奇妙な違和感の正体に驚愕!「悪いものが、きませんように」

危険なゲームでクラスメートを死に追いやった女子高生と
娘を亡くした父親のすさまじい復讐劇!を描いた「罪の余白」。
この作品でデビューした芦沢央さん。
壊れてゆく人間の心とエスカレートする悪意と保身
その描き方が尋常でなく、すごい作品だと思った。

「許されようとは思いません」は、人間の心の奥に潜む闇を描いた短編集。
「罪の余白」から繋がる、崩壊してゆく人間の心・・・・。
その心理描写の上手さは、「罪の余白」を凌ぐほどだ。
しかしこの作品で著者は化けた!
さらなる仕掛けと罠を施したのだ。
ミステリーの真骨頂!「どんでん返し」だ。
読者はいつ、どこで罠にはまったのかわからないまま読み進める!
そして不意打ちをくらったかのような衝撃を味わうことになる。
それは見事としか言いようが無い!!!

はまさき、「許されようとは思いません」で完全に芦沢央さんに
はまってしまったのだ。

今回紹介する「悪いものが、きませんように」は著者の2作目の作品。
読み進めると奇妙な違和感に翻弄されることになる!

不妊と夫の浮気に悩む紗英は、助産院に勤めている。
プライベートでも深い悩みを抱える紗英は、仕事でも
充分に満足できない自分に落ち込む日々。
そんな紗英を癒してくれるのは、小さい時からいつも
一緒にいてくれた奈津子だ。
幼い娘を育てる奈津子は、母との確執、夫とのすれ違い
社会にもなじめない自分自身に憤っていた。
そんな奈津子の心の支えは、紗英だった。
お互いの悩みや苦しみをすべて吐き出してしまえる
紗英と奈津子。濃厚ともいえる女同士の友情関係・・・。

そんなある日、紗英の夫の変死体が山中から発見された!!
捜査の結果、あっけなく犯人は逮捕される!
そしてこの事件をきっかけに、紗英と奈津子の関係性は大きく
変化してゆく・・・。

この作品の大きな山場は紗英の夫の殺人事件だ。
だが、物語の中盤で犯人は明らかになる。

ということは、殺人事件のからくりはそう重要ではないのか?

殺人事件の証言者として、紗英や奈津子の友人たちが登場する。
彼らの話を読み進むにつれ、違和感と謎は深まる。
そう、完全に読者は謎のるつぼにはまり、何度も後戻りしたくなるのだ。

こんな作品、読んだ事が無い。
一体何がどうなっている・・・?
この違和感、最後の最後まで続くことになる・・・・。

『悪いものが、来ませんように』
著者:芦沢央
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥660(¥600+税)