日本初の女性海保潜水士の勇気と挑戦を描く!「海蝶」

「53教場」「警部補・原麻希」「東京水上警察」
「十三階の女」シリーズなど大人気の警察小説
を描く、吉川英梨さんの最新刊
「海蝶」(講談社)を読みました。

女性初の海保潜水士「海蝶」の活躍と成長を描く物語。
2年にわたり、海上保安庁を取材。
この作品を描きたいという吉川さんの並々ならぬ
情熱が伝わってくる、熱い熱い作品です。

中学生の時、東日本大震災で母を失った忍海愛。
父親も兄も潜水士という家庭で育ち、
いつしか、海保潜水士を夢見るようになる。
しかし、父からも兄からも潜水士になることを
反対されていた。

だが、愛は決してあきらめることなく無事に
潜水士となり、周囲の期待に応える。

愛の理解者はただ一人、震災後に母を探し
求めていた時に出会った、海保潜水士・八潮。
チームの中で、唯一愛のバディを引き受けて
くれた。

メディアからも注目された、初の業務は、
沈没した漁船の捜査だ。
乗組員の女性はすでに救助され、愛の父の元で
保護されていた。
しかし、その女性は記憶喪失で
沈没の原因や船の名称などわからず、
海に潜って調べるしかなかった。

ところが、愛は潜水中バディの八潮に連絡する
ことなく勝手な行動をしてしまう。
そして、まだ完全に沈没しきっていない船の中に
閉じ込められてしまうのだった・・・。

男性ばかりの職場で、ただ一人女性が
働くということの厳しさや、そんな職場で
女性に対し戸惑う男性の姿も非情にリアルに
描かれていて、危険が伴う職場での
任務の厳しさよりがいっそう強く伝わってくる。

また、沈没船を巡る謎は、サスペンスミステリー
として読みごたえ満点で、終盤のどんでん返し
には目を見張る!

愛の勇気と覚悟、家族の絆、母の言葉
父の思い、兄の気持ち・・・。
そして潜水士としてのプライド。

読み進むごとに、涙があふれそうになり、
ラストシーンの素晴らしさは言葉にならない。

この本のテーマである「正義仁愛」の
の本質を描いた、この秋最高に感動する傑作。

『海蝶』
著者:吉川英梨
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)

さまよい続ける霊を真実で癒す。「霊視刑事 夕雨子1」

「むかしむかしあるところに死体がありました」で
ミステリーファンの心を鷲掴みした、青柳さんの
文庫新刊「霊視刑事 夕雨子1」を読みました。

霊視というと少しホラーっぽくなりがちですが、
この作品はあまりホラー色が強くなくて、
この世に心が残ってしまい、成仏できない
人たちの霊を癒す物語で、読んでいるほうも
癒されました。

中野署の新人刑事大崎夕雨子は、小さいころから
この世に未練をある霊と会話が出来るという
特別な能力があった。
祖母からもらった色あせたストールを巻いている
時だけは霊の気配は感じられない。

刑事課に配属された夕雨子の相棒は、
本庁の捜査一課から異動になった、
辣腕女性刑事・野島友梨香。
夕雨子は早速パトロールに連れ出された。
野島には何かありそうだ・・・・。

友人が働くエステに行ったとき、ストールを
はずした。そのとたん冷気を感じた。
男性の霊が夕雨子をじっと見ている。
その男性の霊は、夕雨子の友人に殺されたと
訴えてきた。なぜ殺されたか真相が知りたいと。
夕雨子は野島に相談し、早速捜査を開始する・・・・。

ベテラン刑事・シンさんこと杉山信一郎の
同期だった岡沢竜造警部が亡くなった。
夕雨子たちも葬儀に参列。たまたまストール
をはずしていたせいで、岡沢の霊に話かけられた。
岡沢は以前シンさんとラーメン屋の店主が
殺害された事件を捜査した。容疑者と思われる
人物があがったが、証拠がなく結局迷宮入りに
なってしまった。
その事件が気がかりで成仏できない・・。
ということで、野島とシンさんと3人で当時
容疑者だと思われていた男に再度会いに行く。

公園で爆発事件が起きた。しかしそれは序の口で
なんとデパートにも爆弾が仕掛けられていた。
野島と夕雨子はすぐさま現場へ。
しかし、そこには本庁の捜査一課がすでに臨場し、
夕雨子たちは邪魔者扱いされる。特に野島に対する
態度はひどかった・・・。
犯人からはなぞなぞをかけられ、答えを見つけないと
大変なことに!必死になる夕雨子。そこで
デパートのコンシェルジュという女性に声を
かけられる・・・・。

