一部松江が舞台の企業サスペンス!「黒い紙」

三十年前に宍道湖に当時ロシアの最新鋭機
が不時着水した事件を調査するという、
堂場瞬一さんの企業サスペンス小説
「黒い紙」(角川文庫)を読みました。
本作の発表は2016年。
地元住民として松江の描写にワクワク~~~。

企業のリスクマネジメントを請け負う会社
「TCR」に勤務する、元捜査一課の刑事・
長須恭介。警官だった父の突然の死から
立ち直れずにいた。

そんな頃、「TCR」のクライアントである
大手総合商社・テイゲンに旧ソ連との不適切な
関係を指摘する脅迫状が届く。
現会長の糸山が、30年前旧ソ連のスパイ活動を
行ったというものだった。
警察には絶対に知られたくないテイゲンは、
事件解決を「TCR」に委ねる。

30年前、宍道湖に当時ロシアの最新鋭機
「Su-25MM」が不時着水した。
機体はボロボロ。搭乗していたパイロットは
アメリカに亡命した。

その詳しい調査をするために、長須は同僚の
元弁護士・境美和とともに松江に向かった。
そこで、ロシア人のパイロットが立ち寄った
とされる喫茶店を訪ねるが・・・。
あと少しで松江での調査に動きが出るというとき、
会社から呼び戻される。

最初の脅迫に続き、犯人からは、現金10億円
を要求する脅迫状が届いていた。

長須は、クライアントの利益と元刑事という
立場での正義の間で苦悩し葛藤する。

松江の描写は読んでいて、想像するのが
楽しかった。
蔦の這うカフェ、県庁近くの新聞社、
昔からある松江の有名な洋食屋・・・・
松江に住んでいれば「あ、あの店だ!」
とすぐにわかり思わず嬉しくなる。

巨大企業の闇・・・。
一人の人物に権力が集中すれば起こるべきこと。
そのために理不尽な人生を強いられた人たちの
苦しみ、悲しみ、くやしさが描きだされる。

そしてこの事件解決をきっかけに、長須が
一皮むけ一歩前に進もうとする姿も描かれ、
企業サスペンスでありながらも、登場人物の
人間ドラマに心を揺さぶられた。

『黒い紙』
著者:堂場瞬一
出版社:KADOKAWA
価格:¥880(本体¥800+税)

料理も謎解きも一級品!シリーズ第3弾「マカロンはマカロン」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
ビストロシリーズ第3弾「マカロンはマカロン」
を読みました。

商店街の小さなフレンチ・レストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?
シェフを慕うスーシェフの志村。
ワイン好きが高じてソムリエになった
紅一点・金子、そしてギャルソンの高築。

・コウノトリが運ぶもの
フランス料理と和解したい・・・と
「パ・マル」にやってきた、自然食品を
扱うお店の女性店長。
なにやら理由がありそう。
シェフの三舟は静かに彼女の話に耳を
傾ける。

・青い果実のタルト
ある日、パ・マルに来店したお客さんから
ブルーベリーのタルトを注文された。
パ・マルは、そのタルトは焼いていない。
不思議に思ったスーシェフの志村が
SNSを見ると、パ・マルのブルーベリーの
タルトがおいしいとブログに写真つきで
掲載されていた。
店を間違えたのか・・・?心をざわつかせる結末が。

・共犯のピエ・ド・コション
常連の女性客が、再婚することに。
思春期の息子も相手の男性にすっかり
なついているらしい。
ある日3人でパ・マルにやってきた。
豚肉が嫌いな息子が豚足のガレットを注文した。
その理由が、めちゃめちゃ微笑ましい。

・追憶のブーダン・ノワール
ブーダン・ノワールは、豚の血で作るソーセージ。
男性常連客が、ある日婚約者を連れて来店した。
その彼女にブータン・ノワールを薦める。
婚約者は薦められるまま食べるが・・・。
中国人の婚約者には複雑な思いが。

・ムッシュ・パピヨンに伝言を
ある日、おしゃれな大学教授がランチ終了
間際に来店してきた。
ランチを堪能した大学教授。
厨房でプラリーヌ入りブリオッシュの
話をずっと聞いていたようだ。
そこから彼のパリ留学時代の話に
及んだ。悲しい別れ話・・・。
三舟シェフはあることに気づく。

