凄すぎる元警察官だから描けた、『鬼手 世田谷駐在刑事』のリアルさ。

大人気シリーズ「警視庁情報官」シリーズの著者が描いた、リアルな警察小説が発売。『鬼手 世田谷駐在刑事・小林健』(講談社文庫)です。
この著者の略歴を見て驚きました。すごい警察官だったようで、辞職されたときの階級は警視庁警視。凄い・・・・。
『鬼手 世田谷駐在刑事・小林健』はタイトルに惹かれ、読み始めました。すでにドラマ化も決まっているようです。
元警察官という経歴を活かし、日々起こる大小の様々な事件を小説仕立てに描いていて、まるで警察官の手記か何か読んでいるような感覚に陥りました。(手記って読んだことはないですが・・・)
主人公の小林健は、世田谷区の高級住宅街にある駐在所に勤務し、学童整理したりするお巡りさん。しかし別の顔を持っている。実は、警視庁山手西警察署組織犯罪対策課第四係長を兼務している‘駐在刑事’。暴力団幹部から「鬼コバ」と恐れられている犯罪捜査のエキスパート。
この「鬼コバ」が今は新聞、マスコミなどでよく取り上げられるようになった芸能界の麻薬事件や、少年のナイフによる凶行、また未解決の事件にまで食い込んでいく。
悲しい過去を引きずりながら、愛情あふれる妻や息子のために日々奮闘する鬼コバは、とてもかっこいいお巡りさんです。
「警視庁情報官」シリーズのように派手(?)さはありません。しかし地味になりがちな事件や、警察内部の人間関係などもとてもリアルに丁寧に描いていて、警察小説好きの読者の知りたい願望を刺激してくれています。
出血多量、ドンパチの多いミステリーや警察小説にはちょっと疲れたな・・・という人におススメの、読めば読むほど味わい深い警察小説です。

『鬼手 世田谷駐在刑事・小林健』
著者: 濱嘉之
出版社:講談社
価格:¥600(税別)