイジメがあったかも知れないと
判断した凪子。学校で調査をするが、教師らは酷く冷淡だった。

そんなある日、凪子は凶器をもった男たちに襲撃される。
ただのいじめによる飛び降り自殺ではないと確信した凪子は、
事件の背後に隠された真相を暴く決意をする。

決して責任を認めない学校側、なにかを隠している姉。
なぜか不可解な行動を繰り返す輝也の同級生・・・。
事件を解く鍵は、彼らの「無言」の中にしっかりと
横たわっている。それをどう起こしてゆくのか?

ハードボイルドタッチで描かれているが、凪子の過去や背景が
しっかりと描き込まれていて、ただただかっこいい女性探偵もの
とは違うイメージ。そんな凪子にシンパシーを感じてしまった。

事件の背景は「中学生の死」。いじめがテーマなのかと思い
読み進めると、全く違う展開を見せる。
謎の提示とストーリー展開が非常に上手く、最後の最後まで
何が起こるかわからない!
ミステリー小説として充分堪能できた!

探偵小説にニューヒロイン誕生。
ぜひシリーズ化してほしいと思う。

『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』
著者:松嶋智左
出版社:講談社
価格:¥1,700(税別)

「アゲハ」の戦慄再び!『警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還』

女性刑事が主人公の大人気警察小説シリーズ
「女性秘匿捜査官 原麻希」。
その続編とも言うべき新たなシリーズ
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」。
こちらも非常に面白い!!!
すでに4冊が発売中で、最新作は「蝶の帰還」です。

捜査のためなら、猪突猛進!
天才的刑事の感とキレッキレッの洞察力で
事件の本質を見抜く原麻希。
旦那は元公安刑事、15歳も年上ですでに退職。
しかし、今作はこの旦那が現役の公安刑事として
活躍した暗い過去も登場。妻には言えない秘密が
あった。

警視庁捜査一課の広田は娘の授業参観のあと、
下北沢で女性遺体が見つかったと連絡が入る。
急遽現場に駆け付けた広田は、そこが以前、
原麻希とともに巻き込まれた殺人事件の
現場だと気づく。
妙な胸騒ぎを感じる広田・・・・。
すると今度は広田の娘が何者かに誘拐されてしまう!!

すべてが8年前の「アゲハ」事件と酷似していると
気づく・・・。
アゲハの再来なのか・・・?

警視庁は広田の娘を誘拐した犯人が「アゲハ」で、
秘かに日本にもどっていたアゲハが再び国外逃亡を
企てていると推察する。さらに「FBI」施設への
テロを計画しているという疑いも出てきたため、
公開捜査に踏み切った。

一方、広田と麻希は別ルートでアゲハの行方を
追っていた。そしてついにアゲハの元に
辿り着く!
だが、そこには想像を絶する展開が待っていた!

アゲハこと、戸倉加奈子が再び登場。
8年前に逮捕されたあと彼女がどうなったのか?
麻希の夫、原則夫はどう関わったのか?
彼らの秘密が暴かれる。

すさまじい疾走感で怒涛の展開を見せる。
アゲハと麻希の対決。
2転3転する事件の真相。
その面白さはクライマックスまで止まらない!

シリーズ最高傑作!

『警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 蝶の帰還 上下』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社(文庫)
価格:上下各¥590(税別)

猟奇殺人犯を追う超酒好き女刑事!?「スカーフェイス警視庁特別捜査第三係・淵神律子」

「SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室」、
「生活安全課0係」シリーズなど、今人気の
警察小説を描き続ける、富樫倫太郎さんの
異色の警察小説です。

連続猟奇殺人犯・ベガを追いつめた、淵神律子と先輩刑事。
だが、先輩刑事はベガに刺され大怪我を負ってしまう。
たった一人で犯人と対峙する淵神だったが、犯人の素早いナイフ
さばきで顔と腹に傷を負ってしまう。そのショックで拳銃を撃ち損じ、
あと一歩というところで取り逃がしてしまった。
大失態をしでかした淵神・・・。
ベガ逮捕に執念を燃やす、淵神は、その思いを忘れないように、
顔の傷はそのまま残した。

