『SRO』『生活安全課0係』に続く新設部署誕生『警視庁SM班』!

富樫倫太郎さんの警察小説、新たなシリーズ登場です。
『SRO』(中公文庫)、『生活安全課0係』(祥伝社文庫)。
どのシリーズもクセ強めなはみだし刑事さんが
集められ、周囲をあっと言わせる大事件を解決しています。

さて、新設部署『SM班』もやはりというか
組織になじめない刑事たちが集まることに
なった。

SM班班長の薬寺松夫は太りすぎでおねえ言葉。
佐藤美知太郎は超優秀な分析官だが・・・。
糸居秀秋は、身体は申し分ないが捜査能力が・・・。
柴山あおいは女だてらに強すぎで・・・・。
そして、田淵ゆたかは・・・・。
最後に新米刑事が一人、白峰栄太は父が警察庁のキャリア。

何だかそれぞれ事情を抱えた者たち。

自己紹介もそこそこに終わり、さあどこから手を
つけようかと思っていた矢先、子供たちが
遊ぶ公園で、得体の知れない不審な男が居るとの
通報があった。

警官が向かい、男に職務質問をかけたが
男は警官の手を振り払い逃げようとした。
警官は男を捕まえるようとしたところ、
男が持っていたリュックが落ち、中から
何かがこぼれでた。
ビニールに入れられたものを
よく見ると、人間の指と耳が入っていた!

猟奇的事件発生!
SM班は配属初日からその事件の捜査を
命じられた。

参考人として引っ張られた男は、アニメの話には
食いつくものの、肝心なことは全く何も話さない。

捜査一課の取調官でも手におえないらしい。

ところが、SM班の佐藤は男の所持品から
男の特性を推察し、行動パターンを分析。
男の素性を明らかにするヒントをつかむ・・・。

そして、SM班は若い女性を誘拐し、人身売買
をしている組織がいるのではないか?
男はその運搬係なのでは・・?
ということを突き止めるのだった。

彼らは独自の能力を活かし、真相に迫る!

クセ強めはみだし刑事たちが集合し事件を解決する
警察小説は、海外ものも大好きだが、このシリーズは面白い!
とにかく、それぞれのキャラが、富樫さんがこれまで描いて
きたシリーズと比較して最も濃い!
特に、佐藤の能力が凄い!
佐藤が導き出す方向に沿って捜査をすれば次第に
真相に近づいてゆくのだ。

その過程が読んでいて非常に面白く、
もうすでにこのシリーズにはまってしまった。

捜査の過程の合間にメンバー個人の事情も
描かれて興味深い。

次はどんな事件が待っているのか?
メンバーたちの事情は明らかになってゆくのか?

すでに発売中の第2弾『警視庁SM班Ⅱ モンスター』
にも期待!次読むぞ~。

『警視庁SM班Ⅰシークレット・ミッション』
著者:富樫倫太郎
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥880(税別)

面白すぎてノンストップ!「逃亡刑事」

中山七里さんの警察ミステリー「逃亡刑事」が
面白すぎて止まらなかったです!

中山作品の中でも特に、
悪徳弁護士・御子柴シリーズや
渡瀬警部補、犬飼刑事が登場する
警察小説が大好きですが、
「逃亡刑事」の主人公、高頭冴子警部の
キャラが際立っていて、彼らがかすんで
しまいそうです!

千葉県警捜査一課で検挙率トップの班を
率い、アマゾネスと異名をとる、
強行犯係の係長の高頭冴子警部は、
正義感が強く、信念もって捜査にあたる
絶対的な上位下達で係をまとめる。
捜査能力にも長け、部下からの信頼も厚い。
身長180㎝、柔道・剣道いずれも強い
そんじょそこらの男どもなど朝飯前に片付ける!

