完成度MAX!警察倒叙ミステリ『教場X 刑事指導官 風間公親』

木村拓哉さん主演でドラマ化された「教場」
そのシリーズ最新作が発売!
長岡弘樹「教場X 刑事指導官 風間公親」(小学館)。

6話の短編から成る、謎解きにこだわった警察小説。
犯人当てではなく、犯人がいかにして殺人を犯したのか?
に焦点を充てた倒叙ミステリだ。

「風間道場」に呼ばれた若手刑事たちは、
それぞれの事件現場で彼らの実力を試される。

事件現場で気づいたこととは何か?
風間に問われる。
眼で見てわかることではなく、現場に漂う
空気感や匂い、その裏まで把握しなくては
ならない。
ありきたりの答えしかできない者など
この風間道場では必要とされない。
交番勤務に戻る以外にないのだ。

自動車事故で妻を失った男。
娘が唯一の目撃者だったが、小学生の
娘の目撃証言は採用されず、犯人と
思われる男は証拠不十分で不起訴となった。

地元新聞社の内定を得、前途洋々の大学生。
「人文地理学」の単位さえとれば
卒業が確定する。しかし担当教授からNOを
突き付けられる。

10年前に恋人を自殺で失った女性。
その原因を作った男が刑期を終え普通に
暮らしている。憤る女性は男の殺害計画を
実行しようとしていた。

女子短大生は、授業で知り合った工芸家の
男性と関係を持ち妊娠。男は中絶を
迫り、費用を渡しイタリアに旅立つ。
しかし、女子短大生は休学し出産する決意を固める。

輸入雑貨の通販会社社長の男。
海外の闇サイト経由で違法な商品を仕入れ
莫大な富を得た。そろそろ潮時と見た
男だったが、相棒の女性を説得できずにいた。

実験中の事故で両目を失明した著名な有機化学教授。
一線を退いたが、娘の前科持ちの夫の行動が悩みの
種となっていた・・・・。

悪人ではない。でもどうしても「殺す」しかなかった
者たちの復讐心や心の隙間に芽生えた殺意の
感情がひしひしと伝わってくる。

物語の中に仕掛けられた、数多の伏線が風間と
若手刑事たちの捜査によって次第に繋がってゆく
過程が丁寧に描かれ、真相が明かされたときの
驚きは言葉にならない。

犯人を追い詰める、風間と若手刑事たち。
悲しみに覆われた犯人の苦しみ、悔しさを
受け止めるその姿勢が切なく感じられた。

この作品もドラマ化してほしい!

『教場X 刑事指導官 風間公親』
著者:長岡弘樹
出版社:小学館
価格:¥1,650(¥1,500+税)