・マカロンはマカロン
美しい女性が二人連れでやってきた。
マダムっぽい女性と背が高くモデルのように
美しい女性。マダムに話を聞くと、女性だけで
営業するレストランをオープンするらしい。
食事が終わり、二人は気持ちよく帰っていった。
ところが数日後、マダムが困り顔で
やってきた。先日の女性と連絡がつかないらしい。
「マカロンはマカロン」という謎の言葉を残していた。

・タルタルステーキの罠
生肉を使うステーキ料理「タルタルステーキ」
を当日のメニューに載せて欲しいと
奇妙な予約が入った。
そしてその日、3人の女性が来店してきた。
一人は妊婦。三舟シェフはハッとする!

・ヴィンテージワインと友情
二十代のグループの中の女性が食事終わりに
ワインの持ち込みが出来るのか聞いてきた。
持ち込み料は一人1,000円。
納得して帰っていった予約の日、ヴィンテージ
ワインを6本持った女性がやってきた。
友人の誕生日だから奮発したらしい。
その日その友人たちがやってきた。
しかし、ワインを持ち込んだ女性がまだきていない。
そして、ギャルソンたちは、いや~なシーンを目撃
することに!

シリーズ第3弾もシェフの気づきにハッとする。
途中でもしかしてこんな展開?と読めたりするが、
その予想をはるかに超える驚き。

家族の話、恋の悩み、複雑な思い。
心に響く感動するエピソードもあれば、
気づきたくなかったと心がざわめく展開もある。

特に女性の「闇」が垣間見られるエピソードは
ちょっと怖い。

それでも、今回も何度でも読み返したくなる。
そんなお話が多くて癒された。

続きは出るのかな~。期待大。

『マカロンはマカロン』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥792(本体¥720+別)

読み終わると幸せな気持ちになる「ヴァン・ショーをあなたに」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
「ヴァン・ショーをあなたに」を読みました。

とても素敵なお話ばかり・・・。

商店街の小さなフレン・チレストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?
シェフを慕うスーシェフの志村。
ワイン好きが高じてソムリエになった
紅一点・金子、そしてギャルソンの高築
この4人でお店をまわしている。

●錆びないスキレット
めずらしくシェフと志村が言い争っていた。
原因は、シェフが野良猫に餌付けをしたこと。
幸いにも常連のお客さんに引き取ってもらった。
その代わり、常連さんのスキレットの手入れを
することに・・・。
ある日、引き取られていった猫が同居している
猫と一緒にまたしてもパ・マルに現れた。
2匹の猫の首にはなぜか干し魚の入った袋が
つけられていた。誰が、、何のために?
その真相があまりにも切ない。

●憂さ晴らしのピストゥ
ベジタリアンのお客さんから予約が
入った。結構難題だが、三舟シェフは工夫に
工夫を重ねて出している。
ある日、三舟シェフの元同僚だった
男が店にやってきた。
男の店で彼が作るソースには秘密があった。
それはいったい・・・。

●ブーランジュリーのメロンパン
「ビストロ・パ・マル」のオーナーが
今度は女性二人が作るパン屋を出すという。
軽食も置きたいというパン屋の女性たちは
三舟シェフの料理レシピを習得にやってきた。
こだわりのパンを置きたいと言う女性店長。
「メロンパン」みたいな甘いパンもという
アドバイスを女性店長は頑なに拒否。
何か事情があるようだ・・・・。

●マドモアゼル・ブイヤベースにご用心
常連客の中に、三舟シェフの好きな人が
いるらしい。
いつもブイヤベースをオーダーする、
ニックネームは、「マドモアゼル・ブイヤベース」。
ある日、その女性から予約が入った。
どうも男性連れらしい。
どうする!?金子と高築はヒヤヒヤものだ・・・。
ところが思わぬ展開が待っていた。

●氷姫
ある男性の告白から始まる物語。
それはとてもつらい失恋の物語。
心も体もボロボロになり、パ・マルに
やってきた。結婚するはずだった
彼女はなぜ出て行ったのか?
三舟シェフは、男性の苦悩に心を寄せる。

●天空の泉
ある女性が回想する、若き三舟シェフとの
旅先でのエピソード。
そのたった一度の触れ合いが彼女の
運命を動かす。

●ヴァン・ショーをあなたに
若き三舟シェフの修業時代のエピソード
第2弾。マルシェでとてもおいしい
「ヴァン・ショー」(ホットワイン)
を飲ませてくれるミリアムおばあちゃん。
ところがある時から「ヴァン・ショー」
を作らなくなった。
それは何故なのか・・・?