施設に預けられ、そこで子供たちを指導する
教官に虐待をされた8歳の少年は、母親に
会うため、施設を脱走する。
その途中、少年はとんでもないものを目撃する!
危険な目にあいそうだったが、なんとか
その場を逃げ切った。

少年が脱走した翌日、閉店したカーディーラーの
店舗内で、単独で麻薬密売ルートを探っていた
刑事の銃殺死体が発見される。

捜査にあたったのは、高頭班。
高頭は広域暴力団宏龍会の幹部・山崎と
交渉し、麻薬ルートの情勢を探った。
山崎によると、謎の麻薬ルートがあるという。

事件を目撃した少年は、犯人の顔を見ていた。
少年の証言を参考に、押収物を調べると
千葉県警がぶっ飛んでしまうくらいの
危ない事実をつかむ。

ところが、事件の真相を知った高頭は、
真犯人に嵌められ、警官殺しの汚名を着せられる。
自分の無実を証明できるのは、その殺人を目撃
した8歳の少年ただ一人!

高頭は少年を連れ警察組織から逃亡する!
県警内部を敵に回し、高頭は逃げ切れるのか?

アマゾネス・高頭警部があまりにもかっこいい!
警察の正義のために命の危険も顧みず、真相を
暴こうとする姿勢に拍手喝采!

また、二人が逃亡中に出会う人情厚い人々が
彼女たちをサポートする。
何が正しくて、何が悪なのか?
高頭は彼らとの出会いの中で人間として
警察官として成長するのだ。

めちゃめちゃ面白く、時間を忘れて読み
ふけりました。
高頭班の活躍、もっと読みたいです!

『逃亡刑事』
著者:中山七里
出版社:PHP研究所(文庫)
価格:¥780(税別)

再雇用の敏腕警察官が活躍!「再雇用警察官」

以前、姉小路祐さんの「署長刑事」シリーズや
「刑事長」シリーズを読んでとても面白かった
ので、新作「再雇用警察官」を発見したとき
思わず手に取っていました。

定年後、雇用延長警察官として勤務を
続けることになった、安治川信繁刑事。
新しい配属先は、生活安全部消息対策室。
簡単に言うと、行方不明人捜査官。

結構意気込んでいたので、「あれッ?」
って感じの肩透かしをくらった。

対策室のメンバーは、室長で警部の芝、
女性捜査官の新月良美巡査長と安治川の3人だ。

早速、家出人捜索の案件が舞い込んだ。
夫が書置きを残し、家を出たので探して
欲しい。夫が家を出てから脅迫電話が
かかってきた云々。
夫は妻に内緒で会社を退職し、退職金をもって
家を出た。どうも妻はこの退職金に未練が
あるらしい。
安治川は、脅迫電話がかかってきたことで、
夫が事件に巻き込まれたかもしれないと判断し、
調査をしたが結果は事件性らしいものはなく、
冷たい妻に嫌気がさし覚悟の家出と見た。

ところが、その家出した夫の水死体が上がった。
早速、妻や夫の友人に確認したが、なんと別人だった。

家出をした夫には若い女の影・・・。
夫の保険証を持ったまま水死体であがった
死体はいったい誰なのか?
調べれば調べるほど謎は深まるばかり!
しかし、本当の夫の死体が山中から発見された
ことで、捜査は急展開!
安治川の刑事の勘が冴えわたる!

再雇用なので、給料は激減する。
身分は一応巡査部長待遇?と曖昧だけれど、
昇級降級無関係!だから、ちょっとくらい上の
意向に逆らっても、多分処分や意地悪な異動
などもほぼない。
現役時代より仕事がやりやすい!
敏腕刑事だった頃培った人脈を活かし、
忖度なしの捜査で難事件を解決する!

いや~気分がスカッとします。
再雇用警察官だとか言ってなめるなよ~
ベテランだからこそ、出来ることがある!

6月5日に『再雇用警察官 いぶし銀』が
発売されました!どうも後妻業の話らしい
面白そう!!!