通勤途中でひき逃げ事件の現場に居合わせた
夕雨子は被害者とともに救急車に同乗する。
救急隊員が必死に救助するが、被害者の
男性の霊が現れ、自分は会社に殺されたと
言う。どうしてもひき逃げ事件の真相を
暴いてほしいと頼まれ、夕雨子は被害者の
話を聞くことに・・・。

意外な犯人像、驚嘆する真実、暗号解読
のような事件、心揺さぶられる真相・・・。

夕雨子たちが解決した事件の真相は、
この世に想いを残した霊たちの心を救う。
霊たちの心残りが消えて、光に満たされ
旅立ってゆくシーンは感動的だ。

そして夕雨子と野島のコンビがとても良い!
二人にはそれぞれに抱えた思いや過去がある。
シリーズは始まったばかり。
次回作が待ち遠しい!!!

『霊視刑事 夕雨子1誰かがそこにいる』
著者:青柳碧人
出版社:講談社(文庫)
価格:¥680(税別)

面白すぎる!「エアー2.0」

「巡査長真行寺弘道」シリーズの著者、
榎本憲男さんの「エアー2.0」を読みました。

東京オリンピック開催の2020年が舞台!
著者が予想した2020年はこうなっている?
近未来的経済サスペンス。
真行寺弘道を読んで、いつも凄いと思って
いたけれど、「エアー2.0」も発想が凄すぎて
面白すぎる!

中谷は、新国立競技場の建設現場で、
不思議な老人と出会う。
誰が見てもとても肉体労働が似合うよう
には見えず、なぜこんなところにいるのか
理解に苦しんだ。
やがて老人は首になるが、辞める直前に
大穴馬券を中谷に託した。

そして、老人が辞めた直後に建設現場では
爆発が起こり、馬券は見事に大当たり!

大金は手にしたが、その大穴馬券のバックには
ヤクザがついており、中谷はヤクザに
追われることに!
無事に逃げ切った中谷の前に老人が現れる。

老人が開発した「エアー」。
世の中の空気を読んで数値化し、完璧な
市場予測を可能にするシステム。
そのシステムは国家予算を潤すほどの巨額な
利益をもたらすものだった。
やがて、中谷は老人の壮大な計画に取り込まれてゆく。

大穴馬券が的中したからくり、
不思議な老人とはいったい何者なのか?
そして、老人はこの日本で何をしようとしているのか?
数々の謎を提示しつつ、物語は進む。

それと同時に、破綻しつつある資本主義に
ついて、経済に詳しくない者でさえきちんと
わかるように解説がなされてゆく。

さらに、日本政治の内幕にも鋭く斬り込んでいる!

老人の壮大な計画とは・・・?
エアーシステムの導入で新たな経済システムが
構築されるのか?

読んでいると、ワクワクするような過程が描かれる。
本当にこんなことは可能なのだろうか?
エアーがきちんと稼働すれば、綱渡り状態の
経済システムから脱却できるのではないか?

様々なことを考えさせられ、今回も学ぶことが多かった。

破格の面白さで描かれた、経済小説。

『エアー2.0』
著者:榎本憲男
出版社:小学館(文庫)
価格:¥770(税別)

急転直下!衝撃的すぎる!『紅霞後宮物語 第十一幕』

後宮小説でいま一番ハマっているシリーズの
最新刊、「紅霞後宮物語第十一幕」を読みました。
ありえない展開がもう衝撃的すぎる!

新たな皇族の官吏として登用した茹王。
併せて彼の長女も後宮に入ることになった。
しかし、長女は病死しその代わりに庶子である
妹の茹仙娥を新たな妃嬪として迎えることになった。

文林は、「茹仙娥には手をださない」と
小玉に約束していたのに、茹仙娥が懐妊した。
後宮中は慌ただしい雰囲気に包まれる。

文林は懐妊の件で小玉に弁明に来ることはなかった。
釈然としない小玉。

そんな中、紅霞宮では小玉と女官たちを
謎の体調不良が襲っていた。
療養のため、都を出た小玉たちと入れ替わりに
尚宮の徐麗丹が紅霞宮に入り、原因究明に乗り出す。

姉の代わりに妃嬪として迎えた茹仙娥。
美しすぎる悪女顔に、誰もが疑心を抱いていた。

徐麗丹も、もしかすると紅霞宮の謎の病の
原因は茹仙娥の仕業ではないかと疑ったが、
確実な証拠もなく、じりじりと時間だけが
過ぎていった。

さらに、療養地から都・・・。距離が離れて
いる分、小玉と文林の間の溝も深まってゆく・・・。

また、隣国の寛国皇帝の寵姫である梨妃の
奸計で、康国にただならぬ動きが出始める。
彼女の野心が、文林治める宸国にどのような
影響を与えるのか?

