アイスランド発傑作警察ミステリー第2弾『緑衣の女』

アイスランドのレイキャヴィクを舞台に描かれた警察小説。
ベテラン捜査官・エーレンデュルが主人公の『湿地』に続く
シリーズ第2弾『緑衣の女』。

CWAゴールドタガー賞・ガラスの鍵賞を受賞した北欧ミステリ傑作中の傑作です。

緑衣

アイスランドのレイキャヴィク警察のベテラン捜査官・エーレンデュルは
妻子を置いて家を出、一人アパート暮らしをする中年刑事だ。
前作「湿地」ではずっと会わなかった娘、エヴァ=リンドと再会し
娘からひどく憎まれていることを思い知らされる。
しかし、エーレンデュルはそれを当然と受け止め、それでも娘を
愛していることに気づき、自分を痛めつける娘の心配をしている。

そんなある日、墓地でないところから人間の骨が見つかったとの
連絡を受け、その現場に赴いた。
近所の男の子が石と間違え持ち帰っていたものだが、たまたま
その家に居た医学生が人間の骨だと気づき通報したのだった。

調べてみるとその骨は半世紀以上も前のものだとわかった。
そんな旧い骨を調べてどうするんだと、同僚のエリンボルクや
シグルデュル=オーリはあまり捜査に乗り気でない。
しかし、その現場の土の中から、突き出た手の骨が見つかり
エーレンデュルたちは本格的に捜査を開始することに。

発見現場近くには昔サマーハウスが建っており、英米の
軍のバラックなどもあったようだ。
捜査するうちに、かつて、サマーハウスの持ち主だった男の恋人が
失踪しそのまま行方不明になっていることがわかる。
エーレンデュルはその男が恋人を殺し埋めたのではないかと疑う。
また別の証言では、緑のコートの女が度々登場する。
事件の真相は一体何なのか?

物語は、エーレンデュルたちが、昔の骨から事件捜査をする過程と
ある女性のすさまじい結婚生活の状況が交互に描かれる。
この二つの物語はどう繋がっているのか?
骨と関係があるのか・・・?

エーレンデュルの娘、エヴァ=リンドからの「パパ、助けて」のSOS。
エーレンデュルは娘の危機を察知し探し出す。
妊娠していたエヴァ=リンドは流産し、命の危機にさらされる。
その娘を助けようと、意識不明の娘にひたすら話かけるエーレンデュル。

骨の捜査と、ある女性の物語と、エーレンデュルと娘の絆。
この3つの物語が一つに繋がった時、封印された真実が浮かび上がる。
だがそれはあまりにも悲惨で本当に切なく胸に迫る。

著者はなぜこうも切なく哀しい物語に仕立てるのか?
それは訳者が著者にインタビューしている。
そのインタビューの答えもまた興味深い。
本編を読み終わった後、ぜひ訳者あとがきも読んでほしい。
著者の家族や子ども女性に対する想いが痛いほど伝わってくる。
その思いをなぜミステリで描くのか?その答えもとても興味深い。

北欧ミステリの中で今はまさきが一番はまっているシリーズ。
ぜひぜひご一読を!

『緑衣の女』
著者:アーナルデュル・インドリダソン著/柳沢由実子訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税別)