『再雇用警察官』
著者:姉小路祐
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥730(税別)

珠玉の警察小説アンソロジー『刑事の灯』

好きな警察小説作家さんたちの名前が
目に留まり、思わず買ってしまいました。
『刑事の灯』(双葉社文庫)
麻見和史さん、沢村鐵さん、藤崎翔さん、吉川英梨さん。

ワクワクしながら読みました。

1『星の傷痕』麻見和史

刑事なのに「黒星」という苗字にいつも
からかわれる、黒星達成。
変死体が出たと臨場要請があり現場へ到着すると、
男性の遺体には、星の形をした傷痕があった。
猟奇殺人なのか?
捜査は難航するな・・・と思った黒星とコンビを
組んだのは、元気な女性警官・白石雪乃だった。
雪乃の前向きな捜査で、意外な真実が明らかになる。

2『道案内 警視庁捜査一課・小野瀬遥の黄昏事件簿』沢村鐵

このタイトルをみると「警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結」
とか「クラン警視庁捜査一課・晴山旭の密命」を彷彿させる。
不可解な女児誘拐事件が発生!
捜査会議では晴山旭主任刑事が焦りを募らせていた。
新人刑事の小野瀬遥は、警察組織存続の危機を招いた
重大事件を解決に導いた一人が晴山旭だと聞いて
いたので、そのギャップにちょっと面食らっていた。
晴山のために少しでも早く子どもを見つけたい・・・。
そんな遥はある日不思議な派出所に行きつく。
そこで出会った若き警官に「女の子は必ず見つかる」と
励まされるが・・・・。
この話、「クラン」シリーズを最後まで読んでいると
警官が誰なのか?わかるはず!

3『読心刑事・神尾瑠美』藤崎翔

藤崎さんは、元芸人ということもあり、とても
面白いミステリー小説を描く。
今回は人の心が読めてしまう女性刑事が主人公。
その女性刑事がいる班へと異動させられた
根津刑事の苦悩・・・。そして、
読心術ですでに事件の犯人がわかっているけれど、
証拠がない。どうする!?
事件解決へのストーリーがユーモアたっぷりに
描かれる。

4『ファーストレディの黒子』吉川英梨

総理大臣の妻が、部下の男と密会中腹上死した。
連絡を受けた「十三階」の古池は、上司の栗原に
スキャンダルを避け、ファーストレディの
死を「名もなき戦士団」のテロに見せかけるよう
指示される。その助っ人に古池が選んだのは、
公安一課三係長・広田達也だった。
なんと「十三階」シリーズと「原麻希」シリーズの
コラボだ!ファンにはたまりません!
そして二人が暴いた真実にぶっ飛ぶ。

短編だからこそ描けた、作家さんからファンへの
サービス精神てんこ盛りのアンソロジー集です。

『刑事の灯』
著者:麻見和史・沢村鐵・藤崎翔・吉川英梨
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥600(税別)

子どもたちの苦しみが胸に迫る!「あの子の殺人計画」

天祢涼さんの「希望が死んだ夜に」では
貧困にあえぐ少女たちの悲劇を描き、
あまりにも切ない展開に、思わず泣けました。
事件の捜査とともに少女たちの心に
優しく寄り添った仲田刑事が印象的でした。

その仲田刑事が再び登場する、
最新刊は、「あの子の殺人計画」。
児童虐待というセンシティブなテーマに
真正面から斬り込んだ意欲作。

小学5年生の椎名きさらは、母子家庭で育つ。
母親は一生懸命働いているが、貧困からは
抜け出せない。しかも、「水責めの刑」で
厳しく躾られていた。
厳しいけれど、それは自分が悪いことをしたから。
ママは私のために厳しくしてくれている・・・。
母への思慕から、きさらはそう思い込んでいた。