そして、小玉を襲ったありえない事態!!!
思わず本を落としてしまったほどの衝撃!

大波乱の展開になった今作。
十二幕が待ちきれない!

後宮小説の傑作シリーズ!

『紅霞後宮物語 第十一幕』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫(KADOKAWA)
価格:¥600(税別)

映画館で映画を観たくなった・・・。『任侠シネマ』

今野敏さんの「任侠」シリーズの最新刊が
出ました!!
「任侠書房」「任侠学園」「任侠病院」
「任侠温泉」に続く、第5弾「任侠シネマ」です!

一本筋の通った任侠道で、数々の組織を
建て直してきた、阿岐本組。
今度は、映画館の建て直しに奔走する!?

阿岐本組組長の弟分・永神がまたしても
仕事を持ってやってきた。
阿岐本組の代貸・日村は心の中でため息をつく。

永神は、映画館の建て直しに力を貸してほしい
と阿岐本に頼み込む。
その映画館は、不動産会社が経営しているが、
映画館の客足が遠のき、営業が難しく
なっているため、閉館しようとしていた。
ところが、その映画館のファンクラブが
閉館を反対しているとのことだった。
不動産会社の社長も、映画館を閉館してしまうのは
残念だと思っているようだ・・・。

阿岐本はその社長に会って話を聞くことに。

社長の話を聞いたあと、阿岐本は日村を誘って
リバイバル上映されていた、高倉健の任侠
映画を観る。
映画館で映画を観るのはいいもんだよな~とつぶやく。
日村は映画館で映画を観たことがなかったが、
健さんの映画にどっぷりはまってしまった。

映画館は素晴らしい。建て直すところはない。
では何が問題なのか・・・・?

この問題を解決したのは、今までパソコンに
しか興味がなかったテツの言葉だ。
テツは不器用な言葉で阿岐本や日村に訴えかける!
このテツの言葉が心を打つ!!!
素晴らしい!泣ける!思わず泣いた。
「形だけのイベントなんてやっても人は集まらない。
やっている人が楽しいと思わないとだめなんだ!」

いつものように、やっぱり悪い奴は登場するが、
今までの任侠シリーズと一味違う「任侠シネマ」だ。

また、暴対係なんだけど頼りない甘糟刑事が
今回はちょこちょこ顔を出す。
新しい係長が非常にヤクザに厳しいのだ。
お店にヤクザと関わるなと過度な指導をしたせいで
阿岐本組の面々はご飯にありつけない。
配達してもらえないからだ。
そんな中でも、阿岐本組に世話になった大将たちが
新参者の暴対係の係長など無視して配達してくれる
シーンはじ~んとする。

やっぱりこのシリーズはほんとに面白い!
どのシーンも爽快な気分にさせてくれる。
そして、読み終わった後、無性に映画館に
行きたくなりました。

『任侠シネマ』
著者:今野敏
出版社:中央公論新社
価格:¥1,500(税別)

美貌の元弁護士が難問を解決!「合理的にありえない」

「検事・佐方貞人」シリーズや「孤狼の血」、
「盤上の向日葵」「慈雨」次々とヒット作を生む
柚月裕子さんの文庫新刊「合理的にありえない」
を読みました。

5作の短編を収録。
短編での凝縮された面白さが際立っている!

ある事件で、弁護士資格を剥奪された
上水流涼子は、頭脳明晰な貴山を助手に
探偵エージェンシーを立ち上げた。

請け負う仕事は、ちょっとヤバそうな
仕事。しかし傷害と殺人は絶対に受けない。
それがルールだ。

「確率的にありえない」は、
未来が見えると言い切る怪しげな経営コンサルタントに
騙される、会社社長の物語。
涼子と貴山のコンビがそのコンサルタントに仕掛けるが。
最後に涼子が会社社長に言った一言にハッとする。

「合理的にありえない」は、
バブル期に儲けた資産で悠々自適の生活をおくる夫婦。
しかし、妻の金遣いが荒くなり、夫は激怒。
妻はいったい何にお金をつぎ込んだのか?
夫婦とは何かを考えさせられる。

