東京湾臨海署安積班最新作「炎天夢」。悩む安積係長!

昨年から、1年の初めに読む本は今野敏作品だと
決めた。なので、買ってすぐには読まない。
年初めに読む本がなくなるから。
で、今年は大好きなシリーズ、安積班の最新作
を読んだ。

安積が、強盗傷害事件が片付いたあと、帰宅しようと
していたところへ管内で火事発生の無線が流れた。

強行犯第二係の相楽が率先して現場へ向かった。
ホッとしたところへ今度は海で死体が上がった
という一報が入る。

結局、帰ることをあきらめ、安積は、村雨たちを
現場に向かわせた。
村雨からの連絡で、殺人事件だと判明。
殺されたのは、グラビアアイドル・立原彩花。
須田の博学によって身元が判明した。

近くのプレジャーボートで被害者のものと思われる
サンダルが発見された。
船の持ち主は、被害者が愛人との噂がある芸能界の
ドン・柳井武春だった。

柳井には黒い噂が絶えない。芸能界への影響力も
大きかったため捜査本部では、柳井犯行説が
有力だった。

さらに、刑事部長の白河がこの捜査本部へ顔を
出した。多忙な刑事部長の臨席に誰もが驚く。
そんな中、白河刑事部長と柳井が非常に親しい
間柄であることが判明する。
白河の臨席は、捜査本部に圧力をかけるためなのか?

そして、継続捜査班から安積に柳井が関わった
13年前の事件について、再度柳井を聴取したいと
内々で頼まれる。

安積の前に幾重にも立ちはだかる捜査の壁。

しかし、安積は苦悩しながらも頼るべき
仲間に頼り、決して思い込みに流されず
公平な目で関係者に向き合う。

今回は、いつも安積を敵視していた相楽が
安積の捜査に協力してゆく。
安積に影響されたのか?相楽の変化も見逃せない。

そんな安積に、安積班のメンバーにいつも
元気をもらう。

2020年も気持ちよくスタート出来た!
感謝です。

『炎天夢 東京湾臨海署安積班』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,700(税別)

犯罪ミステリーの最高峰!『罪の轍』

今年話題の犯罪小説「罪の轍」を読みました。
昭和38年に起きた、「吉展ちゃん誘拐殺人事件」
をモデルに描かれた犯罪小説です。

昭和38年。アジアで初めて開催される
東京オリンピックの前年、東京は熱狂に
包まれていた。

二十歳の青年・宇野寛治は、北海道で
漁師の仕事を手伝いつつ貧しさと孤独、
そして蔑みの日々を生きていた。

ある日、寛治は漁師仲間の男に弱みを
握られたあげく、その男の奸計にはまり
海難事故にあってしまう。

数か月後、東京都荒川区で元時計商の
老人が自宅で殺害された。
警視庁捜査一課の落合刑事は、捜査の過程で
子供たちから北国訛りの青年の情報を得る。
やがて捜査線上に行方不明と思われていた
宇野寛治の存在が浮かび上がる。

その矢先、浅草署管内で小学1年生の
児童が誘拐される事件が起こる!
犯人の要求は身代金50万円。

警察は必死で児童と犯人を捜索するが
杳として行方が知れない。
警察の捜査を嘲笑うかのように逃亡を
続ける不気味な犯人の正体とは?

警察の度重なる捜査ミス、早期解決を望む
世間からの重圧、限られた時間の中で刑事
たちは極限まで追い詰められてゆく。
それでも警察一丸となって、
絶対に犯人をとらえ、
児童を親元に還すという強い思いが
ひしひしと伝わってくる。

そして刑事たちの執念の捜査で事件の
全貌が明らかになったとき、
言葉を失うほどの衝撃を受ける。
何が人間を犯罪者へと変貌させるのか?
なぜこんな悲劇が起こったのか?
描かれた真相の重さに胸が締め付けられる。

敗戦後すさまじい勢いで発展を遂げる日本。
しかし、貧富の差はやはり激しい。
オリンピックのために集められた労働力。
山谷と呼ばれる労働者の宿泊施設の実態や、
活動家と警察の攻防も臨場感たっぷりに
描かれる。

また、当時の警察組織についても詳しく描かれている。
未熟な誘拐事件捜査のため、ミスを重ねる警察。
逆探知などまだ導入されておらず、犯人の
声を録音しテレビで放送するという手段で
捜査を行っていた。

世間から置き去りにされた
一人の青年の孤独な魂の彷徨を、
緻密な心理描写と緊迫感あふれる圧倒的リアリティーで
描き切った、犯罪ミステリ。
その熱量のすさまじさが、行間からにじみ出ている!