ところがある時、保健の遊馬先生や、
転校生の翔太らに指摘され、自分が虐待
されているのではないかと気づき始める…。

やがて、母への思いは恨みへと変わり、
きさらは、母親の殺人計画を練る….。

一方、川崎駅付近の路上で、大手風俗店の
オーナー・遠山が遺体で見つかった。
鋭利な刃物で刺し殺されていた。
神奈川県警捜査一課の真壁刑事は所轄の
捜査員、宝生とともに聞き込み続けると、
かつて、遠山の店で働いていた、椎名綺羅
という女性が捜査線上に浮上する。

真壁は椎名綺羅に疑念を抱くが、事件当夜は
娘のきさらと自宅にいたというアリバイがあった。

そこで真壁は、以前女子中学生の事件で
捜査に協力してくれた、生活安全課の
女性捜査員・仲田蛍の力を借りることに。
仲田は生活安全課に所属しながら、数々の
事件を解決に導いた、優秀な刑事だ。
椎名きさらは、仲田に心を開き、
少しずつ母との関係性を語るのだった・・・。

「希望が死んだ夜に」に続き、今作品も
子どもたちの目線で描かれ、虐待という
悲劇的な展開に言葉をなくす。
そんな物語のなかで、仲田刑事が子供たちに
寄せる優しさに心が癒される。

さらに、一瞬にしてそれまでの世界が反転する
神業的なミステリー手法に息をのむ!

「子どもの貧困」「こどもの虐待」を
テーマに、現代日本の不条理を抉る!
社会派+本格ミステリが融合した、
胸に迫るミステリー。

『あの子の殺人計画』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥1,650(税別)

スリリングな展開!特捜本部VS.特捜検事「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」

今野敏先生の人気警察小説シリーズ
「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズの最新作
「焦眉」を読みました。

このシリーズは、「隠蔽捜査」(新潮社)
「東京湾臨海署・安積班」(角川春樹事務所)
「警視庁捜査一課・碓氷弘一」(中央公論新社)
シリーズと並ぶ、今野作品、警察小説シリーズ
ベスト4の中の1作です。

このシリーズの主人公・樋口顕は
「熱い情熱を秘めた静かなる男」
と言ったイメージで、はまさきは
安積警部補の次に好きな人物です。

今作品は、東京地検特捜部の検事たちの
暴走を食い止められるのか!という物語。

捜査二課の氏家から衆院選の
選挙係になったと報告を受けた樋口。
そのことでナーバスになった氏家の様子が
気になり、二課に寄った樋口だったが、
いきなり東京地検特捜部が来ていると
知らされる。

衆院選が終わった頃、世田谷区の住宅街で
殺人事件が発生した。
被害者はファンドを経営する中年男性だった。

警視庁は直ちに特捜本部を設置。
ところがその捜査本部に地検特捜部の
灰谷と荒木が現れる。

彼らは、今回の衆院選で与党のベテラン議員を
退け当選した野党の衆議院議員・秋葉康一を
政治資金規正法違反で内偵中だった。
殺された男性と秋葉は大学時代親しかったらしい。

さらに殺害現場付近の防犯カメラには
秋葉の秘書の姿がうつっており、灰谷らは
秋葉が殺人事件に関与しているのではないかと
疑っていたのだ。

捜査本部内では、殺人事件の特捜本部に
部外者がいるのはおかしいし、彼らの
やり方に憤りを感じていた。

そして、灰谷らは秘書の身柄を拘束、樋口は
証拠不十分を主張したが、独断で逮捕に
踏み切ってしまう!

検事による不当逮捕。こんなことが許されて良いのか?
国家権力を武器に、民間人を恐怖のドン底に陥れる。
送検されれば、有罪率は99.9%なのだ。

その恐ろしさが物凄いリアリティをもって
描かれ、ただただ怖い。
ほんの些細な状況証拠だけで、犯罪を作り出す。
冤罪が生まれる過程を読んでいるようだった。

樋口のように当たり前に考えればそれはない!
と言い切る刑事がいなければどうなるだろう。

間違った方向に向かうとき、きちんと
正しいことが言える。
それが大切なんだということを痛感した
作品だ。

いつもながら、読後の爽快感がたまらない!

『焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕』
著者:今野敏
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

「弧狼の血」シリーズ完結編『暴虎の牙』

昭和50年代の広島を舞台に、暴力団の抗争を
命を張って食い止めようとした刑事を主人公に
描いた「弧狼の血」、その続編「凶犬の眼」。
熱き男たちのドラマに心が震えた。
そのシリーズが新作「暴虎の牙」で完結する。

昭和57年、広島呉原。
愚連隊「呉寅会」を結成した沖虎彦は、
心の内に極道への憎しみをたぎらせ、
死をも恐れぬ圧倒的な暴力で、勢力を
拡大していった。

暴力団のシノギの現場を荒らしまくり
呉原の最大組織「五十子会」を激怒させていた。

広島北署二課暴力団係の刑事・大上章吾は、
ヤクザからも一目置かれる凄腕のマル暴刑事だ。
沖に彼なりのやり方で警告をするが、沖は耳を
貸そうとしない。

大上は、「五十子会」に無謀な闘いを挑む
沖の暴走を食い止めようと奔走する!

時は過ぎ平成16年、懲役刑を受けて出所した
沖がふたたび広島で動き出した。
しかし暴対法が施行されて久しく、
暴力団のシノギはままならなくなっていた。

時代に取り残されたような焦燥感を感じた
沖はまたもや暴走を始める。
そんな沖に目をつけたのは、大上の愛弟子で
東呉原署捜査二課暴力団係・日岡刑事だ。

大上・日岡二人の刑事は、最凶の愚連隊
「呉寅会」の沖の暴走を止められるのか!?

「極道がなんぼのもんじゃ!」「舐められたら終いだ!」
「広島を制覇する!」
自らを鼓舞し、すさまじいまでの暴力の世界で
生きる沖虎彦。彼がなぜそこまで極道に
憎しみを抱き、自信が広島を牛耳る!という
無謀な野望を持つにいたったのか?
沖の過去がそれを物語る。

暴力は絶対にいけない。しかしこういう風にしか
生きられない沖の姿に切ない思いを抱いてしまった。
何とか止めてほしい!とずっと思いながら読んでいた。

さらに、大上刑事の妻と娘の悲劇、
大上の魂が乗り移ったかのような日岡刑事の捜査。
物語すべてが、シリーズ完結編にふさわしい、屈指の傑作!

『暴虎の牙』
著者:柚月裕子
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,800(税別)

過酷な運命を背負う刑事を描く!『ブラッド・ロンダリング』

吉川英梨さんといえば人気の警察小説
シリーズが何作もあります。
「警視庁53教場」、「新東京水上警察」
「警部補・原麻希」「十三階の女」。
どのシリーズも面白くてはまります。
シリーズ1作目を読んでしまうと、
次から次へと読みたくなるのです。

また、シリーズでない作品は、社会的
メッセージが強いかなと感じます。
「雨に消えた向日葵」は少女誘拐事件を
通して、日本社会の病理に斬り込み、
心が揺さぶられました。

そして、最新作『ブラッド・ロンダリング』は、
過酷な運命を背負わされた人たちの悲痛な叫びが、
胸に響きます。

警視庁刑事部捜査一課に新人刑事が配属された。
彼の名前は、真弓倫太郎。父親も祖父も警察官。
しかし、彼には絶対に知られてはならない秘密があった。

その日、マンションの駐車場の車に真っ逆さまに
突き刺さった死体が発見された。
男の身元はすぐに判明。雑誌記者で、遺書が
遺されており自殺と断定される。
しかし、遺体の靴に残っていた塗料が気になった
警視庁刑事部捜査一課の二階堂汐里は
事件性があると感じた。

汐里は、なかなか心を開かない倫太郎を気遣う。
そして、グイグイと捜査に引っ張り込む。

記者の周囲を探っている内に、ある人気女優の
スキャンダルを追っていたことが判明する。
そして、女優が所属する芸能事務所では最近に
なってその女優のマネージャーが辞めたことが
わかった。
だが、そのマネージャーも自殺死体で発見される!