「戦術的にありえない」は、
賭将棋で必勝を期すヤクザが登場。ここは貴山の出番。
どのような手を使って、勝たせるのか?
ハラハラドキドキワクワクの展開が待っている。
「盤上の向日葵」に賭将棋のシーンがある。
繋がっている~とうれしくなった。

「心情的にありえない」は、
上水流涼子が、弁護士資格をはく奪された過去と
貴山との出会いが描かれる。
上水流がなぜ弁護士資格をはく奪されたのか?
その謎にも迫り、ミステリーとして読みごたえがある。

「心理的ありえない」は、
野球賭博に絡んだトラブル。「弧狼の血」で
暴力団の抗争を描いた著者だからこそ描けた
ギャンブルの闇。賭け方の詳細が非常にリアル。
この回も貴山の仕事が際立っている!

美貌の元弁護士と切れ者の助手のコンビが、
クールにスタイリッシュに、そして時に非情な
手段で依頼人からの難題を解決してゆく。

殊に欲にまみれた輩や人の痛みがわからない
輩への仕掛けは容赦がない。

読後の爽快感が半端ない!著者の魅力が全開の
痛快エンターテインメント小説。

『合理的にありえない 上水流涼子の解明』
著者:柚月裕子
出版社:講談社(文庫)
価格:¥700(税別)

益々面白くなる、「後宮の烏3」

段々と面白くなってきた白川紺子さんの
「後宮の烏」。シリーズ第三弾を読みました。

烏妃暗殺を目論んだ、烏漣娘娘が恐れる
「梟」とは何者か?
その「梟」が残した羽根に自らの行く末を
重ねる寿雪。

「烏妃は一人で在るもの」という烏漣娘娘
の言いつけに背き、寿雪の周りには
寿雪を慕う者たちが集まってきている。
しかし、寿雪は虚しさから逃れることが
できないでいる。

ある日、寿雪のもとへ泊鶴宮の妃・鶴妃の
侍女が訪ねてくる。
雨の夜にやってくる、幽鬼を追い払って
ほしいという。
寿雪は侍女から詳細を聞くと心がざわつく。
なにかよからぬことが起こるのではないか….?

この事件を皮切りに、不可思議な事件が
次々と起こり、やがて、政治的な思惑に
絡めとられてゆく。

そしてそのことが寿雪を追い詰めてゆく。

2巻までは、宮城内部の事件を中心に
描かれていたが、3巻からは次第に
外へと事件が広がり、スケールが
大きくなってゆくようだ。

寿雪を慕う鶴妃だが、彼女の一族は
不穏な空気を漂わせている。
また怪しげな「八真教」なるものも出現し
高峻や寿雪を悩ます。

また3巻では、寿雪と衛青のつながりにも
驚かされたり、護衛の温螢の寿雪に対する
忠誠心にキュンとなったりと読みどころ満載だ!

そして高峻は、寿雪を「烏」から開放する
一筋の光明を見出す!!!

寿雪の運命はどう動くのか?
4巻が待ち遠しい~~。

『後宮の烏 3』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥610(税別)

江戸の少女たちが大活躍!「大江戸少女カゲキ団」

「大江戸少女カゲキ団」、ミステリーでは
ありませんが、読んであまりにも可愛くて健気な
少女たちの心意気に感動したので、紹介しちゃいます。

時は江戸中期、庶民の娯楽といえば芝居見物。
歌舞伎は大流行している。

役者だった父と、父の追っかけを
やっていた母との間に生まれた芹。
芹は幼いころ、父のもとで芝居の稽古
に励んでいた。
しかし、あることがきっかけで芝居や
踊りからすっかり遠ざかってしまう。

芹はこの時代の女の子にしてはかなり
背が高い。そのこと気にしていた。
女中として働いている「掛け茶屋まめや」
のおかみさんは、そんな芹を毎日
励ましてくれる。

ある日、芹は久しぶりに心の中で師と仰ぐ
東花円の稽古所を覗いた。
そこには、大店のお嬢さんたちが、花円に
怒鳴られながら稽古の真っ最中。

それを見た芹は、自分だってお金を払えば
師匠に弟子入りできるのに…

心に広がる嫉妬心。踊りを捨てきれず、
花円の稽古を覗いては、一人道端で稽古を
繰り返す芹だった。

しかし、お金をかけて立派な師匠に学んでも
一向に上手にならないお嬢さんたちもいる。

父の呪縛から逃れられず、悶々と日々を送る
札差しの娘・才。
茶問屋・駿河屋の娘・奈加は、稼業が厳しくなり
稽古どころではない。
才にあこがれる、魚屋の娘・紅。
あまり稽古に熱心でないが、才のあとを追いかけている。

そんな4人の女子たちが出会い、一つのことを
やり遂げようとする。
最初は喧嘩ばかりしていた4人だったが、
やがて、思いは一つとなり目標に向かって
ただひたすら精進するのだ。

読んでいてなんだか胸があつくなった。
自分がこの娘たちと同じ年ごろ、こんなに
一生懸命何かに没頭したことがあっただろうか?