それから4年後、最強の女刑事に成長した淵神は、
次々と凶悪犯を逮捕してゆく。
だが、その荒っぽいやり方は、警視庁内部でも
問題視されるようになっていった。

淵神は、仕事のストレスを強い酒を飲むことで発散していた。
自分では認めていないが、アルコール中毒だった。
不遇な家庭環境の中で育ち、最愛の弟を亡くし、
心に深い傷を背負ったまま、刑事という職業を選ぶ。
まるで自分自身を痛めつけるような無謀な選択・・・?
だが、ルームメイトの看護師・景子の優しさが
淵神の唯一の癒しだった。
そして、景子にも誰にも言えない過去があり、
その重さに耐えきれずにいた。

物語は2部構成。「スカーフェイス」は、
淵神律子の刑事として能力の高さと強さが描かれる。
他の男性刑事に嫉妬されるほどだ。
だから、女刑事を認めない男性刑事からは憎まれる。
「警視庁特別捜査第三係」は、未解決の事件ファイルを
整理する閑職。そこへ左遷された淵神は、新たなスタッフとともに、
ベガの事件を追うことを決意する。

主人公・淵神律子のキャラクターが物凄くリアル。
男社会の中で、結果を出さなくてはならない女性の
苦悩や焦り、能力はあるのに認められない
という激しい憤りが手に取るようにわかり、
共感せずにはいられない!

そして、因縁の猟奇殺人犯・ベガの正体に迫ってゆく
展開がスリリングで面白い!

こちらもシリーズ化して欲しいほど、魅力的な主人公と
ストーリー。

『スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子』
著者:富樫倫太郎
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

警部補・原麻希の切ない過去が明らかになる。「警視庁‘女性犯’罪捜査班 警部補・原麻希 氷血」

女性刑事が主人公の大人気警察小説シリーズ「女性秘匿捜査官 原麻希」。
その続編とも言うべき新たなシリーズが始まっています。
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」です。
すでに3冊が発売中で、この「氷血」がシリーズ最新作です。

捜査のためなら、猪突猛進!
天才的刑事の感とキレッキレッの洞察力で事件の本質を見抜く原麻希。
旦那は元公安刑事、15歳も年上ですでに退職。最終階級は警視正。
優しく温かい目で麻希を見守る。
この夫婦には、夫の息子とその後に出来た中学生の娘がいる。

今回は、休暇で麻希の実家がある北海道へ家族3人でやってきた。
麻希の夫・則夫は結婚して十年以上も経過しているのに、いまだに
麻希の父親にきちんと挨拶をしておらず、今回はそれが目的だった。
3人は麻希の実家できちんと義理を果たすと、観光に出かけた。
その観光中に寄った札幌の公園で、氷漬けとなった女性の遺体を発見する。

その女性は、以前東京に住んでいた頃に「女性犯罪」」捜査班に
ストーカー被害の相談に訪れていたことが判明した。
麻希は捜査に加わることになる。
道警の生活安全部ストーカー対策室室長は、瀧正義警部だった。
麻希は、瀧を紹介されたときに衝撃を受ける!

瀧は全く覚えていないようだが、瀧は麻希にとっては恩人なのだ。
麻希が警察官になったのは瀧の影響だからだ。
麻希は高校生のとき、忙し過ぎる両親の代わりに3人の兄妹の
面倒をみてきた。良い子に成りすぎたのが高校生でブチギレ不良になってしまった。
その時、瀧正義巡査に出会う。瀧は生活安全課少年係で、荒れた子どもたちに
真正面から向き合う、頼もしい巡査だった。
麻希も瀧に叱られると素直に従った。