『罪の轍』
著者:奥田英朗
出版社:新潮社
価格:¥1,800(税別)

底知れぬ悪意に翻弄される刑事たちを描く!『痣』

伊岡瞬さんの「代償」「悪寒」に続き
「痣」(徳間文庫)を読みました。
伊岡ワールド炸裂!面白かったです。

日頃あまり凶悪事件が起こらない、奥多摩分署管内で
全裸の女性冷凍殺人事件が発生した。
その被害者の左胸には特徴的な形の印が
遺されていた。

2週間後に退職する真壁刑事は、その印を見て
激しく動揺し困惑した。なぜならば、
真壁の亡くなった妻の「痣」と酷似して
いたからだ。

真壁の妻は殺害され、容疑者は死亡した。
事件は解決したとして、警察上層部は
事件の詳細にフタをした。

その判断に納得できない真壁は、奥多摩分署に
左遷され、くすぶっていた。
そんな中で起きた、女性冷凍殺害事件。

まさか、犯人は死んだはず。それとも真犯人は
ほかにいるのか?

そんな真壁をあざ笑うかのように次々と起こる
残虐な殺人事件。
真壁は、捜査一課時代の元上司に強引に
この連続猟奇殺人事件に駆り出される。

捜査の過程で、殺された女性の周りから
妻に関する遺留品が現れる。
真壁は何者かの強烈な「悪意」を感じつつ
真相に近づいてゆく・・・。

「痣」は、警察小説だが、ミステリー的要素が
際立っている。

主人公・真壁を追いつめる謎の設定。
それらが徐々に明らかになってゆく過程が
スリリングに描かれる。
クライマックスのどんでん返しには戦慄する!

「代償」「悪寒」「痣」と人間の底知れぬ
‘悪意’を様々な形で描く。凄い!!

ちなみに真壁刑事は「悪寒」にも登場。

『痣』
著者:伊岡瞬
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥710(税別)

渋すぎる!そこが魅力の警察小説「警視庁監察ファイル」シリーズ第1弾!

伊兼源太郎さんの「警視庁監察ファイル」シリーズ
第1弾「密告はうたう 警視庁監察ファイル」を
読みました。

シリーズ第2弾「ブラックリスト」を先に読んだけれど、
警察官にとっての警察という「監察」に焦点を
充てた、緊迫感あふれるストーリー展開と
渋みと凄みを感じさせる人物描写に魅せられてしまい
前作を読まねば~と思い読んだのでした。

警察職員の不正を取り締まる部署、警視庁人事
一課監察係に所属する佐良は、元同僚で、
現在は運転免許試験場に勤務する皆口菜子の
監察を命じられた。

皆口が免許証のデータを売っているらしいとの
密告があったのだ。

佐良は、捜査一課時代、皆口の婚約者・斎藤と
バディを組んでいた。
ところが、ある事件で斎藤は銃撃され亡くなってしまった。
佐良と皆口はその現場にいたのだ。

皆口は、本当にそんなことをしているのか?
佐良は疑問に思ったが、内部密告のため行確する
しかない。

佐良は、上司とともに皆口の尾行を開始すると
不可解な人物と会っていることがわかる。

やがて、佐良は自らも関わった未解決事件との
接点に気づく….。

皆口のデータ横流し事件の真偽を確かめるという
大筋の物語から、佐良と皆口が関わった
同僚殺人事件、さらに5年前の未解決事件へと繋がってゆく。

警察官、情報屋、誰が敵で誰が味方なのか?
スリリングな展開にどんどん魅せられる!

果たして、これらの事件はどう決着がつくのか?

新たな視点で描く、警察ミステリー

『密告はうたう 警視庁監察ファイル』
著者:伊兼源太郎
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥685(税別)

警察のタブーに斬りこんだ!『背中の蜘蛛』

誉田哲也さんに新作、「背中の蜘蛛」は、
読んでいる途中でトリハダがたってきました。

池袋署刑事課の本宮は、管内で起きた男性の
殺人事件を担当するが、有力な情報がなく
捜査は進まなかった。

そんなある日、小菅捜査一課長から、
秘かに、殺された妻の過去を調査する
よう命じられる。

捜査本部の命令系統から外れた小菅の指示に、
納得がいかない本宮だったが、
上司の命令に「NO」はない。
捜査本部とは別行動で、部下の二人を使い、
妻の過去を調べた….。

そして、事件はあっけなく解決する。

捜査一課長のアドバイスなのか?推理なのか?
ならばなぜ捜査本部を通さないのか?

本宮の心は疑問とともに後ろめたさが
膨らんでゆく。

違法薬物の売人を尾行中、その売人の爆殺に
巻き込まれ、負傷した警視庁組織犯罪対策部の
植木刑事。自分自身が負傷したことで、捜査の
行方も気になる。捜査は難航しているようだった。
ところが、高井戸署の佐古が掴んだ情報によって
事件は解決する。

植木は佐古に情報の出所を訪ねるが要領を得ない。
いったい、何が行われているのか?
植木はその真相を突き止めようとする!

