ミステリーか?ホラーか?不思議な面白さ『蛟堂報復録1』

夏ということで、ホラーミステリーものを紹介しています。
この作品、鈴木麻純著『蛟堂報復録1』(アルファポリス文庫)は、ちょっと不思議な世界を楽しめる作品です。
この作品との出会いは、文庫棚の周りを何か面白い本はないかと物色中に、表紙とタイトルに惹かれ・・・というかこの本が私を呼んでいた・・・みたいな感じで手に取り、読んでみると面白い・・・。
そして妙に心が安らぐ・・・?不思議な感覚に陥った作品です。
『蛟堂報復録』は、現在1巻~4巻まで発売中。徐々にファンが増えているようです。
第1巻は、3編の中編が収められています。
蛟堂―表向きは、江戸時代より続く漢方薬局兼雑貨屋。しかしその真の姿は、晴らせぬ恨みを引き受ける「報復屋」。
心に闇を抱えた人々は、人づてに‘蛟堂’の存在を知りこの「報復屋」に仕事を依頼する。
依頼者は、莫大な報酬を支払うことになるが、消えることのない業を負うことになるとしてもなお、報復を望む・・・。
陰陽道の天才であり、‘蛟堂’の十二代目店主・三輪辰史は彼らの恨みをどう晴らすのか!?
報復の舞台は、妖しき古書の世界・・・。
第1話『清姫』は、結婚式の当日に婚約者に裏切られた女性のすさまじい恨み。それは蛇と化して愛しい男を食い殺す。あまりにも深く、悲しい女の執念を描く・・・。
第2話『ピノッキオ』は、理由もなく無軌道に暴れる兄。その兄に対し、幼い妹が下した悲しき決断とは・・・。傍若無人な若者の行き着く先を描く。
第3話『赫夜姫(かぐやひめ)』は、物を貢ぎ、心を尽くしてもなお愛を得られない男は、女への復讐を誓う。男を翻弄し続ける女の結末とは?
哀しく、切なく、そしてちょっとだけ恐い・・・・。三つの怪異譚。

愛憎、嫉妬、騙しあい、裏切り・・・・。人が抱える心の闇がこれでもかと描かれているが、どこかに救いがある。人とは所詮こういう生き物なのだ、と納得・・・。そういう意味でも読み終わった後、妙に安らぐ不思議さ。

この世界にすっかりはまってしまったので、2巻以降読むのが楽しみ!!

『蛟堂報復録1』
著者: 鈴木麻純
出版社:アルファポリス(発売 星雲社)
価格:¥600(税別)