しかし、今の瀧正義は昔の面影は全くない。
明らかにおかしい。覚せい剤の常習者のような顔つきだった。
だが、道警の誰もが瀧を空気のように扱っていた。
アンタッチャブルな存在になっていたのだ。

道警は以前から、警官たちの汚職が取りざたされていた。
銃や覚せい剤の検挙率をあげるために、暴力団を使い外国から
密輸させ、それをいかにも押収しました体で実績に挙げると
いうことを組織ぐるみでやっていた。

麻希は、今回の被害者は瀧が殺したのではないかと疑うが・・・。
しかし、瀧は誰かに操られているようにも感じる。

麻希は瀧を助けようと、女性殺害事件の真相を徹底的に暴こうと決意する。
それがどんな結果になってもだ。
また、夫の則夫も道警の膿を出すために協力を要請される。

道警での麻希の孤独な闘い。
瀧と麻希の切ない過去。それらが交互に描かれる。
これまでのシリーズにはなかった展開に、ワクワクする。
事件解決までの怒涛のクライマックスは圧巻!!

『氷血 警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希』
著者:吉川英梨子
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)

最強の女性コンビ登場!「ガンルージュ」

「機龍警察」シリーズの月村了衛さんの描くアクション小説が、
とても面白く、読み終わった後の爽快感がたまらない。
特に昨年発売された、「槐-エンジュ」「影の中の影」の2作品が
そうだった。
何だか気持ちがざわついた時に、映画「ダイ・ハード」を視て
スッキリした気分になった・・!そんな読後感。

そしてこの「ガンルージュ」も上記の2作品に勝るとも劣らない面白さ!
特に主人公の女性二人の強烈なかっこよさに思わずニヤリとしてしまう!

ガンルージュ

ある田舎の中学校の体育教師・美晴は、およそ教師らしくない振る舞いで
PTAから目の敵にされていた。
しかし、男勝りでケンカにはめっぽう強い美晴は生徒から信頼されていた。
そんな美晴は、秋来祐太郎の母・律子がなんとなく気になっていた。
秋来律子は、そこらにいる普通の保護者たちとは異質の雰囲気を醸し出していた。
美晴は、動物的直感で秋来律子はただ者ではないと感じ取っていたのだ。

ある日曜日、律子は祐太郎と買い物に出掛ける約束をしていたが、祐太郎は
幼馴染の麻衣に呼び出され出掛けてしまう。だが約束の時間には戻ると言った。

祐太郎はいつも遊ぶ神社で麻衣と逢っていた。もう一人、友達が来るという。
だが、その友人から来れないとの連絡が入る。祐太郎は母と約束しているからと
帰ろうとしたとき、地元民が「別荘御殿」と呼んでいる方向から
何かが破裂したような音が聞こえてきた。
祐太郎と麻衣は、鉄砲の音ではないかと疑う。子どもっぽい好奇心から麻衣は
祐太郎が止めるのも聞かず、「別荘御殿」へと向かってしまう。
二人がそこで目撃したのは、スーツ姿の屈強な男たちの血まみれの死体だった!
彼らを襲撃した者たちは、貧相な老人を拉致し逃走しようとしていた。
祐太郎たちは、彼らに見つからないように逃げようとするが、
すぐに見つかってしまった!
そして、足を怪我して動けない老人を二人で抱えろと命じられ、
襲撃者たちに拉致されてしまう。

一方、約束の時間になっても戻ってこない祐太郎を心配した
律子は、祐太郎たちがよく遊んでいる神社に向かった。
その途中、美晴と出会う。いつになくあわてている律子をみた
美晴は律子と一緒に祐太郎を探すことに!
そして二人は「別荘御殿」の惨状を目撃!すべてを察した律子は
祐太郎たち救出に動く!

秋来律子は一体何者なのか?
拉致された男は?襲撃者の正体は?
そして、祐太郎たちは無事に生きてもどることが出来るのか?

