東京地検特捜部を真正面から描く!「巨悪」

「巨悪」は、元新聞記者の伊兼源太郎
さんが、検察の深部をリアルに描いた
社会派ミステリーです。

鷲田運輸社長が巨額の脱税を
行っていると、東京地検に内部告発と
思われるタレコミがあった。

そこから4か月、この内部告発から
調査を開始した、東京地検特捜部の
検事・中澤源吾は上司から何の
成果もあげていない、なんとして
でも割れ(自白をとれ)!と叱責
されていた。

検察は過去に起きた特捜部の証拠改竄
事件や杜撰な取り調べが露見し、
その威信は地に堕ちていた。

今回の調査で検察の信頼回復を狙う上層部。

しかし、組織改革を進めるはずの
検察の体質は変わらず、中澤は
納得できないでいた。

ワシダ運輸の脱税について、中澤は
立件することが出来ず、次の調査に投入される。
それは、国交大臣が夏祭りで配布した
手ぬぐいに絡んだものだった。
この案件も立件が難しいとされたが、与党の
陰のドンに迫ると期待された。

一方、事務官の城島は、ワシダ運輸から
押収したブツの中で、大番頭・陣内の
手帳に記された和菓子の購入に疑問を抱く。

中澤は、国交大臣の筆頭秘書に聴取していた。
ところが、秘書が自殺するという事件
が起こってしまう・・・。

中澤と城島は高校時代からの同級生で、
野球部で切磋琢磨したライバルだ。
そして城島は、中澤の妹・友美の恋人でも
あった。
しかし、友美は二人が大学時代に
殺されてしまった。
大きな悲しみの中で、友美の死の真相を
暴く!中澤と城島はお互いにその思いを
胸に秘め、「正義」の象徴である
検察に身を置く決意を固めたのだった。

そういう絆で結ばれた中澤と城島は、
国交大臣とワシダ運輸の調査を
進めるうちに不可解な金の動きを
掴む。そしてそれは東日本大震災の
復興補助金に繋がってゆく・・・・。

東京地検特捜部を題材にした「巨悪」。
圧倒的臨場感に度肝を抜かれる。
あまりのリアルさにここまで描いて良いのか?
思ってしまう。

政治汚職の闇を暴かなくては!という使命感。
そして、信頼回復を志す検察に送る
エールのようなものが感じられた。

巨悪に立ち向かう、若き検事と事務官、
その上司、同僚たちの「正義」を全う
するという熱い熱い思いに心が震えた。

『巨悪』
著者:伊兼源太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥1,100(本体¥1,000+税)