険しき道に未来を見出そうとする。「後宮の烏5」

シリーズを重ねるごとに面白さが増す
白川紺子さんの「後宮の烏」。
シリーズ第5弾を読みました。

前作では、烏妃・寿雪をなき者にしようと
する動きがあり、高峻は益々寿雪を烏妃の
身分から解放する手立てを考えるようになる。
しかし、それは寿雪にとって真の解放に
なるのか?

宮中では、二人の側室が同時に懐妊し、
慶事に沸いていた。

その一人、燕夫人の侍女が夜明宮を訪れる。
懐妊し位があがり鵲妃となる燕夫人は
新たな宮へ移るのを頑なに拒み、侍女たちを
困らせているという。
移転先の宮は横死した元・鵲妃の住まいであった。
その宮を烏妃・寿雪に祓ってほしいとのことだった。

そんな中、高峻は様々な伝手をたどり寿雪を
烏妃から解放する術を探る。
絡まった糸をほぐす・・・。
初代烏妃・香薔の過ちを正すこと。
それは香薔が烏妃の中に閉じ込めた烏蓮娘娘を
解放すること。

ある烏妃の地元の伝説、夜明宮に伝わる烏妃の
首飾りなど・・・。細い糸のような手がかりから
真相につなげるといったミステリーもあり、
読み応えが十分だ。

寿雪は皇帝・高峻の側室二人が懐妊した
ことで、自分の心が揺れるのを感じた。

高峻は自分のために険しき道に挑もうと
している。
そして自分は自由になれる・・・
それは喜ばしいことなのに。
自由になった自分の未来を思い描いた時、
強烈な喪失感を感じる寿雪。

高峻の妃・花娘が彼らの関係性を見事に
言い表す。
それがあまりにも切ない。

果たして、香薔の結界を破り、寿雪は
自由を得ることが出来るのか?

クライマックス、あまりにも意外な
方向へと導かれてしまう!?

混迷の展開は6に続く!!!

『後宮の烏 5』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥682(本体¥620+別)