天久鷹央シリーズ最新刊、2冊同時発売!「吸血鬼の原罪」&「推理カルテ完全版」

知念実希人さんの人気シリーズ
「天久鷹央の推理カルテ」が
2冊同時発売!
「吸血鬼の原罪」と「推理カルテ完全版」
(実業之日本社文庫)です。

「推理カルテ完全版」は、短編集。

小鳥遊が、天医会総合病院の
統括診断部に配属され、天才的な
頭脳を持つ女医・天久鷹央と出会う。
その才能と「超」変人ぶりをまざまざと
見せつけられ、日々彼女に振り回される。

しかし、鷹央はどんな優秀な医師でも
診断することが出来なかった、難解な
病気の診断を下し、数多の患者の
命を救ってきた。
そんな鷹央が、大ピンチに陥っている!
そして、統括診断部の存続も危うい!
一体、彼女は何をしたのか・・・?
なぜそんなことになったのか・・・?

謎に包まれた「病気」の原因を探ると
ともに、頑なな患者や家族を時に厳しい
態度で諭す。その光景は傍目には
厳しすぎるくらいに映るかもしれないが、
彼女の患者の命を救うという使命感と
医者としてのプライドがひしひしと
伝わってきて、読んでいて清々しい
気持ちになる。
天久鷹央という人となりが凄く
伝わってくる作品ばかりだ。

書下ろし長編「天久鷹央の事件カルテ 吸血鬼の原罪」

男性の変死体が発見される。
その死体は、体中の血液が抜き取られ
首元には二つの傷痕があった。
まるで、吸血鬼に血を吸われたような
不気味な死体に困惑した警察は、
天医会総合病院の天久鷹央を頼ることに・・・。
鷹央は初めは面倒くさそうにしていたが、
死体の詳細を聞くと、がぜん張り切りだした。
本当に吸血鬼がいるかもしれないと言い出し、
小鳥遊たちは調査に駆り出されることに。

不気味な男の目撃情報、途中まで本当に
吸血鬼がやったのでは?と思いながら
読んでいたが、やはり鷹央は天才だ。

ホラータッチで描かれた今作。
不気味なシーンが多数あり、ちょっと怖い。
そんなホラーを科学的に解明し事件の
全貌を暴いた天久鷹央の推理は圧巻!!
あっと言わせる真相は相変わらず凄い!

あっという間に読み切った2作品。
天久・小鳥遊・鴻ノ池のトリオはさらに
面白くパワフルに!

『天久鷹央の事件カルテ 吸血鬼の原罪』
『天久鷹央の推理カルテ 完全版』
著者:知念実希人
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:吸血鬼¥847(本体¥770+税)
   カルテ¥803(本体¥730+税)

シリーズ三作目はミステリー仕立て!? 「妖しい刀 出直し神社たね銭貸し」

櫻部由美子さんの「出直し神社たね銭貸し」の
シリーズ3作目「妖しい刀」(ハルキ文庫)を読了。

貧乏神に見込まれ、出直し神社でうしろ戸の
婆に仕えるおけい。今度はちょっと大変な
目にあっちゃう・・・!!

出直し神社に、袋物問屋・茜屋のお松が
物騒な願いを訴えた。
「一刻も早く相手の女を呪ってください」と。
婿に入った店主で夫の茂兵衛が、叔父から
相続した家に入り浸るようになり、女を
呼び入れているのではとお松が疑っているのだ。

さらにその家には大黒様のお化けが出るとの
噂が広がり、借り手がつかなくなっていた。

うしろ戸の婆は、お松に夫の浮気を
確かめるため、神社の手伝いをしている
おけいを連れて行くように言った。

そして、茂兵衛の手伝い人として、その家に
潜入したおけいは女の出入りを見張った。
しかし、何日過ぎても、女の出入りなどない。
茂兵衛はまじめに仕事をしている。
働きすぎではないかと疑ってしまうくらいだ。
そして、茂兵衛の夢枕には確かに大黒様が
立つ。そして、茂兵衛は肩こりがひどくなり
仕事が出来なくなってしまう・・・。
夢枕に立つ大黒様の謎とは・・・?