「タルト・タタンの夢」の第2弾。
謎を解く鍵は料理の中に隠されていて、
三舟シェフがお客さんの話を聞くことで
その謎を解き明かす。

解き明かされた真相に、時に驚き、その想いに
切なくなり、胸がキュンとなる。

そして、シェフが出す料理が、傷ついた心を癒してゆく・・・。

今作では、三舟シェフの修業時代も
描かれる。その意外な一面にほっこりする。

この素敵な物語の数々に、はまってしまった。
何度でも読みたくなる。
何度でも癒されたい。

傑作!フランス料理×ミステリー。

『ヴァン・ショーをあなたに』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥770(本体¥700+別)

大切なものを守るため、命を懸けた少女たちの熱い闘い「同志少女よ、敵を撃て」

第11回アガサ・クリスティー賞受賞作
逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」
(早川書房)を読みました。
第2次世界大戦で一番激烈な闘いを強いられた
「独ソ戦」。ソビエトは、ドイツに勝利
するために、女性だけの狙撃小隊を編成。
そこに集められた少女たちの命がけの
闘いのすべてを描く。心が揺さぶられる傑作。

第2次世界大戦中、ソビエトはヒトラー率いる
ドイツと激しい闘いを繰り広げていた。

モスクワ近郊の小さな農村で母と暮らす少女・
セラフィマは、猟を得意とし捕った獲物は、
村の皆に分けていた。隣近所も家族のように
仲が良かった。

ところがある日、突如村に現れたドイツ兵に
よって彼女の平和は崩れ去った。
村の皆は殺され、焼かれ、母も惨殺された。
セラフィマは射殺される寸前、赤軍の女性兵士
イリーナに救われる。
だが、セラフィマの目の前で母の亡骸は冒涜された。
イリーナを憎むセラフィマ。
そんな彼女にイリーナは問う。
「戦いたいか、死にたいか」と・・・。

イリーナが教官を務める少女狙撃隊に入隊した
セラフィマは、同年代で同じような境遇の少女たちと
ともに厳しい訓練に耐え、一流の狙撃兵へと成長してゆく。

セラフィマの思いはただ一つ、復讐だ。
母を殺したドイツ兵と、母の遺体を焼いたイリーナに。

やがて、セラフィマたちは独ソ戦の転換となる
スターリングラードの前線へと送られた・・・。

訓練生たちと深い友情の絆を結んだセラフィマ。
しかし、死は否応なく訪れる。
目の前で銃弾に倒れる、仲間・・・。
凄まじい死の恐怖に怯えながら、それでも
復讐のために必死で敵を倒す。

圧倒的筆力で描かれる、戦争の非情さ、地獄。
そして、少女たちの心のゆらめき。
地獄にあっても、未来に夢を繋げる健気な
少女たちの心の強さが胸に突き刺さる。

この作品がデビュー作?
とても信じられない。凄すぎる、上手すぎる。

読後の余韻がいつまでも残る。
心を掴んで離さない、傑作中の傑作。

『同志少女よ、敵を撃て』
著者:逢坂冬馬
出版社:早川書房
価格:¥2,090(本体¥1,900+税)

美味しくて、ほっこりする「タルト・タタンの夢」

テレビドラマ「シェフは名探偵」があまりにも
良かったので、その原作である、近藤史恵さんの
「タルト・タタンの夢」を読みました。

読んでる途中も読み終わってもとっても
幸せな気分に浸れる、そんな作品でした。

商店街の小さなフレン・チレストラン
「ビストロ・パ・マル」は気取らない
本当にフランス料理が好きな客の心と
舌をつかんで離さない。
シェフの三舟は、無口でちょっとぶっきら棒。
髪を後ろで束ね、髭がなかなか特徴的。
外国人に言わせると「サムライ」だ。
そんなシェフの特技はなんと、謎解き!?