そんなこと、ハッピーエンドに決まっているだろう!と突っ込みたく
なるけれど、わかっているけれど!読んでいくと主人公二人の過去や
律子の正体など次第に明らかになる下りは面白い!!
アクションシーンは映画のようだし、次はどうなる?どうなる?
祐太郎と麻衣は・・・?ワクワク、ドキドキの展開でページを捲る手が止まらないのだ!

何も考えず、ただめちゃめちゃ面白い小説が読みたい!
スカッとする小説が読みたい!人におススメ!
読み応えたっぷりのアクション警察小説であり、スパイ小説です。

『ガンルージュ』
著者:月村了衛
出版社:文藝春秋
価格:¥1,500(税別)

「女性犯罪捜査班」原麻希シリーズ最新刊「通報者」!

警視庁‘女性犯罪’捜査班警部補・原麻希シリーズ
第3弾「通報者」が出ました!!

このシリーズ、警察小説とミステリーが上手く融合!
さらに、原麻希刑事がとても魅力的で好き。

「通報者」は長編なのですが、1冊の本の中で前編と
後編に分かれていて、前編で起きた事件がさらに複雑怪奇な
様相を呈し、後編へと繋がってゆく・・・・。
ちょっと変わった設定で物凄く面白かったです。

通報者

前編【東中野母子営利誘拐事件並びに立川市残堀川女性全裸死体遺棄事件】
警視庁管内で、税理士の妻子が誘拐されたとの一報が入った。
ところが、被害者の夫は警察に連絡せず、身代金受け渡し間際になってから警察に通報!
警察は誘拐事件の準備もままならない内に行動を開始。

身代金取引現場に偶然居合わせた「女性犯罪班」の原麻希が
捜査に加わり身代金を持った夫を追跡するが、警察が
介入していることがばれ、取引は中止になってしまう。
そして、その誘拐事件は最悪の結果に!多摩川流域にて
女性と子どもの遺体が発見される!
さらに同じ多摩川流域で今度は全裸の女性遺体が発見された・・・。
そして事件はさらなる奇妙な方向へ・・・

後編【町田市雑木林女性連続殺人事件並びにヴィラ東中野3人殺し】
誘拐事件の全容も明らかにならないまま、今度は町田市の雑木林で
二人の女性の遺体が相次いで発見される。
そしてヴィラ中野で発見された3人の遺体・・・・。

全くバラバラに見えたそれぞれの事件が、意外な方向で繋がってゆく!
原麻希のひらめきはさらに磨きがかかり、推理を展開!

そして元恋人で公安刑事だった広田が警視になり捜査一課に異動。
この事件の管理官で登場している。
そのリーダーぶりもかっこいい。

警視庁「女性犯罪捜査班」警部補・原麻希シリーズ中一番面白い作品。

『警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希 通報者』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)

警察小説なのに、大人の超純愛小説でもある「ドンナビアンカ」が泣ける。

誉田哲也さんの新しい女性刑事シリーズ「ドルチェ」に
続く第2弾「ドンナビアンカ」の文庫版が発売!
早速読みました。

ドンナビアンカ

誉田哲也さんと言えば、「ストロベリーナイト」の女性刑事・姫川玲子が
人気でシリーズはベストセラーになっています。
はまさきも大好きで全作品読んでいます。
事件にくらいつくクールな姫川玲子が、いつもかっこいいと思っていますが
時々、とても痛いなと思ってしまいます。

そんな時、新たな作品で女性刑事が登場しました。
練馬署強行犯係・魚住久江です。
捜査一課にもいたことがありますが、今は所轄で頑張っているという設定。
年齢は姫川より上で43歳、独身。
既刊本「ドルチェ」は味のある短編集でしたが、
「ドンナビアンカ」は長編です。