江戸は流行り風邪で大変なことになっていた。
イケメンで弱者の味方、人気の町医者・
諒伯先生の医院にはひっきりなしに患者が
やってくる。

諒伯先生は寝る間を惜しんで、患者のために
働いていた。
しかし、医院内でも風邪で倒れる者が続出。
少しでも手伝いになればと、おけいは今度は
諒伯先生の手伝いに行くことに・・・。

そこへ、大店の娘・おみつがやってきた。
最近は毎日やってきて先生を呼ぶ。
おみつは嘘つきという悪癖で、近所からも
家族からも見放されていた・・・。

名刀には目がない定町廻り同心・依田丑之助は、
刀の柄巻師から「珍しい刀を預かった見に来ないか?」と
誘われ店を訪れたが、柄巻師の具合が悪く
そのまま帰ってしまった。
その翌日、柄巻師が死んでいるのが見つかる。
さらに、あの嘘つきのおみつも何者かに殺される。

茂兵衛を苦しめた、大黒様の謎・・・。
おみつの嘘、柄巻師とおみつ殺害の謎。
解明された真相は、なんとも切なさがこみ上げる。

現代ででいうところの、承認欲求だったり、
名家の想像を絶するプレッシャーに負けそうに
なったり・・・。
人の弱さが事件を起こしてしまう。

おみつが嘘をつかなくてはならない
理由を誰かにわかってもらいたかったのか?
悪癖を治してほしくて、誰かに助けて
欲しかったのかな~。
そう思うと胸に迫る。

江戸っ子の人情話にミステリーの味付け。
とても面白い展開だった!

『妖しい刀 出直し神社たね銭貸し』
著者:櫻部由美子
出版社:角川春樹事務所(文庫)
価格:¥814(本体\740+税)

腕貫探偵がリモート相談。「異分子の彼女 腕貫探偵オンライン」

西澤保彦さんの大人気!腕貫探偵シリーズ
最新作が発売に!!!
コロナ禍を背景に、腕貫さんも
リモートで市民の相談に応えます!
「異分子の彼女 腕貫探偵オンライン」
(実業之日本社)読了。

時はコロナ禍。タクシー運転手の俺は、
櫃洗空港から乗車してきたおばあちゃんを
乗せて走っていた。
そんな時、ラジオから気になるニュースが
流れてきた・・・。
61歳の男が介護問題でもめて妻を殺害!?
名前を聞いて驚愕した!
34年前、結婚式当日に殺された友人の
嫁になるはずだった女が、これまた俺の
友人の男と結婚しその男に殺された!?と
いうのだ!
34年前の事件を思い出しモヤモヤする俺。
ご当地キャラ人形のテレビ画面でZOOMを
使うサポート窓口の担当者に相談することに・・・。
彼とのやりとりでだんだんと当時の記憶が。
そしてとんでもない事実に突き当たる!?
【異分子の彼女】

自分の息子が叔父を殺害し、困惑する私は、
櫃洗市市民サーヴィスがオンライン相談を
受けていると知り、その窓口の男に話してみた。
私は、先日叔父のマンションへ行った際、
知り合いの女性の遺体を見つけた。
だが再度マンションに戻ってみたら、
違う女性の遺体と入れ替わっていた。
いったいどういうことなのか・・・?
どこにいてもウイスキーの入ったスキットル
を手放せない私は、窓口の男からの
質問に答えていった・・・。すると
男の的確な指摘で事件の様相が浮かんできた。
え~ッ!そういうことだったのか・・・。
【焼けたトタン屋根の上】

15年前にあるマンションの一室で起こった
無理心中事件。
死んだ男性の方と不倫関係にあった、従弟の母親は
事件の当事者ではなかったが、夫の逆鱗に触れ離婚。
当時、中学生だった従弟はその一室で受験勉強を
していたが・・・。
無理心中事件について、俺は従弟と夜通し
話をしていた。
無理心中事件が起こったさらに十年前、つまり
25年前からの気になっていたことを市民サーヴィス課
のオンライン窓口の男性に相談してみた・・・。
あまりにも複雑すぎて自分でも何を言っているのか
わからないが、男性はきちんと把握し核心をついてきた・・・。
【そこは彼女が潜む部屋】