●タルト・タタンの夢
小劇団の人気女優が結婚のため、引退を
決めた。彼女の婚約者は「ビストロ・パ・マル」
の常連。ある日体調が悪いにも関わらず、
接待のため店にやってきた。
そんな中、店の様子をうかがう一人の
女性がいた・・・。

●ロニョン・ド・ヴォ―の決意
極度の偏食がある男性常連客。彼からの予約
が入るとシェフほかスタッフみな緊張する。
予約の日、女性を連れ立ってやってきた。
偏食の彼が注文したのは超癖のある
「ロニョン・ド・ヴォ―」。絶句するシェフ。
しかし皆の心配をよそに結構気に入ったようだ。
閉店後、彼の連れの女性が一人でやってきた。
シェフはそこで彼女の決意を聞くことになるが
シェフは意外な反応をする・・・。

●ガレット・デ・ロワの秘密。
「ビストロ・パ・マル」のスーシェフ
と彼の美しい妻とのエピソード。
フランスで出会った二人。あるクリスマス。
ガレットに仕込まれるべきはずのフェーブが
行方不明に・・・。
いったいどこへ行ったのか?

●理不尽な酔っ払い
店の女性常連客の連れはエッセイスト。
フランス人の彼と別れ、北海道で
エッセイを書いている。
彼との別れ話のいきさつを聞いたシェフは、
あることに気づく。

●割り切れないチョコレート
その日、ちょっと険悪ムードのカップルが。
さらに、男性の方が食事終わり、シェフに
ボン・ボン・オ・ショコラがまずいと
言い放って立ち去った。
その男性は新しくできたチョコレート店の
店長だった。クレームを受けたので
試しにその店のチョコレート買う。
チョコのセットはなぜか奇数ばかり。
後日再び例のカップルが店に訪れた・・・。

こんなミステリーがあったのかと感心した。
フランス料理×ミステリー。
料理の中に謎解きの鍵が隠されていた。
シェフはお客の話を聞くことで、
そこに秘められた思いを解き明かしてゆく。

読み進めると美味しそうなフランス料理が
次々と登場する。まるで自分も味わっている
ような感覚に陥る。

そして、シェフが解き明かした人々の思い。
それに気づかされた時、ハッとする。

読み終わった時に、温かい思いが染み込んでくる。

優しい気持ちになれる、何度でも読みたい
そんなミステリーだ。

『タルト・タタンの夢』
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥770(本体¥700+別)

寿雪の秘密が明らかになる!?「後宮の烏6」

シリーズを重ねるごとに面白さが増す
白川紺子さんの「後宮の烏」。
シリーズ第6弾を読みました。

5巻のお話は、
高峻は様々な伝手をたどり寿雪を
烏妃から解放する術を探る。
絡まった糸をほぐす・・・。
初代烏妃・香薔の過ちを正すこと。
それは香薔が烏妃の中に閉じ込めた
烏蓮娘娘を解放すること。

自分は自由になれる・・・
それは喜ばしいことなのに。
自由になった自分の未来を思い描いた時、
強烈な喪失感を感じる寿雪。

そんな複雑な想いを抱きつつ
その日がやってきたのだ。

寿雪が解放される!?
ところが、思いもよらない事態が発生した。

そして6巻は、
噴き出した水によって黒く染められた
寿雪の髪はその色がすべて洗い流され、
銀髪が衆目にさらされてしまった。
前王朝の血をひく証・・・。
寿雪と高峻がひたすらに隠し続けた
秘密が知られてしまったのだ。

さらに、寿雪の魂は何処かへと去り、
代わりに烏が宿った。

誰もが寿雪の心配をする中、
衣欺ハが行方不明になってしまう。

寿雪の魂を呼び戻すためには肉親の存在
が必要だとされたが、彼女の両親はすでに
亡くなり、高峻は寿雪の肉親の捜索をするが・・・。

さらに、烏の半身探しに誰もが躍起になる。

寿雪が全王朝の血を引いてると知った
沙那賣がどのような出方をしてくるのか?
高峻は沙那賣の長男に探らせることに・・・。

これまでは、後宮内で起こる物語が中心だったが、
王朝全体、そして神々の因果にまで物語は
広がり、壮大なスケールになってゆく。
そして、新たな局面へと繋がる!

