ストーカー犯罪対策室の活躍をリアルに描く「SCSストーカー犯罪対策室」

最恐のストーカー「リカ」シリーズで
ストーカーの恐しさを描き切った五十嵐貴久さんの
「SCSストーカー犯罪対策室」を読みました。

様々な形のストーカー事件を短編で描きつつ、
主人公である、SCSの捜査員・白井有梨に
つきまとうストーカーの正体を暴くというストーリー。

新品川署ストーカー犯罪対策室には、日々
多くのストーカー事案が寄せられる。

不倫の果てに、女性相談者が殺害された事件。
その裏には意外なからくりがあった。

仕事中に突然何者かの声が聞こえる!
誰かに監視されている!と訴える男性。
誰もが鬱病のせいではないかと推察したが・・・。

地下アイドルから、人気ドラマの主役に
抜擢された女優に届く、ストーカーからの
脅迫状・・・。

老人ホームで繰り広げられる、老女たちの
諍い。それは一人の紳士を巡る醜い争い。
園内での解決をすすめるが、やがて・・・。

あるOLが、元カレにストーキング
されていると訴えてきた。
自分の行動をすべて把握しているらしい。
SCSは彼女の周辺を警護するが。

内閣閣僚の女性政治家に届く脅迫状。
それは、先進七か国の女性政治家の
会合を中止しなければ家族に危害を加える
という内容だった。対策室は頭を抱える。

女子高生が体育教師にセクハラされたと
訴えてきた。女子高生のスマホに残された
メッセージは教師がストーキングしている
ことを物語っていた・・・。

捜査員・白井有梨は「S」という人物から
行動のすべてを把握されていた。
監視されているとしか思えないタイミングで
送られてくるメール。
「S」とはいったい誰なのか?同じ
SCSの捜査員なのか?
有梨は、疑心暗鬼に陥る。

常にだれかに見られている恐怖。
警官であってもその恐ろしさは変わらない。

これらの物語を読むと、誰もがストーキング
される可能性があるということがわかる。
自分自身の行動が何かの引金になるかも
知れない。その怖さを思い知った。

白井有梨のストーカーの正体を突き止める
過程の面白さは際立っている。
じわじわとその正体が判明してゆくくだりは鳥肌ものだ。

数々のストーカー事案を臨場感たっぷりに
描き出した、本格的警察小説。

『SCSストーカー犯罪対策室 上下』
著者:五十嵐貴久
出版社:光文社(文庫)
価格:上下各¥720(税別)