三つの中編が収録されたミステリ集。
見た目はロボットみたいな腕貫探偵、しかし
鋭い洞察力と、卓越した推理力で事件を解決する
王道の安楽椅子探偵もの。

複雑怪奇、絡みに絡んだ人間関係と事件の様相を
一つ一つ丁寧に、そしてロジカルに解きほぐし、
事件の真相を導き出す。

「腕貫探偵」シリーズ第1巻目の時の衝撃再び!
腕貫さんと相談者の二人の会話で謎がどんどん
解明されてゆく、そのドキドキ感と面白さが
十分堪能できる、シリーズ最新作!

『異分子の彼女 腕貫探偵オンライン』
著者:西澤保彦
出版社:実業之日本社
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)

お葬式がミステリーに!?『葬式組曲』

天祢涼さんの『葬式組曲』読了。
本書は第13回本格ミステリ大賞候補作、
第1章の「父の葬式」は、第66回日本推理
作家協会賞短編部門の候補作になった。
一度文庫化されたが、今回再文庫化にあたり、
全面改稿されている。
著者の思い入れの深い作品。

20代の女性社長・北条紫苑率いる「北条葬儀社」。
妙な関西弁をしゃべる餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目な新入社員の・新実。癖が強い社員
ばかりが目立つが、遺族からは絶大な信頼を
得ていた。
それは、彼らが故人の遺した謎を解明するという
意外な一面を持っていたからだ・・・。

父との確執で、実家から距離をとっていた
男性のもとに、父の死の知らせが届いた。
兄にすべてを任せようとしたが、
兄から「喪主は次男のお前が務めること」
それが父の遺言だと言われた。
なぜ・・・?
「父の葬式」

北条葬儀社の新入社員・新実は、生前相談に
来た女性から、祖母が亡くなった時、火葬は
したくないと言われていた。それからしばらく
あと、その女性から祖母が急逝したので、
葬儀を任せたたいと言われた。
彼女の条件は棺に拘ること、そして「火葬」
は絶対に避けたい事だった。
彼女はなぜ頑なに「火葬」を拒んだのか・・・・?
「祖母の葬式」

七歳の息子が亡くなった。父親は与党に所属する
政治家。与党は彼の息子の葬式を大々的に
執り行うと言った。政治家は党の言うことに従った。
ところが妻が反対した・・・。
通夜の前夜、霊安室で妻と息子は二人きりに・・・。
ところが、息子の遺体が消えた!
この夜一体何があったのか!?
葬儀を任された北条葬儀社は、遺体消失の謎に迫る。
「息子の葬式」

妻が友人の家で首をつって死んだ。
事件の可能性もなく、自殺と断定された。
しかし、夫は妻の死を受け入れられない。
それでも何とか生きていかなくてはと・・
夫は北条葬儀社に妻の葬儀の依頼をした。
そのころから、夫は妻の金切り声が聞こえる
ようになったという。
妻の死にまつわる謎を、北条葬儀社の面々が
解明することに・・・!
「妻の葬式」

北条葬儀社の高屋敷が亡くなった。
彼が亡くなったことで、これまでの
葬儀を振り返る・・・。
すると不可解な「謎」が浮かび上がる。
それぞれ、故人が遺した「謎」は解決
したはずなのに・・・・!!!
「葬儀屋の葬式」

一つ一つの短編には、人の死によって
起こる思いもよらない事件が描かれ、
そこには、緻密な「謎」が仕掛けられる。
心に残る4つのミステリー。
「天祢流」と呼びたくなる独特の世界観に
引きこまれる。
そして、思わず「ギョッ!」とさせる
ラストにまたしてもやられてしまう!
異彩を放つ!連作短編ミステリー。

『葬式組曲』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥825(本体\750+税)

赤ずきんの名推理再び!「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う」

青柳碧人さんの大人気シリーズ「むかしばなし編」
と「童話篇」。その童話篇の第2弾が発売!
赤ずきんちゃんの名推理が再び堪能できる!
「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う」読了です。
第1弾よりも面白さが増している。

