コロナ禍に挑む!「DASPA吉良大介コールドウォー」

榎本憲男さんの「DASPA吉良大介コールドウォー」は
「巡査長真行寺弘道インフォデミック」と対をなす作品。

2019年の暮れ、DASPAの吉良大介は、
ダークウエブの賭博サイトに
「2020年に東京オリンピックは開催
されるか?」
という不吉な賭けを発見する。

2020年になると新型コロナウイルスに
よる感染拡大で東京オリンピックは
2021年に延期すると発表された。

このコロナ禍で人々は不確かな情報に
よって右往左往する。
日本社会はゆるいロックダウンによる
「自粛」生活へと突入し、今まで
誰もが経験したことのない危機的状況
に追い詰められた。

そんな中、この空気感に抵抗するかの
ような発言をしたアーティストがいた。
「人は死ぬときに死ぬ」と発言し、
ライブ活動を続ける伝説的ミュージシャン・
浅倉マリが「浅倉マリと愚か者の集い」と称し、
大規模なライブ活動を開催すると発表したのだ。

吉良は、この事態に対処すべく、警視庁
捜査一課の水野玲子課長にプレッシャーを
かける。
吉良から圧力をかけられた水野は
部下の真行寺に浅倉マリの監視と
ライブを自粛するよう促した。

日本をバージョンアップするという
信念を持つ吉良大介。
コロナ禍という前代未聞の危機に
どう立ち向かうのか?

そして国家の危機に国民は国の政策に
従うべきという目線で語る吉良と
人は自由に生きることが大切だと信じる、
巡査長真行寺との対決シーンは、
「巡査長真行寺弘道インフォデミック」
本書「コールドウォー」の最大の見せ場。

コロナ禍にあり、右往左往する
国と、国の政策に期待を持てない
国民の心情というものを圧倒的な
臨場感で描き切っている。

「巡査長真行寺弘道インフォデミック」
「DASPA吉良大介コールドウォー」
2冊を読めばコロナ禍における日本社会
のリアルを感じ取ることが出来る。

また、真行寺弘道の影の相棒であるボビーや
捜査一課課長水野玲子が吉良大介とどういう
関係性にあるのかも読みどころ。

そういう意味でも、
「巡査長真行寺弘道インフォデミック」と
あわせて読むとさらにさらに面白い!

『DASPA吉良大介 コールドウォー』
著者:榎本憲男
出版社:小学館(文庫)
価格:¥850(税別)