前代未聞の誘拐ミステリー!「華麗なる誘拐」

ツイッターのTLで紹介されていた、
西村京太郎さんの「華麗なる誘拐」を
読みました。

あまりの面白さにぶっ飛びました。

西村京太郎さんといえばトラベルミステリーの
イメージが強いので、このような本格推理作品
を描かれていることは全く知らなかったので
二重の驚き!

この「華麗なる誘拐」は、1977年に
徳間ノベルズで発売され、何度か文庫化、
さらにノベルス化、全集収録を繰り返し
先月、河出文庫で復刊。
トラベルミステリーに移行する前に
描かれた作品かな~と思う。

アメリカ帰りの探偵・左文字は妻と二人
探偵事務所の階下にある喫茶店でコーヒーを
飲みながら、全く客の来ない探偵事務所
を今後どうするか?話し込んでいた。

ところが、隣でコーヒーを飲んでいた若い
カップルが突如苦しみだし倒れてしまった
すぐに救急車を呼んだが亡くなってしまった。

シュガーポットに青酸カリが混入されていたと
警察から知らされる。
さらに左文字は警察からある協力を依頼される。

警察あてに「日本国民一億二千万人を
誘拐した。身代金5000億円を支払え」と
脅迫状が届いた。

青酸カリで亡くなったカップルはそれが
いたずらでない証明だという。

警察の威信をかけて何が何でも犯人を
とらえなくてはならない。
左文字は口外しないという約束で、
調査費と捜査権を渡されたのだった。

しかし、今までの誘拐捜査の定義など一切通じない。
警察は犯人に翻弄され、その無能さを露呈する。
そして、探偵・左文字は、警察とは全く
違う角度から犯人を特定する。
左文字は真犯人を追い詰めてゆくが、
そのプレッシャーにも全く動じない真犯人。

1977年ころに描かれた本作は、
当時の警察にはなかった特殊な捜査方法
今でいう「プロファイリング」が登場する。
左文字は、犯人の電話やその話し方から、
特性を見出し、どのような人物なのかを
推理するのだ。

日本では、映画や小説で大ヒットした
「羊たちの沈黙」でプロファイリングという
言葉が一般的に聞かれるようになったと思うが、
初出の1977年にすでに「プロファイリング」
らしき推理を用いるミステリーを描いていた
なんて凄すぎる!

犯人と左文字との頭脳戦!
とんでもない誘拐事件の顛末に、衝撃が奔る。

40年以上も前に描かれた作品なのに、
今読んでも全く色あせていない、逆に「誘拐」の
アイディアが斬新すぎてとても面白かった。

『華麗なる誘拐』
著者:西村京太郎
出版社:河出書房新社(文庫)
価格:¥850(税別)