ある目的のために再び旅に出た赤ずきん。
森で奇妙なものを拾った。
なんと、動く人形の腕。
それはピノキオという人形のものだった。
人間の男の子になりたいと願うピノキオ。

彼を助けるために赤ずきんは、親指姫一座へ
やってくる。
ところが赤ずきんは、その見世物小屋で
「キツネ殺し」の犯人として逮捕されて
しまう!!無実を証明できなければギロチン
刑が待っている!?どうする赤ずきん・・・。
【目撃者は木偶の坊】

難を逃れた赤ずきんとピノキオは、森の
中で七人の小人と出会う。彼らについて
ゆくと、彼らの家にいたのは、愛らしい
少女・白雪姫だった。
継母に命を狙われているらしいと知った
赤ずきんは、彼女を助けようとするが・・・。
赤ずきんの鋭い洞察力が、見えない悪意を
炙り出す!!
【女たちの毒リンゴ】

赤ずきんたちが次にたどり着いた街には
ハーメルン。その街には「ブレーメンの音楽隊」
がいて、「ハーメルンの笛吹男」の謎が街全体を
覆っていた。そして赤ずきんたちが着いた時は、
街はあるお祭りの準備中だった。しかしそこで
またしても事件に巻き込まれる!
「ハーメルンの笛吹男」がとんでもない展開に!!
唖然!絶句!こんなになるのかと膝を打った傑作
【ハーメルンの最終審判】

親指姫の憧れ、「三匹の子豚」が住む街へ
やってきた赤ずきん一行。なんとその町は
三匹の豚の兄弟が牛耳っていた。
そして、またしても事件が!
【なかよし子豚の三つの密室】

親指姫、ピノキオ、白雪姫、ハーメルンの笛吹男、
ブレーメンの音楽隊、そして三匹の子豚。
それぞれのお話は誰でも知っている。
それが予想だにしない物語へと繋がってゆく。

密室トリック、倒叙ミステリー、どんでん返し、
犯人あてと、本格ミステリー仕立ての童話集。
この展開、本当に度肝を抜かれる。

またしても「超絶ぶっ飛び」展開が待っている!
面白くて止まりませんよ!

『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う』
著者:青柳碧人
出版社:双葉社
価格:¥1,540(本体\1,400+税)

ユーモア満載!本格ミステリ長編、「仕掛島」

東川篤哉さんの「謎解きはディナーのあとで」は
2011年本屋大賞を受賞した。
ドラマ化・映画化で話題をさらった。

久しぶりに手にした、「仕掛島」は、
東川さんの持ち味が十分に楽しめる
本格推理小説の傑作だ!

弁護士の矢野沙耶香は、父の代わりに
岡山県の名士・西大寺吾郎が遺した
遺言状を公開するために、一族が
集まる斜島にやってきた。
遺言状は2通あり、1通目に従って
一族は瀬戸内海の孤島に集められていた。

船で偶然出会った、探偵・小早川隆生。
彼は、行方不明になっていた一族の一人
鶴岡和哉を探し出した人物だった。

彼らは一族が集まる孤島の「御影荘」
に案内された。
矢野沙耶香は、一族の前で無事に
2通目の遺言状を読み上げていった。
誰もが納得したように見えた・・・

その翌朝、相続人の一人が死体となって
発見される。
死体の状況は、殺人だと思われる。
小早川は警察に連絡するが、嵐のため
船もヘリも出せず、彼らは死体とともに
孤島に閉じ込められる事態となった。

死体発見から、館では次々と怪事件が
起こる。
鬼面の怪人物、消える人影・・・。

探偵・小早川隆生と弁護士・矢野沙耶香は
否応なく怪事件に巻き込まれてゆく・・・。
警察に頼ることができないなか、二人は
殺人事件の犯人を探し出すことに。
やがて、一族が秘密にしていた23年前の
悲劇が明らかになる。

巧妙に配置された伏線、大胆なトリック、
そして、あまりにも悲劇的な真相に
瞠目するが、登場人物たちの軽妙で
ユーモア満載の会話に、思わず
クスっと笑ってしまう。

殺人事件という残酷なストーリーの
中では、それが救いにもなるかもしれない。

探偵・小早川隆生と弁護士・矢野沙耶香の
コンビが良かった。

『仕掛島』
著者:東川篤哉
出版社:東京創元社
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

ワクワクが止まらない、凄すぎるミステリ作家ラインナップ!「本格王2022」

本格ミステリ作家クラブが厳選した6作品。
ミステリファンにはたまらない超豪華
ラインナップに期待が高まる!