虫けら同然の生き方をしてきたと絶望の底にあった
男がやっと見つけたまっとうな暮らし。
日々、酒の配送業務をまじめに続けていた男は、会社近くの
定食屋で、一人の女性と出会う。
女性は、男が酒の配送をしているバーのキャバクラ嬢で、何度か店で
顔を合わせていた。なんとなく気になったが、男は「どうぜ俺なんか」
という想いもあり、声をかけることはなかった。
だが、次第にその女性に心が傾いてゆくのがわかる・・・。
男は秘かに女性の後をつけ、マンションの住所もつきとめた。
ストーカーなのか・・?俺は。反省した男は、もしかしたら
会えるかもしれないという淡い想いを抱き、女性の行きつけの
定食屋に足を運んだ。その思いは実り、とうとう女性と言葉を
交わすところまでこぎつけた。
たどたどしい日本語で話す女性は、中国人なのだとわかった。
連絡先も交換しあい、二人は連絡を取り合う様になり、
時々、その定食屋で一緒に食事をした。
女性のかわいらしいしぐさと優しさに男はどんどん惹かれていった。
しかし、その女性は大手外食企業の役員の愛人だった・・・。
二人はそれをわかっていながら、秘かに逢引きを繰り返した。
ある日、男はその役員から呼び出しを受け、ある提案を持ちかけられる。

大手外食企業の役員が、連れの社員と共に誘拐されたとの連絡が
入り、練馬署強行犯係の魚住久江は、誘拐事案の特殊捜査班に呼ばれた。
そこには昔から懇意にしている、金本刑事がいた。
誘拐されたのは、大手外食企業・富山見フーズ専務・副島と
エリアマネージャーの村瀬という男だった。
身代金は2千万円。
魚住と金本は、まず二人の身辺調査を行うことに・・・。

警察小説でありながら、心が癒される大人のピュアな恋愛小説でもある。
男女二人の恋物語と殺伐とした誘拐事件捜査が交互に描かれている。
2つの物語はやがて誘拐事件へと繋がるが、男を心配する中国人女性の
描写が胸を打つ。心細くなっていた女性に、魚住が寄り添うシーンが泣ける。
魚住の刑事らしくない優しさがこのシリーズの最大の持ち味。
かっこいい女性刑事も良いが、事件を静かに見つめ、被害者にも
容疑者にも寄り添うことが出来る、魚住刑事の魅力にノックアウトさせられる。

警察小説なのに・・・なんでこんなに切なくなるのか・・・?
味わいのある警察小説。
女性におススメ!

『ドンナビアンカ』
著者:誉田哲也
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥670(税別)

警視庁「女性犯罪」捜査班警部補・原麻希第2弾が面白い!

女性秘匿捜査官・原麻希」シリーズに続き
「警視庁‘女性犯罪’捜査班 警部補・原麻希」シリーズの
第2弾「5グラムの殺意」も発売されました。

このシリーズは「女性犯罪」捜査班にスポットを
充てていて、原麻希始め、優秀な女性刑事が
登場します。

特に今回の「5グラムの殺意」では、女性犯罪捜査班の
メンバー全員の活躍が面白かったです!

原麻希5グラム

六本木の違法クラブで女子中学生が惨殺される事件が起きた!
警視庁女性犯罪捜査班は直ちに現場に直行した。
だが、肝心の原麻希は上司に無断で休暇をとり、全く連絡が
とれない。
そこで、班長の蔵本織江は、産休に入ったばかりの小暮圭子を
現場に復帰させる。妊娠八か月の圭子は、‘鬼の小暮’
と呼ばれるほどの名刑事だ。
地道に足で情報を拾う、根っからの現場主義者。
六本木の事件の捜査が進むうちに、たまがわ市に住む
二人の女子中学生が死亡していることが判明。
一人は転落死、一人は絞殺。事件の内容が異なったため
転落死は事故として処理されていた。
だが、女性犯罪捜査班の星野夢美が、原麻希の娘・菜月
を訪ねると、菜月の方からこの事件は連続殺人事件だと指摘する。
やがて、休暇が終わった原麻希が現場に復帰!
いよいよフル回転の捜査が始まった!

