さまよい続ける霊を真実で癒す。「霊視刑事 夕雨子1」

「むかしむかしあるところに死体がありました」で
ミステリーファンの心を鷲掴みした、青柳さんの
文庫新刊「霊視刑事 夕雨子1」を読みました。

霊視というと少しホラーっぽくなりがちですが、
この作品はあまりホラー色が強くなくて、
この世に心が残ってしまい、成仏できない
人たちの霊を癒す物語で、読んでいるほうも
癒されました。

中野署の新人刑事大崎夕雨子は、小さいころから
この世に未練をある霊と会話が出来るという
特別な能力があった。
祖母からもらった色あせたストールを巻いている
時だけは霊の気配は感じられない。

刑事課に配属された夕雨子の相棒は、
本庁の捜査一課から異動になった、
辣腕女性刑事・野島友梨香。
夕雨子は早速パトロールに連れ出された。
野島には何かありそうだ・・・・。

友人が働くエステに行ったとき、ストールを
はずした。そのとたん冷気を感じた。
男性の霊が夕雨子をじっと見ている。
その男性の霊は、夕雨子の友人に殺されたと
訴えてきた。なぜ殺されたか真相が知りたいと。
夕雨子は野島に相談し、早速捜査を開始する・・・・。

ベテラン刑事・シンさんこと杉山信一郎の
同期だった岡沢竜造警部が亡くなった。
夕雨子たちも葬儀に参列。たまたまストール
をはずしていたせいで、岡沢の霊に話かけられた。
岡沢は以前シンさんとラーメン屋の店主が
殺害された事件を捜査した。容疑者と思われる
人物があがったが、証拠がなく結局迷宮入りに
なってしまった。
その事件が気がかりで成仏できない・・。
ということで、野島とシンさんと3人で当時
容疑者だと思われていた男に再度会いに行く。

公園で爆発事件が起きた。しかしそれは序の口で
なんとデパートにも爆弾が仕掛けられていた。
野島と夕雨子はすぐさま現場へ。
しかし、そこには本庁の捜査一課がすでに臨場し、
夕雨子たちは邪魔者扱いされる。特に野島に対する
態度はひどかった・・・。
犯人からはなぞなぞをかけられ、答えを見つけないと
大変なことに!必死になる夕雨子。そこで
デパートのコンシェルジュという女性に声を
かけられる・・・・。

通勤途中でひき逃げ事件の現場に居合わせた
夕雨子は被害者とともに救急車に同乗する。
救急隊員が必死に救助するが、被害者の
男性の霊が現れ、自分は会社に殺されたと
言う。どうしてもひき逃げ事件の真相を
暴いてほしいと頼まれ、夕雨子は被害者の
話を聞くことに・・・。

意外な犯人像、驚嘆する真実、暗号解読
のような事件、心揺さぶられる真相・・・。

夕雨子たちが解決した事件の真相は、
この世に想いを残した霊たちの心を救う。
霊たちの心残りが消えて、光に満たされ
旅立ってゆくシーンは感動的だ。

そして夕雨子と野島のコンビがとても良い!
二人にはそれぞれに抱えた思いや過去がある。
シリーズは始まったばかり。
次回作が待ち遠しい!!!

『霊視刑事 夕雨子1誰かがそこにいる』
著者:青柳碧人
出版社:講談社(文庫)
価格:¥680(税別)