その町で50年ぶりに殺人事件が起きた。
事件があった夜、一匹の犬が事件現場から消えた。
その犬を必死に探す、女刑事。
その犬を探すため、女刑事は怪しいと知りながら、
民間の動物専門の探偵会社に依頼する。
なぜ、そんな危ない橋を・・・?その理由にハッとする。
道尾秀介「眠らない刑事と犬」

悪役を演じてきた俳優の家にお茶に誘われた
女性。彼女はかつて家政婦を務めた初日に、
毒殺事件を目の当たりにしたという。
犯人も、どうやって毒を盛られたのかもわからず迷宮入り。
「カラマーゾフの兄弟」からインスパイアされた、
犯人当てミステリー。その真相に「こうきたか!?」と思わず唸る。
大山誠一郎「カラマーゾフの毒」

庭付きのマイホームを購入しようと思い立った
元刑事は、早速不動産屋へと向かう。
そこで紹介された物件は、元刑事が現役時代
事件の捜査で何度も足を運んだ物件だった。
マンションの階段から転落死した女性。
当初は自殺とみられたが、遺書も動機も
なく、他殺の疑いがあるとされた・・・。
元刑事が辿る思考・・・。ぞわりぞわりとさせられる。
芦沢央「アイランド・キッチン」

生物の影を喰らい、その生物を死に至らしめる影魚。
友人と二人、別荘へいくつもりが山で迷ってしまい、
「影魚」の生息地へ踏み込んでしまった。
影を食べられると1時間で死んでしまう。
その前に影魚用の特効薬を飲めば助かる。
しかし手元には1錠しか残っていない。
その影魚に喰われたのは、友人か?愛犬か?
どちらに飲ませるか?究極の二者択一!
著者得意の特殊設定物。驚きのどんでん返し!
方丈貴恵「影を喰うもの」

初めての合コンに参加した、男子大学生に
ふりかかった思わぬ幸運。5人もの女性から
好意を持たれるが、一人だけが本命であとの
4人は地雷だらけの訳ありなのだ。
本当に彼を好きな女性は誰なのか?
「彼を好き」という情報しかない中、
地雷を踏まず、運命の人を見つけることは
出来るのか?細々と探り当てる情報から
消去法で「運命の人」を推理する。
超面白いユーモアたっぷりのミステリ。
浅倉秋成「糸の人を探して」

兄が執筆中の犯人当て推理小説の手書き
原稿を汚してしまった弟とそのクラスメート。
二人は何とかして汚れてしまった部分を
復元しようと試みるが・・・。
復元場所が提示され、読者もついつい推理に
してしまいそうになる「読者への挑戦状」
めいた展開にもなっていて楽しい。
森川智喜「フーダニット・リセプション」

人気ミステリ作家競作!短編だけれど
読み応えたっぷりの傑作アンソロジー集。

『本格王2022』
著者:道尾秀介/大山誠一郎/芦沢央/方丈貴恵/浅倉秋成/森川智喜
出版社:講談社
価格:¥924(¥840+税)

‘戸籍’がテーマの斬新な探偵小説「先祖探偵」

「元彼の遺言状」「競争の番人」など、原作本が
連続でテレビドラマ化されている、今飛ぶ鳥を落とす
勢いのミステリー作家、新川帆立さんの最新作、
「先祖探偵」を読了。

ご先祖様を探す人たちのヒューマンドラマ。
コミカルでちょっとシリアス。心に沁みる
物語。凄く好きになりました。

20年前に生き別れた母を探す傍ら、ご先祖様の
調査を請け負う探偵業の風花。

武田信玄の重臣の末裔だという男性から
先祖の調査を依頼されている風花のところに
ある日、今年110歳になる、日本最高齢の
曽祖父を探して欲しいとの依頼が舞い込む。
出来る限り先祖を遡ることが出来るが・・・。
この調査が意外な展開と結末を呼ぶ。
「幽霊戸籍と町おこし」

