これこそほんとの前代未聞!「同姓同名」

「超」話題になっている下村敦史さんの
「同姓同名」(幻冬舎)を読みました。

登場人物がほんとに全員、同姓同名
なんですよ!
どうやって区別したの?
それで物語は成立するの!!!?
興味津々で読み始めたら、なんと
面白いのなんのって、計算しつく
された緻密な展開に鳥肌が立ちました!

大山正紀(おおやままさのり)は、
プロのサッカー選手を目指す高校生。
いつか自分の名前が、サッカー
スタジアムに轟く日を夢見ている。

そんな中、女児惨殺事件が起こった。
犯人は、16歳の男子高校生。
少年法に守られ、当然名前は伏せられ
報道された。ところがあまりの事件の
残酷さに日本中が激怒し、名前の公表を
求めSNSが過熱。ある週刊誌が名前の
公表に踏み切った。
その名前は「大山正紀」。

その後、大山正紀はサッカーの推薦枠
をはずされてしまう。
他にも、凶悪殺人犯と同じ名前の名もなき
「大山正紀」たちは、人生を狂わされてしまう。

7年後、刑期を終えた大山正紀が出所した。

そして、犯人逮捕の時以上に犯人批判は
過熱。SNS上では、正義をふりかざす
者たちで暴走し炎上していた。

犯人に名前を奪われ人生を穢された
「大山正紀」の中の一人が
‘大山正紀同姓同名被害者の会’を発足
させた。そして集まったものたちは、
犯人を捜し出そうとする。

興味本位なのか?本当に正義なのか?
SNSによる、情報や言葉の暴力性が
半端なく、それがあまりにもリアルに
描かれているので恐ろしくなる。

凶悪犯人と同じ名前だったせいで
彼らが被った艱難辛苦はどれほどの
ものだったろうか?
一人ではとても耐えられず、
被害者の会を発足させ、少しでも
苦しみを分かち合いたいと思うのも当然だ。

そして、大山正紀だらけで本当に混乱する。
多分、それが狙い????
至る所に張り巡らされた数々の伏線。
(’’’’’)に振りまわされる。
さらに、巧妙なミスリードで、まんまと
著者の罠にはまる!

SNSの恐ろしさにドン引きしながら、
ミステリー小説のとしての面白さを
めちゃめちゃ堪能できました!
こんなにややこしい作品、そうそう
描けないと思います。
それを描いちゃって、さらに
読者を楽しませてくれた
下村さんに拍手!!!

『同姓同名』
著者:下村敦史
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)