事件性ありと見た汐里たちは、本格的に捜査を
開始。やがて一つの集落を消滅させた凄惨な
大火事にたどり着く。

都会で起きた二つの変死事件、
かたや、奈良の限界集落で起きた自殺事件。
そして過去に起きた凄惨な火災事件。
三つの事件が繋がった時、あまりにも哀しい
真実が浮かび上がる・・・。

捜査の過程で発覚した、大火災事件。
加害者家族が背負ったあまりにも過酷な運命。
どこに行こうと必ず暴かれる。逃げ場はない。

また、不可解な行動を続ける新人刑事・真弓倫太郎。
一体彼はどんな秘密を抱えているのか?
倫太郎が語った「僕は刑事になってはいけない」
という言葉の意味は?

婚約者を殺され心に深い傷を持つ、汐里。
今だ癒えぬ哀しみと苦しみを抱えつつ、
仕事を続けている。それを周囲に悟られぬように
男っぽく振る舞うが、本当は優しさに満ちている。

そんな汐里に好意らしきものを抱く倫太郎だったが…。

ブラッド・ロンダリング──
過去を消し去り、自らの出自を新しく作りかえる血の洗浄。
そこまでしなければならないほど、この国の
加害者家族は生きられないのか?
本人には何の罪もないのに!?
その怒りが、痛みが、叫びが心にガツンと響く。

歪み切った正義に支配された今の日本。
それが、どれだけの人を傷つけているのだろうか?
そんな中でも、傷ついた人の心に寄り添う
優しさが随所に描かれている。

ラストに汐里たちの上司・柿内が、悩む倫太郎に
かけた言葉にしびれた!!
この物語の終わりにふさわしい思った。

『ブラッド・ロンダリング 警視庁捜査一課殺人犯捜査二係』
著者:吉川英梨
出版社:河出書房新社
価格:¥1,600(税別)

定年まであと8年!事件を呼ぶ男、ベテラン刑事・岩倉剛シリーズ最新作「迷路の始まり」

堂場瞬一さんの警察小説新シリーズ第3弾
「迷路の始まり ラストライン3」を読了。

定年まであと8年のベテラン刑事・岩倉剛。
突出した記憶力の持ち主。
そして行く先々で事件が起こる。
通称「事件を呼ぶ男」。
しかし、彼の能力と鋭い刑事の勘で、
迷走しかけた捜査に解決の道筋が見えてくる。

南大田署管内で、殺人事件が発生した。
殺された男は、精密機械メーカーに
勤務する、島岡という男だった。
初動の捜査では事件の発端になるものは
見つからず、通り魔事件ではないかという
見方に傾いた。

警察にとって通り魔事件ほどやっかいな
事件はない。岩倉とコンビを組んだ
捜査一課の顔見知りの刑事・田澤は、岩倉に
思わず「嫌な事件ですね」とつぶやく。

通り魔事件だとしても被害者にの身辺調査
は必要だ。田澤と二人で念のため潰すべき
事柄はすべて潰しておかねばならない。

捜査の過程で次第に明らかになる被害者の素顔。

そんな時、新たに殺人事件が起こる。
目黒中央署管内で発生した事件の被害者は、
シンクタンクに勤めつつ、経済評論家としても
テレビに出演している、藤原美沙という女性だった。

岩倉たちが島岡の女性関係を調べていると
藤原美沙と接点があることが浮上してきた!