夏休みの研究課題を「家族史」とした女子中学生。
母親から依頼され、それを手伝うことになった
風花。パパの先祖から辿ってみると、妙に父親の
先祖に拘る。彼女が本当に知りたいこととは?
女子中学生の切ない本心にグッとくる。
「棄児戸籍と夏休みの課題」

風花が探偵事務所を開いてる下の階は、カフェに
なっている。今は妻に逃げられた夫が一人で
店を回している。そんな妻の方から風花に依頼が・・・。
10歳くらいの男の子が、ある日何かにとり憑かれ
妙なことを言い始めた。ご先祖様の霊がたたって
いるのではと言われ、先祖を調べて欲しいとのことだ。
男の子の姿をみて、心を痛めた風花は調査を引き受けた。
ちょっとホラーテイストな展開だが、その真相は
じわ~と心に沁みる。
「焼失戸籍とご先祖様の霊」

「ドヤ街」と呼ばれる場所に暮らす男性から
先祖調査の依頼でやってきていた風花は、
そこで戸籍のない男性と出会う。
事情があって母親が出生届を出さなかったらしい。
戸籍がないせいで、生活してゆくのに苦労していた。
先祖を探して欲しいとの依頼を受けたがかなり
面倒なことになると思ったら、その通りの展開。
どうなる・・・!?この調査!
「無戸籍と厄介な依頼者」

探偵事務所の調査員から「風子」を探している人が
いると聞き、期待を抱いた風子。それは父親が
自分を探しているのではと思った。父から母の
情報が得られる!と浮きたつが・・・。
風子は途中、日系ブラジル人に襲われるという
危険な状態に置かれる。
風子は母親にたどり着けるのか?
「棄民戸籍とバナナの揚げ物」

様々な先祖調査で次々と浮かび上がる謎!
そして、調査の結果明らかになる、衝撃的かつ
意外な真実。
現役弁護士だからこそ描ける「戸籍」に
ついての詳細な記述。
「戸籍」という斬新なテーマがドラマチックに
組み立てられて面白い。

寂しさを抱え孤独な人生を生きる風子だが、
それでも強く、たくましく生きている。
そんな風子がとても好きになった。

ぜひ、シリーズ化して欲しい!

『先祖探偵』
著者:新川帆立
出版社:角川春樹事務所
価格:1,600円 (本体1,760円+税)

百合小説オンパレード!「彼女。百合小説アンソロジー」

今、大注目の「百合小説」。女性同士の
恋物語を描く小説だが、それだけを集めた
アンソロジー集が出ました!
「彼女。百合小説アンソロジー集」
(実業之日本社)。
著者のラインナップに驚く!!!
相沢沙呼、斜線堂有紀、織守きょうや、
乾くるみ、武田綾乃、青崎有吾、円居晩。
この著者を見たら絶対に読みたくなってしまう~。

「椿と悠」織守きょうや
秋山椿は、クラスメートの塩野悠に惹かれてゆく。
いつも一人だけど、それを全く気にしない悠。
人とのつきあいがあまり得意ではない椿だったが、
勇気を出して悠に声をかける・・・。
椿と悠の勘違いから何かが始まる・・・。

「恋澤姉妹」青崎有吾
あるゲームで「最強」を欲しいままにしている、
恋澤姉妹。彼女たちに会いに行くと言って
去った、除夜子。彼女は死んだのか?
彼女たちを探す中で、壮絶なバトルが
繰り広げられる。
女子たちが強すぎる、ハードボイルドな復讐譚。

「馬鹿者の恋」
まっすぐに気持ちを伝えてくる幼馴染の萌。
萌の気持ちを知りながら、なかなかそれに
応えられない千晶。
しかし、ある転校生の登場で、二人の関係が
微妙にずれてゆく。
自分に素直になった時、初めて本当の気持ちに気づく悲劇。

