気分爽快になれるミステリ!「バック・ステージ」

追いつめられ、やがて崩壊してゆく人間の心の過程を
リアルに描き出してきた、芦沢央さん。
「悪いものが、きませんように」「許されようとは思いません」などは
その代表作だと思う。

しかし今回描かれた「バック・ステージ」は、著者の新たな
魅力が引きだされた!!
シリアスな物語にコミカルなテイストをミックスした、
著者の真骨頂!

ある夜、新入社員の松尾は、先輩の康子がパワハラ上司の
不正の証拠を探している場面に遭遇してしまった!!
そして強引な康子に片棒を担がされることになり、
翌日、上司の不正を暴く証拠をまんまと手に入れる。
しかし、ひょんなことからその証拠を入れたバッグを
女子高生に持って行かれてしまう。
焦った二人が女子高生の後を追うと、中野の劇場に行きついた。
その劇場では、松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の
舞台が始まろうとしていた・・・・。

開演前の舞台の裏側で起きた小さな事件。
それを軸として関係者たちの人間ドラマが連作で描かれる。

息子を思う、離婚したばかりのシングルマザーの複雑な心理。
再会した大学生、男女二人のすれ違う心の揺らぎ。
脅迫状に怯える新人俳優の恐怖と焦燥感。
認知症の兆候が表れた大女優。その秘密を守ろうとする
マネージャーの心の葛藤・・・。

舞台の周辺で、4つの事件が同時多発的に起き、
勘違いとトラブルが次々と発生してゆく・・・。
その多彩なシチュエーションで描き分けられる人間心理。
その描き方の上手さに舌を巻く!

さらに、バラバラだった4つの事件は、松尾と康子の
コミカルな追跡劇によって繋がっていく・・・。
それらが見事に繋がったラストに、思わず唸る~。
読後は思い切り「気分爽快」になれるミステリーです。

本を買った人だけが「すぐに」「必ず」読めるお楽しみ掌編、特別収録です。
(詳しくは本作品カバー裏をご覧ください)

『バック・ステージ』
著者:芦沢央
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,500(税別)