沈没寸前の豪華客船、女性消防士命がけの救出劇!「波濤の城」

五十嵐貴久さんの女性消防士が主人公の
「炎の塔」がとっても面白かったので、
シリーズ第2作目の「波濤の城」を
読みました。

「炎の塔」は名作パニック映画
「タワーリングインフェルノ」に
インスパイアされて描かれた作品でした。

今回の「波濤の城」は、同じく
パニック映画の傑作と言われる
「ポセイドン・アドベンチャー」から
ヒントを得て描かれた作品です。

大型台風に見舞われ、座礁し
沈没寸前となった豪華客船をさらに
業火が襲う。その極限の中で
繰り広げられる人間ドラマと救出劇!
すさまじい臨場感に圧倒されます!

豪華客船、メモリアル・オブ・レインボー号の
山野辺船長は、巨大台風が迫る中、
カジノ誘致を目論む代議士の要請で
急遽、航路変更を行い強行出航した。

山野辺の思惑は、代議士に恩を売り、
カジノ用フェリー航路の独占、そして、
会社の中で、自分の地位を確たるもの
にしようという自分勝手なものだった。

乗員乗客2,000名の中には、
離婚危機を迎える若い夫婦、
末期がんと診断され家族のために
死を覚悟した男。
組織から、知人の男を殺害するよう命令された男。
小説が書けなくなった老作家夫婦。
船オタクの根暗な青年、
過去の沈没事故のトラウマを乗り越え
られない客室係の男、
そして、銀座第一消防署の女性消防士・
神谷夏美と柳雅代もいた。

大型台風の影響で、激しい雨と
波がクルーズ船を襲う。
そして、深夜、突如異音とともに
排水が逆流、海水が流れ込み、船が
傾き始めた。

しかし、山野辺は頑なにすべての事実
を否定し、航行を続けようとした。
方や、沈没を経験している客室係は
己の判断で乗客の避難誘導を始める。
激怒する山野辺。

その間に、切断された電線から火の手
があがり、船の一部は業火に見舞われる!

神谷と柳は、残された乗客たちと
避難用ボートが設置してある9階へと
逃れようとするが、炎に退路を
断たれてしまう!!!

極限状態の中での人間ドラマが
胸を打つ。
神谷と柳の絶対に諦めない精神が
乗客たちの心に火をつける。
そのシーンがめちゃめちゃ泣ける!

また、船長でありながら己の保身
しか考えない山野辺が許せない!
なんど「バカかこいつ!」
と突っ込んだか知れない。

ベースは「ポセイドン・アドベンチャー」だ。
そして、著者はこれまでの数々の海難事故を
ヒントにこの作品を描いている。
人間の判断ミス、関係者の自己保身で
どれほどの悲劇が生まれるのか?

生死がかかった場面での人間の本当の
姿が描かれている。

手に汗握るパニック小説でありつつ、
人間の生き様を考えさせられる
最高に面白いエンターテイメント作品!

『波濤の城』
著者:五十嵐貴久
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥800(税別)