事件解決に難航する捜査本部に突如
有力な手掛かりが….。
事件は解決したけれど?
何だかすっきりしない。

何かあると思うけれど一体何だろう?

読み込んでいくととんでもない展開が!
警察って本当にここまでやっているのか?

ドラマや映画の世界だと思っていたことが
実は本当に行われている!?

あまりにもリアル、驚きを通り越した警察小説!

『背中の蜘蛛』
著者:誉田哲也
出版社:双葉社
価格:¥1,600(税別)

刑事の執念を描く!「雨に消えた向日葵」

吉川英梨さんの描く警察小説。
シリーズものはほぼ全部読んでいますが、
単発ものは初めて手に取りました。

シリーズものとは一味違う警察小説です。

埼玉県坂戸市で、小学5年生の少女が失踪した。
少女の趣味はちょっと大人な漫画を描くこと。
その日も親友に頼まれて、漫画を描いていた。
ところが大雨で、学校から下校を促され、
豪雨の中、少女は一人歩いて帰った。

その姿が最後に目撃されており、現場には
傘が一本残されていた。

少女は周囲も思わず振り返るくらいの美少女。
姉の証言で、一か月前から現場と同じ場所で
不審な男につきまとわれていたことが判明。

誘拐か、家出か、事故か?県警捜査一課の奈良は、
少女の行方を追う。
捜査が進む中、中学生グループが少女に目をつけていたこと、
さらに電車内から少女の私物が発見されるなど、
有力な情報があがり、捜査は進展するかと思われたが…。

二転三転する証言、虚偽情報など、様々な情報
が錯綜し、有力な手掛かりが得られない中、
時間だけが過ぎてゆく。やがて、捜査本部は縮小された。
そんな中、奈良は一人捜査を続けた。

そして、焦燥にかられる被害者家族たちを
襲うさらなる悲劇!
詐欺被害、誹謗中傷、いじめ…。

被害者なのに、なぜこれほどまでの
仕打ちを受けるのか?

歪んだ社会、歪んだ正義、さらに弱者を
貶めようとする悪意。
心に闇を抱えた人間たちの本性が淡々と描かれる。

誰もがあきらめかけた、少女の行方を
追う刑事の執念の捜査とその生き様を
描いた、心が揺さぶられる物語。

『雨に消えた向日葵』
著者:吉川英梨
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)

衝撃の警察小説登場!「ブラックリスト 警視庁監察ファイル」

初読みの作家さん、伊兼源太郎さんの
「ブラックリスト」を読みました。
読んでいる途中で気がつきました。この作品には前作が
あるのでは?ということで、第1弾は、
「密告はうたう 警視庁監察ファイル」
(実業之日本社文庫 ¥685税別)です。
こちらから読むほうがおススメですが、
「ブラックリスト」面白いです!

このシリーズは、警察官や、警察職員の不正を捜査する
警察官にとっての警察という「監察」に焦点を充てた作品。

「ブラックリスト」の物語は、
捜査二課から大型特殊犯罪関連の捜査資料が流出し、
資料に名前のあがっていた、逃亡中の詐欺犯たちが
次々と変死する事件が起きた。

捜査資料は渋谷中央署から流出したという疑いがのぼり、
警視庁人事一課監察係の佐良と皆口は、内勤の刑事の
行確に入った。
だが、その朝二人は突如何者かに銃撃をされる!
しかも、その銃は弾の線条痕から2年前に起きた
警察官殺害事件に使用された銃と同じものだと判明!

2年前に殺害された刑事とは、佐良の相棒で、皆口の
婚約者だった斎藤だ。
二人は複雑な思いを抱え、捜査を続行する。

この銃撃は捜査妨害なのか?それとも….
何者かの脅迫なのか?

捜査資料流出事件の背後にあるものとは?
警察内部で何が行われているのか?

組織内部に蔓延る暗く深い闇も見え隠れする、
いったい、本当の黒幕はどこの潜んでいるのか?

作品全体に漂う緊迫感、サスペンスフルな展開、
そして「容疑者は全ての警察官」という一文に戦慄する!