怒濤の展開が待っているのか?
7巻が楽しみだ。

『後宮の烏 6』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥660(本体¥600+別)

険しき道に未来を見出そうとする。「後宮の烏5」

シリーズを重ねるごとに面白さが増す
白川紺子さんの「後宮の烏」。
シリーズ第5弾を読みました。

前作では、烏妃・寿雪をなき者にしようと
する動きがあり、高峻は益々寿雪を烏妃の
身分から解放する手立てを考えるようになる。
しかし、それは寿雪にとって真の解放に
なるのか?

宮中では、二人の側室が同時に懐妊し、
慶事に沸いていた。

その一人、燕夫人の侍女が夜明宮を訪れる。
懐妊し位があがり鵲妃となる燕夫人は
新たな宮へ移るのを頑なに拒み、侍女たちを
困らせているという。
移転先の宮は横死した元・鵲妃の住まいであった。
その宮を烏妃・寿雪に祓ってほしいとのことだった。

そんな中、高峻は様々な伝手をたどり寿雪を
烏妃から解放する術を探る。
絡まった糸をほぐす・・・。
初代烏妃・香薔の過ちを正すこと。
それは香薔が烏妃の中に閉じ込めた烏蓮娘娘を
解放すること。

ある烏妃の地元の伝説、夜明宮に伝わる烏妃の
首飾りなど・・・。細い糸のような手がかりから
真相につなげるといったミステリーもあり、
読み応えが十分だ。

寿雪は皇帝・高峻の側室二人が懐妊した
ことで、自分の心が揺れるのを感じた。

高峻は自分のために険しき道に挑もうと
している。
そして自分は自由になれる・・・
それは喜ばしいことなのに。
自由になった自分の未来を思い描いた時、
強烈な喪失感を感じる寿雪。

高峻の妃・花娘が彼らの関係性を見事に
言い表す。
それがあまりにも切ない。

果たして、香薔の結界を破り、寿雪は
自由を得ることが出来るのか?

クライマックス、あまりにも意外な
方向へと導かれてしまう!?

混迷の展開は6に続く!!!

『後宮の烏 5』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥682(本体¥620+別)

圧倒的な面白さ!毛利VS尼子対決「駆ける 少年騎馬遊撃隊」

第13回角川春樹小説賞受賞作、稲田幸久さんの
「駆ける 少年騎馬遊撃隊」(角川春樹事務所)
を読みました。

中国の覇権を手中に治めたい毛利、出雲奪還
を目指す尼子。中国地方の両雄が激突する!
圧倒的臨場感で描かれる合戦シーンが凄すぎる!

三刀屋の近松村で馬を飼育・売買する家に
育った小六。
彼は特に風花という馬を気に入っていた。
いつも一緒にいることから、風花の考えて
いることはわかる。

ある日、小六が仲間たちと遠出をしたとき
風花が異変を察知した。
突然、賊に襲われたのだ!!
仲間たちは殺され、小六は風花とともに
村に逃げ帰った。
ところが、村は焼かれ馬は盗まれ、
小六の父母、幼い妹までも焼かれていた。
絶望で倒れていたところを、毛利元就の
次男・吉川元春に拾われる。

月山冨田城、出雲地方の覇権を毛利側に
奪われた尼子。
元就の奸計により、尼子国久と新宮党
が争い、尼子は弱体化する。
甚次郎(後の山中鹿介)が何も知らずに
尼子のもとに届けた文こそ、元就の策略
だったのだ。
甚次郎は元就の手の内で転がされた。
親しい人、そして愛する人を奪われた甚次郎は、
「毛利元就」を激しく憎んだ。
尼子一の猛者となった甚次郎こと山中鹿介幸盛は
出雲奪還の前に「毛利元就」を殺すことだけを
目標に生きている。

吉川元春の下で、少年騎馬隊のリーダーとなった小六。
元春は、尼子に打ち勝つ手段を育てていた。

そんな両雄が激突する日がやってくる!

吉川元春、山中鹿介、リアルな人間像が伝わってくる。
さらに、個性的な登場人物たちの魅力が溢れている。

方や中国地方の覇権掌握!方や復讐の鬼!
尼子・毛利、両方の強い思いが心に刺さる。

また、合戦シーンの凄まじい迫力!
自分自身もそこにいるような錯覚に陥った。
そして、圧巻のラストシーンに感動!感涙。

とても面白かった!