「上手くなるまで待って」円居晩
大学時代の文藝部で、憧れの先輩に「うまく
なるまで待ってるから」と言われた私。
社会人になって、大学時代の友人から
私が書いたと思われる小説が投稿されてると
知らされる。身に覚えのないことに
私は悩まされるが・・・。
女性同士の複雑な感情をサスペンスタッチで描く。

「百合である値打ちもない」斜線堂有紀
人気FPSゲーム「ガンズへイル」の美しき
プロモーター美優島乃枝とペアを組む私。
でも常々、私は醜い人間。美優島乃枝の
恋人である資格がない。今の自分は百合
である値打ちもないと思っていた。
そしてとうとうある決意をする。
恋人とのギャップに悩む切ない心がリアルすぎる。

「九百十七円は高すぎる」乾くるみ
ソフトボール部の愛する先輩がいなくなり
京華と敦美は、相手を先輩に見立て、恋愛ごっこ
を楽しんでいた。ある日モールで買い物中の先輩と
その友人を見かける。彼女たちの会話が聞こえてきた。
「え、そんなに?」「917円?」。
京華と敦美は憧れの先輩と同じ金額のものを
買おうと計算し、モール中を駆け巡る・・・
先輩が買ったのものとは?
乾くるみワンダーランド炸裂!!!面白い!

「微笑みの対価」相沢沙呼
高校時代に出会った優香と紫乃。優香の方から
積極的に声をかけた。やがて二人の気持ちは
通じ合う。社会人なった二人は疎遠になっていたが、
ある日、紫乃から連絡があった。
その内容とは・・・?
仮に裏切られたとしてもなお、愛する人のためならば
何でも出来るのか?究極の選択を迫られる。
愛しすぎた末の悲劇。

凄い!凄い!ラインアップ。ミステリーファン
歓喜のアンソロジー。

『彼女。 百合小説アンソロジー』
著者:相沢沙呼/青崎有吾/乾くるみ/織守きょうや/斜線堂有紀/武田綾乃/円居晩
出版社:実業之日本社
価格:¥1,925(本体¥1,750+税)

ユーモア全開!のオカルトミステリー「スリーピング事故物件」

「七回死んだ男」」やユーモアミステリーの
人気シリーズ「腕貫探偵」でおなじみの
西澤保彦先生の新刊が発売に!

曰くつきの事故物件で起こる、
オカルトチックなミステリー。
「スリーピング事故物件」(コスミック出版)

婚約破棄で仕事もやめた初音は、
婚約破棄の原因となった元職場の先輩・
ユウさんと、彼女の姪で女子大生・真歩と
3人で、曰く付きの事故物件で共同生活を始めた。

事故物件だから家賃は元から破格のお値段
それをさらに3人で分ければただ同然!
苦しいお財布事情の初音は、ユウさんの提案に乗った。

21年前に住人が殺された、その事故物件
には、一台のワープロが鎮座していた。
これまでの入居者は、邪魔なワープロを
片付けてしまった。
ところが、片付けても片付けても出現する
不気味なワープロに、恐慌をきたした過去の
入居者たちは早々にこの部屋から出て行ったのだ。

真歩がそのワープロに文字を入力すると、
21年前に死んだ箕浦奏人が文字を打ち返してきた。
どうやらワープロに奏人の霊が宿っているようだ!?

3人は怯えながらも、奏人とワープロを介し、
情報交換をしてゆく・・・。
奏人はなぜ殺されたのか?
犯人は誰なのか?

頭脳明晰な真歩が、名探偵並みに推理を
組み立てていく。
真歩の周りでしゃべりまくって恐怖を回避
しようとするユウと初音は、あまり
役にたたない、ワトソン役というところか。

過去と現在、複雑な人間関係が絡みに絡んで
事件は起こった。
それをロジカルに解いてゆく真歩。
真犯人解明のくだりは圧巻!
ありえない動機!
ぶっ飛びの真相!

さらに、因縁のふたりのはずなのに、
ユウと初音の謎めいた関係は突っ込みどころ満載!

強烈なキャラクターたちに魅せられる。最高に面白い
ユーモアオカルトミステリー!!!

『スリーピング事故物件』
著者:西澤保彦
出版社:コスミック出版
価格:¥1,760(本体¥1600+税)