渋みと凄みが効いた新たな警察ミステリー。

『ブラックリスト 警視庁監察ファイル』
著者:伊兼源太郎
出版社:実業之日本社
価格:¥1,700(税別)

「検証捜査」の兄弟編!「凍結捜査」

堂場瞬一さんの「~捜査」シリーズも大好きです。
「検証捜査」はほんとに面白くて、シリーズに
なって嬉しいです。
今回の「凍結捜査」はその兄弟版。北海道が舞台です。

函館中央署の保井凛は、ある事件の再捜査で
東京に呼ばれたときに知り合った、警視庁の
神谷とともに北海道で休暇を過ごしていた。

そこへ射殺体発見の連絡が入った。
休暇を中断し、現場へ向かった凛は驚く。
雪の中に横たわっている射殺体は、婦女暴行
の容疑がかかり、被害届がでていた
平田という男だった。

被害届を出したのは、水野珠希という女性だった。
凛は早速、珠希を訪ねた。しかし珠希は突然
姿を消したと言う。
一体どういうことなのか?

凛は捜査を続けるが、手掛かりはない。
また、珠希の行方も杳として知れない。

半年が過ぎた頃、東京のホテルで女性の
射殺体が発見された。警視庁の神谷が捜査を
担当すると、女性の身元が判明。
なんとその射殺体は、行方が知れなかった
水野珠希だった。

連続殺人事件なのか?凛も東京で神谷と
ともに捜査をすすめてゆく。

一向に見えてこない事件の真相。
読んでる方ももどかしい。
事件の筋がみえたのか?と思うとまた後退する。
この捜査の過程が非常にリアルに描かれている。

さらに、事件を通して凛の心に広がる未来への
不安や、凛を思う神谷の優しさも描かれる。

そんな思いを乗り越えつつ、巧妙に仕組まれた
重大犯罪に、熱き刑事魂を抱えたものたちが挑む。

読み応えのある、本格的警察小説!

『凍結捜査』
著者:堂場瞬一
出版社:集英社(文庫)
価格:¥880(税別)

支援課の苦悩を描く!「警視庁犯罪被害者支援課6不信の鎖」

大好きなシリーズです。
「警視庁犯罪被害者支援課」。
新作は、ブラック企業ハウスメーカーの
社長が主人公です。
かなりの波乱が巻き起こります!

2年前、ブラック企業として知られる
ハウスメーカーの社長・大崎の娘が殺害された。

支援課の村野は、その事件で被害者家族である
社長の大崎に寄り添うが、大崎は怒りを爆発
させるばかりで支援課は苦労した。

そして2年後、強盗殺人で山梨県警が逮捕した
男が、大崎の娘殺害を自供したと連絡が入った。

あまりにも意外な犯人の自供で捜査は急展開する。

そして村野たちは、再び大崎と向き合うこととなった。

警察を信頼できず、怒りにまかせて暴言を吐く
大崎にまたもや振り回される村野。

さらに支援課内部でも問題が生じていた。
以前から支援課に不満を抱いていた長住が、
この事件を執拗に追う記者と不審な接触
図っていたのだ。

最も傲慢な犯罪被害者は守るべきか否か….。
悩み続ける支援課、そして村野。

今までにない被害者家族と向き合う村野たち。
それでも絶対に挫けず己の職務を全うする
彼らの矜持に心を打たれた。

また、今作品、今まで以上にミステリー色が濃い。
クライマックスの展開に目を瞠る!

読み応え十分の警察小説!

『警視庁犯罪被害者支援課6 不信の鎖』
著者:堂場瞬一
出版社:講談社(文庫)
価格:¥840(税別)

北海道警シリーズ最新作が切ない!「真夏の雷管」

大好きな警察小説シリーズです。佐々木譲さんの
「北海道警・大通警察署」
「笑う警官」から、シリーズ8作品目は「真夏の雷管」。

夏休みに入った。
いつもの場所で、憧れの列車・特急スーパーおおぞらを
見送った少年。
そこで一人の男性と出会った。彼は鉄道好きらしい。
その男性は、小樽の鉄道博物館に連れていってくれるという。
夏休みだし、少年は嬉々として男性の提案に従った!

大通署生活安全課の刑事・小島百合は、老舗の
模型店で工具を万引きした男子小学生を補導した。
妙に冷めた小学生だ。
署で話を聞こうと連れて行ったが、ちょっと目を離した
隙に逃げられてしまう。

一方、刑事課の佐伯宏一は、園芸店の窃盗犯を追っていた。
盗まれたものは爆薬の材料にもなる化学肥料の袋だった!

男子小学生の万引き事件、園芸店の窃盗事件。
二つの事件は交錯し、想像をはるかに超えた
危険な方向へと動き出してゆく!

必死に生きようとする人たちを絶望の底に追いつめる。
貧困・育児放棄・孤独、社会からの隔絶…..。
現代社会が抱える闇が、いくつも浮かび上がる。

そこから導き出された事件の真実があまりにも切なすぎる!
心に沁みる傑作。

『真夏の雷管 北海道警・大通警察署』
著者:佐々木譲
出版社:角川春樹事務所(文庫)
価格:¥720(税別)