驚異のデビュー作!探偵小説にニューヒロイン誕生「虚の聖域」

すごい新人さんが出ました!
元警察官の松嶋智左さんが描いた、
『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』は
第10回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作です。

ある事件を起こし、警察を辞めた梓凪子は、
小さな探偵事務所の調査員になっていた。

そんな凪子の元へ調査の依頼が舞い込んだ。
それは、姉・未央子からの依頼だった。
女手一つで育てた息子・輝也がビルの屋上から転落して
亡くなった。その事件を調べて欲しいと言うのだ。
犬猿の仲の姉・未央子の依頼は断りたかったが、
凪子にとっては、たった一人の「甥」のこと。
仕方なく調査を始めるのだった。

警察では自殺と判断されていた。
しかし、学校でイジメがあったかも知れないと
判断した凪子。学校で調査をするが、教師らは酷く冷淡だった。

そんなある日、凪子は凶器をもった男たちに襲撃される。
ただのいじめによる飛び降り自殺ではないと確信した凪子は、
事件の背後に隠された真相を暴く決意をする。

決して責任を認めない学校側、なにかを隠している姉。
なぜか不可解な行動を繰り返す輝也の同級生・・・。
事件を解く鍵は、彼らの「無言」の中にしっかりと
横たわっている。それをどう起こしてゆくのか?

ハードボイルドタッチで描かれているが、凪子の過去や背景が
しっかりと描き込まれていて、ただただかっこいい女性探偵もの
とは違うイメージ。そんな凪子にシンパシーを感じてしまった。

事件の背景は「中学生の死」。いじめがテーマなのかと思い
読み進めると、全く違う展開を見せる。
謎の提示とストーリー展開が非常に上手く、最後の最後まで
何が起こるかわからない!
ミステリー小説として充分堪能できた!

探偵小説にニューヒロイン誕生。
ぜひシリーズ化してほしいと思う。

『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』
著者:松嶋智左
出版社:講談社
価格:¥1,700(税別)