『駆ける 少年騎馬遊撃隊』
著者:稲田幸久
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,980(本体¥1,800+税)

関小玉の若き日を描く第5弾「紅霞後宮物語 第零幕5未来への階梯」

「紅霞後宮物語」の本編は皇后・関小玉と
皇帝・文林の関係と、後宮で起こる
事件や政変を描き非常に面白い。

そして、関小玉の若き時代を描く、
「零幕」シリーズも、どんどん
面白くなってゆく。

小玉は、戦の最中思わぬ襲撃にあい、
小玉が一番信を置いていた、復卿が戦死した。

その死に衝撃を受け、何とか
受け入れようとしていた小玉の前に
喪中で公休中の文林が陣営にやってきた。
復卿の死を「自分のせいだ」と言い、
周囲に波紋が広がる。
そんな文林の言葉が小玉の心に
暗い影を落とす・・・・。

そして、戦が終わり都に戻った
小玉を待っていたのは、家族との時間と
去り行く人々の思いだった・・・・。

復卿の恋人だった青喜の思いが切なく、
彼を思いやる周囲の人々の優しさが際立った。

復卿を失った戦には様々な思惑が渦巻いていたらしい。
しかし、小玉は半分しか真相を知ることが出来なかった。
文林とは戦後処理を巡り、けんかが絶えない。

また、甥の丙が小玉が戦に出ていることを
心配し、情緒不安定になってしまうシーンが
切なかった。

小玉は上官からあるものを贈られる。
それは小玉にとって、運命の出会いであった。

そして、小玉の運命は大きく動いてゆく・・・。

第零幕6の展開が待ち遠しい!

『紅霞後宮物語 第零幕五 未来への階梯』
著者:雪村花菜
出版社:富士見L文庫
価格:¥660(本体¥600+税)

百人一首の謎に迫る!「身もこがれつつ小倉山の百人一首」

周防柳さんの「身もこがれつつ小倉山の百人一首」
(中央公論新社)を読みました。
主人公は、「新古今和歌集」の選者を務め、百人一首
を編んだ、平安後期~鎌倉時代に活躍した
歌人・藤原定家。

著者は、「蘇我の娘の古事記」を描いた周防柳さん。
平安貴族のきらびやかな世界を背景に描かれる和歌の世界!

御堂関白・道長に連なる藤原北家の系列ながら
傍流の御子左家は出世とは程遠い家柄。
その次男に生まれた藤原定家は、
子どものころ、2度も疱瘡に罹り、
ちょっとだけ顔にコンプレックスを持っていた。
病により、片方の耳が難聴に。
しかし、定家は並々ならぬ努力でその難聴を克服。
得意の歌で頭角を現す。

そして、親友の藤原家隆とともに
「新古今和歌集」の選者も務めた。

鎌倉幕府は朝廷を侮り、後鳥羽上皇の
闘争心に火をつけてしまう。
腹いせに、鎌倉幕府三代将軍・源実朝を
引き入れようと画策。
定家は後鳥羽院から、実朝の和歌の指南を
するよう命ぜられる。

偉大な人物も時に自身の才能を疑い、
落ち込む、恋に悩む、嫉妬の炎を燃やす。
読んでいる途中、定家が愛おしく思えてきた。

平安末期~鎌倉そして、承久の乱。
激動の時代の中、ただひたすらに歌の道に
邁進した定家の生き方に心が震える。

クライマックス、定家が選んだ百首の歌が
飛び交うシーンが非常に印象的。
そして、ラスト。
定家が政権に阿ることをやめ、すべてを悟り、
決意するシーン。
「真の歌の心がここにある。
歌の心とは、この国に一千年積り積もった
みやび男みやび女の思いの重畳であり・・・。」
そうなんだ!
自分の信じる道を行けば良い。
そのために定家は生きてきたのだから。
歌を愛し続けたのだから・・・。
そう思うと思わず泣けてきた。

「新古今和歌集」の編集。1000年後も
愛される数々の和歌を詠んだ偉人。
歌人・藤原定家の生涯をここまでドラマチックに
描いた作品はない。

そして、百人一首がどのようにして
編まれたのか・・・?
そこがこの作品の最大の読みどころ。
百人一首競技も、もしかしたらこれが始まり・・・?
なんてシーンもある。

百人一首好きなら絶対に読まないと損をする!
華麗なる歴史小説。

『身もこがれつつ 小倉山の百人一首』
著者:周防柳
出版社:中央公論新社
価格:¥2,090(¥1,900+税)