コロナ禍の今をリアルに描く!「巡査長真行寺弘道インフォデミック」

榎本憲男さんの「巡査長真行寺弘道」シリーズ第5弾
「インフォデミック」を読みました。

このシリーズ、他の警察小説とは一線を画す、
独特の世界観がある。
一巻を読んだらクセになるほど面白い警察小説。

これまで、日本社会の闇、インドのカースト制度、
マイノリティ、日本の経済をテーマに
描かれてきた。

そして、2020年!
新型コロナウイルスの感染拡大によって
世界中に危機が訪れた。

このコロナ禍で人々は不確かな情報に
よって右往左往する。
誰もが経験したことのない危機的状況
に追い詰められた。

2020年春、新型ウイルスが世界中で猛威を振るい、
人々は不確かな情報に踊らされ、不安のみが増大。
仕事は在宅ワークとなり、出歩くな、人と会うな
イベントはすべて中止。さらに自粛警察まで
現れた。

そんな時、「人は死ぬときに死ぬ」とライブ活動を
続ける伝説的ミュージシャン・浅倉マリがメディアに
登場し、真面目に自粛している国民に向けて
過激なメッセージを発信した。

真行寺は、同居している森園みのるの
最近の様子になんとなく違和感を感じ
問い詰めると、件の浅倉マリを主催者に
白石サランの事務所「ワルキューレ」
を通じ大掛かりなライブコンサートを
企画していることを知る。

そして、真行寺は高齢な浅倉の監視と
ライブ活動の自粛を促すように、
上司の水野玲子捜査一課長に命じられた。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、
ライブコンサートなど開催したらどうなるのか?
自由人、真行寺もさすがに白石に自粛する
よう促すが・・・・。

この件で白石との溝が出来てしまった
真行寺。そんなとき、浅倉マリが
新型コロナウイルスに感染し急死
したとの連絡が入った!

著者は5月にこの新型コロナウイルス
をテーマに描くことを決めたという。
ここに描かれたコロナ禍の状況は
あまりにもリアル。

リーダーたちの中途半端な政策に対し、
私たちの心の中の思いが代弁されていて、
真行寺の言葉や思いに共感できるところが
たくさんある。
こういう状況だから、上の言っている
ことはわかる、わかるけど・・・。
私たちのどうしようもないこの
モヤモヤっとした気持ちは、まさに
この作品にすべて描かれていると
言っても過言ではない。

さらに、5月の緊急事態宣言の後にやって
くるかもしれない、感染拡大第2波を
予言している。

物語の方向はというと、驚くべき
事態に展開してゆく!

この作品と対をなす
「DASPA吉良大介 コールドウォー」と
あわせて読むとさらにさらに面白いです!

『巡査長真行寺弘道 インフォデミック』
著者:榎本憲男
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥800(税別)