その件を上司の柏木に進言したが、あくまでも
通り魔事件にこだわる柏木。

ところが捜査が進展し、二人の関係が明らかに
なると合同の捜査本部が設置された。
捜査本部内では岩倉の意見と捜査本部内の
意見が対立。岩倉は捜査から外されてしまう。

しかし、岩倉は逆にチャンスととらえ独自に
捜査を進める。
事件の真相が徐々に明らかになる中、
得体の知れない組織が浮上してきた。

岩倉が真相を突き止めようと必死に捜査する
過程で図らずも掘り当ててしまったもの・・・。
それは一体何なのか?
その不気味さにざわつく・・・。

タイトルの通り、迷走しそうな予感。

今回の上司・柏木は岩倉に対して何らかの
思いを抱いている。「うわ!器、小さい!」
と思ってしまった。出来る男は上司に煙たがられる。
その描き方が本当にリアル。

堂場作品ファンならば、多分すぐにわかる!
他のシリーズの登場人物が度々顔を出す。
(主にスマホの会話だけど)このおまけが良くて
毎回にやけてしまいます。

岩倉刑事の最初の相棒・伊藤彩香は機動捜査隊
に所属、頼もしく成長!さらに、今回
遠距離になった恋人・実里とはどうなるのか?

シリーズ4巻目が待ち遠しい!

『迷路の始まり ラストライン3』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋
価格:¥790(税別)

大人気!法医昆虫学捜査官第7弾「スワロウテイルの消失点」

昆虫の生態から、殺人事件の謎を解く!
「法医昆虫学捜査官」シリーズ第7巻は
「スワロウテイルの消失点」。

腐乱死体の解剖中、立ち会った刑事たちに
異変が起きた!
体中に赤い湿疹が発生し、出血と猛烈な痒みに
襲われた。感染症の疑いありというここで、
全員が隔離された。

しかし、解剖中に腐乱死体にわいた昆虫を
かき集めていた昆虫学者の赤堀は、
「蚊」の仕業だと断定。
しかも日本では発生していない、中国か
台湾にしかいない「小黒蚊」。
そんな蚊がなぜ遺体から発生したのか?
赤堀は、通常の昆虫の調査とともに「小黒蚊」の
出所を調べ始める。

一方、警視庁捜査一課所属で、赤堀のお目付け役
岩楯刑事は、高井戸署の機動捜査隊員・深水巡査部長
とコンビを組んで、腐乱死体の身元を突き止める。

慎ましい生活を送り、趣味で俳句を楽しみ、
俳句仲間から慕われていた老人がなぜ殺されたのか?

捜査の過程で浮かび上がってきた老人の素顔と
生活が激変するほどの幸運。
それは明らかに殺人の動機となった。

そして、赤堀が調査する「小黒蚊」の発生源だが、
赤堀をもってしても足取りがつかめない。

そんな時、つばめを愛する孤独な少年と出会う。
つばめを守るために天敵の烏を駆除していた
少年だった。赤堀はこの少年に危機感とともに
深い同情の念を感じる。
そして、つばめから小黒蚊の出所をつかんだ赤堀。
少年とともにつばめの巣を追う。

今作の赤堀も、女性なのに顔中昆虫だらけにして
遺体から昆虫を採取している。その
シーンを読むだけで、本当に鳥肌が立つ。
岩楯刑事はそんな赤堀を怒鳴りながらも、
自分の職務に忠実な姿勢に、益々信頼を深くしてゆく。

そして岩楯の相棒・深水は、妙に斜に構えて
いるが、仕事ができる。しかし、彼は何かを背負って
いるように見える。

それぞれの人間ドラマを描きつつ、事件の
捜査は進展してゆく。
そして、岩楯たちの捜査と、赤堀たちのつばめの
追跡が交差したとき、悲劇の真相につながってゆく。

心に闇を抱く人間の恐ろしさと浅ましさを
まざまざと見せつけられた。

昆虫学者が主人公の異色の警察ミステリー。
面白いです。

『スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官』』
著者:川瀬七緒
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)