そう思うと、彼女たちのがんばる姿に
思わず応援したくなった。
とってもとっても素敵な作品。

「着物始末暦」シリーズの中島要さんの
新シリーズ。
次回作、期待しています!!

『大江戸少女カゲキ団』
著者:中島要
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥640(税別)

皇后になるまでの関小玉を描く第4弾「紅霞後宮物語 第零幕四」

「紅霞後宮物語」の本編も非常に面白いけれど、
皇后・関小玉の若き時代を描く、「零幕」
シリーズも凄く面白い。
大好きなシリーズ。

兄の代わりに武官となり、いまや閣下と
呼ばれるほど偉くなった小玉は、
母が亡くなり、やっと休暇をとり
義姉の三娘(さんじょう)と
甥の丙のいる実家へと戻った。

そこへ、従卒の清喜も休暇をとってやってきた。
そしてちゃっかり居ついてしまう。
清喜の人柄からか、母を亡くした悲しみを
まぎらすことができた3人だった。

ところが、そこへ副官の文林までやってきた。
三娘は、小玉に対する文林の接し方を
見ていぶかしむ。文林は小玉に好意を
抱いているのでは・・・・と。

そんなとき、とんでもない事件が起きる。
小玉のかつての許嫁がまたまた求婚して
きたのだ。
妻が死んで本当に好きだったのは小玉だったと・・・。

小玉からすればそんな勝手な言い分は通らない
自分を捨てて、金持ちの令嬢と結婚し、
小玉が村から出ることになった原因を作った男だ。
決して復縁はない。
ところが、小玉が首をたてに振らないならと
いうことで強行突破に出たのだ!
いきなり結婚式!?
しかも村ぐるみで。

怒り狂った小玉は、家族皆で都へ出る決心をする。

そして、三娘は子どもの頃に出会った占い師の
言葉を思い出す。小玉を見た占い師は、
「あの娘は、やがて高き御位にのぼるだろう」
と言った。

占い師の予言は実現し本編では、小玉は皇后となるが…。

小玉の恋の変遷と、家族の絆、そして…。
コメディタッチで描かれるが、今回は切ない展開が
心に響く。

続きが気になる、はまる面白さ。
次回の展開はどうなる!!

『紅霞後宮物語 第零幕四 星降る夜に見た未来』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫
価格:¥620(税別)

心に刻まれる1冊「あしたの君へ」

「検事・佐方貞人」シリーズや「孤狼の血」、
「盤上の向日葵」「慈雨」など、読後
いつまでも余韻が残る作品を描く、柚月さん。
文庫新刊「あしたの君へ」を読みました。

家庭裁判所調査官補、望月大地が、事件を
通して成長してゆく姿を描く。

九州の福森家裁に配属された、望月大地。
研修期間中、大地は数々の事件の調査を
担当する。

女子高生の窃盗事件から、その少女に
架された悲劇を知る。

男子高校生が、同級生の女子生徒に
ストーカー行為を行ったとして逮捕されたが….。

小学生の息子の親権争いで揉める夫婦。
そこには意外な事実が….。

面接をしても心を開いてくれない相談者
たちを相手に、苦悩し続ける日々。

先輩たちの人に寄り添う言葉に大地も次第に
前を向く。

彼らの事件を丹念に調査してゆくことで、調書や
面接だけでは把握出来なかった、隠された真実が
浮かび上がる…。

「人に迷惑をかけることと、助けを求める
ことは違う。人に助けを求めることは悪い事
じゃない。むしろ生きていく上で必要な事だ」

がつんと頭に響いたひと言だ。

人は誰でも複雑な思いを抱えて生きている。
もしそれが、事件という形で表に出てしまったならば
それは、「助けて」のサインではないだろうか?
読んでいてふとそう思った。

日頃、忘れがちな、人として大切なことを
思い出させてくれるそんな作品だ。

『あしたの君へ』
著者:柚月裕子
出版社:文藝春秋
価格:¥640(税別)