一方、小暮圭子は、六本木事件の捜査本部で一緒になった
捜査一課の若手刑事・鍋島と、あるママ友事件に関わっていた。
育児ノイローゼ傾向にある母親が、自分の息子を殺そうとしている
現場に偶然居合わせたのだ。
幸い子どもにけがはなく、母子ともども女性犯罪捜査班の
オフィスに呼び、母親に事情を聞いた。
息子を殺そうとしたことを覚えていないという。
小暮は何かあるのでは?とさらに聴取すると、育児の悩みを
抱える母親が集う「どんぐりの会」で、この母子は
様々な事件の犯人のされ、いじめにあっていたことが判明。
その事件の詳細を調べるために小暮たちは「どんぐりの会」の
主催者を訪ねる・・・・。

別々に進行する二つの事件。
数々の謎の提示、複雑にからみあう事件。
これらが一つに繋がった時、想像を絶する真相に突き当たる!
母と娘の確執!そしてあまりにも醜い身勝手な人間の本性!
女性犯罪捜査班の面々たちにしか解決できない事件・・・。

巻を重ねるごとに面白くさらに進化するシリーズ!
次も期待大!

『5グラムの殺意 警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希』
著者:吉川英梨
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥590(税別)

強烈なデビュー作二上剛氏「黒薔薇刑事課強行犯係 神木恭子」

講談社が主催の「第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト」受賞作
「黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子」。
著者の二上剛氏は、元・大阪府警暴力犯担当刑事という経歴。
退職後に本作品を描き上げた。
元刑事が描くリアリティあふれる警察小説だ!

黒薔薇

大阪府警の新人刑事、神木恭子は、ある会社の社長の刺殺事件の
捜査を担当していた。
神木が所属する強行犯係は、神木を含め6人の捜査員がいる。
神木は新人のため、主任の折原とコンビを組んでいた。
折原は、強面で女性刑事蔑視の傾向がある。
それゆえ、折原が大の苦手だった。
だが、係長の矢野が神木に期待していたため、何とか必死に
折原のセクハラまがい、パワハラまがいに耐えていた。
そんななか、この刺殺事件は決め手になる手掛かりが得られず
そろそろ3ヶ月が経過しようとしていた。
ある時、神木は酔っぱらった老人の「孫娘の行方が知れず、殺されてしまう」
という訴えを聞いた。酔っ払いなど放っておこうと考えたが、
クレームになるのは困ると思い、詳しい話を聞くこと、孫娘の
痕跡を調べてみようと考え、老人宅へ向かった。
そこで老人は、孫娘・リサとそのリサを連れ去った乾義男と
言う男について語った。その乾の話を聞いているうちに
神木は抱えている刺殺事件の手掛かりを得る。
神木の手柄で刺殺事件の解決を見る。
この働きで矢野係長、折原たちは、神木をようやく一人前の刑事として認める。
だが、事件が解決したのもつかの間、その老人宅の床下から
嬰児を含む死体七体が発見された!!
老人の供述から、次々と事件が白日の下の曝されることになるのだが・・・。
二つの事件の背後に蠢く闇・・・。それは府警上層部の内に宿る
強固で広大な闇だった。

体面重視の違法捜査、キャリアとノンキャリアの凄まじい暗闘。
そこに絡め取られてゆく神木恭子。
だが、父の死の真相を知った時、神木は復讐を決意する。

知られざる警察の暗部。
その具体的描写は現場を知る著者だから描ける!!
信頼していたものが、ガラガラと音をたてて崩れていくような感覚だ・・・・。
そんな汚泥で淀んだ警察で、神木はどう泳ぐのか?
神木の人間性の変化も怖い!

今までの警察小説とは一線を画す!
読み応え十分、さらに新人としては天晴!
ロマンノワールな警察小説。

『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』
著者:二上剛
出版社:講談社
価格:¥1,700(税別)