乱歩賞作家・鏑木蓮が描く、女性刑事が凄く魅力的!『時限』

『東京ダモイ』で、第52回江戸川乱歩賞を受賞した鏑木蓮さんが、女性刑事を主人公にした警察小説を描いています。
単行本『エクステンド』と言うタイトルだったが、文庫化にあたり『時限』と改題。
こっちのタイトルの方が警察小説っぽくていいかなと思ってしまいました。
枯山水の庭のある老舗呉服屋の別邸で、若い女性の首つり死体が発見された。京都五条署の刑事・片岡真子は、遺体の首に不可解な扼殺痕があると知り、捜査を開始する。
遺体の第一発見者は、その別邸の持ち主・向井。なぜ自分の家に見知らぬ女性の死体があったのか?向井にはアリバイがある。
女性の遺体には、首をつられていた帯紐の痕とほかに手形もついていた。
自殺にみせかけた他殺ならば、なぜわざわざ他人の家に?
犯人の意図がまったくわからない。
現場の遺留品と女性の過去から容疑者が絞られていく中、真子はある‘時限タイムリミット’に挑むことに!!
片岡真子は、京女で仕事のときも京言葉を話す。上司の高藤から注意されるがいっこうに直す気がない。真子の京言葉で殺気立った捜査本部もちょっと和らいだりする。
真子と上司の高藤警部との信頼関係がだんだんと深まっていくあたりも良い。
また、捜査がうまくゆかず落ち込むことがあるが、芯が強く、自分がこうだと思ったらやり遂げる強さがある。それゆえ、同僚の男性刑事からも一目置かれている。
遺体となって発見された女性は、父親から性的虐待を受けて育った。
自分の生きる意味を失い、リストカット繰り返していたが、‘「エクステンド」NPO法人いのちの電話’に連絡をとり、少しずつ生きる希望を見出していた・・・。
そんな女性が・・・・。胸を痛める真子。
この女性の無念を晴らすために真子は絶対に犯人をあげると心に誓う。
しかし事件の真相は意外なと方向へと進む。
その意外な方向というのが、ミステリーとして非常に面白く、伏線となっていた事件現場の遺体と遺留品が活きてくるのだ。
女性刑事の情熱が事件解決に導く!意外な真相、そしてたちはだかる時間の壁!クライマックスはハラハラものです。文句なく面白かったです!
『時限』
著者: 鏑木蓮
出版社:講談社
価格:¥648(税別)