桶川ストーカー事件を追った!渾身のノンフィクション

先日、テレビを視ていたら
桶川のストーカー事件を取り上げていました。
再現ドラマは、清水潔氏のノンフィクション
「桶川ストーカー殺人事件 遺言」(新潮文庫)
に忠実に描いてありました。
当時女子大生が殺害されたあとの埼玉県警上尾署の
記者会見の様子がそのまま再現ドラマに挿入されて
おり、それを視て驚きました。
女子大生が刺殺されたのに、警察官がヘラヘラ
笑っている!?何これ!?と思い、
前に一度読んだのですが、再読しました。

桶川

清水潔「桶川ストーカー殺人事件 遺言」(新潮文庫)は、
普通の女子大生が、元彼から執拗な嫌がらせや脅迫を受け、
元彼の雇ったチンピラに桶川駅でナイフで刺され死亡した
事件の真相を暴いたノンフィクション。

殺された女子大生は親思いのお嬢さんで、元彼の執拗で暴力的な
ストーキングについての悩みをなかなか言い出せなかった。
しかし、元彼の脅迫が親にも及ぶかも・・という状態になって
やっと両親に相談する。
娘が殺されるかもしれないと危機感を感じた両親は、娘と一緒に
警察に相談に行ったが、その相談は警察内部でたらいまわしに
され、警察に嫌味を言われながら、被害届や、告訴状などの届け出を
出したにも関わらず、結局真剣に捜査されることはなく、
殺人事件は起こってしまった!という最悪の事件。

警察はそのことを隠すために、殺された女子大生を
風俗店に勤務していたブランド狂いと称し、週刊誌ほかマスコミは
こぞって女子大生をそのように報道した。

しかし、生前、女子大生から相談を受けていた友人たちが、清水潔氏に
連絡をとり、事件のあらましを話すと清水氏は独自で調査を開始。
清水氏はこの時、友人たちが語った驚愕のストーカーの実態に
心底恐ろしいと感じ、そんな男と一人で向かい合った女子大生を
想い、何とも言えない感情があふれてきたと書いている。
そして、何かに突き動かされるようにこの事件の真実を
暴く!ただその想いだけだったと・・・。
女子大生が遺した遺言というバトンを渡されたと・・・。

そして、清水氏の執念は、警察よりも先に、
女子大生殺害の実行犯をつきとめる。

だが、その件を警察に報告するがまったく動く気配がない。
しびれを切らした清水氏はこの顛末を「FOCUS」でスクープ、
さらにテレビでも取り上げてもらうと、警察の怠慢がクローズ
アップされる。この事件は国会でも注目され、ストーカー規制法
が制定されるきっかけとなった。

清水氏の「弱い人(被害者・被害者家族)たちの声を聞く。」
その強い思いはこの事件からやがて「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の
調査に繋がって行く。

「桶川ストーカー殺人事件」のあとがき、文庫化によせての
欄に、被害者のお父さんの文章が掲載されています。
大切な一人娘が殺人犯とマスコミによって何度も殺された・・・。
その無念の想いが、清水氏に乗り移って事件の真相が
暴かれた。信じていた警察に裏切られ、事件後の過程など
全く連絡されない心細さ。それを救ったのは清水潔氏だった。
この文章を読むと、涙がこみあげてくる。

『桶川ストーカー殺人事件 遺言』
著者:清水潔
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥630(税別)