人情に厚いキャリア署長を描いた渋い!警察小説『署長刑事』

姉小路祐『署長刑事デカ 大阪中央署人情捜査録』(講談社文庫)を読みました。
姉小路作品は初挑戦でしたが、この作品の主人公、若いキャリア署長の人柄にすっかり惚れ込んでしまいました。
古今堂航平、29歳。大阪中央署に配属された若き署長。趣味は落語。お守りは扇子。上がり症のため欠かせないアイテム。‘モサい’がしかし正義感に燃える青年署長だ。
大阪中央署の附田副署長は、このたびこの青年署長の守役も兼ねて警視への昇格を果たした。
しかし、附田副署長ほか他のキャリアたちの思惑ははずれ、古今堂航平の若殿様署長らしくない行動にハラハラドキドキするはめになるのだ。
古今堂が中央署署長として赴任して間もなく、ひき逃げ事件が起きた。乗り捨てられた車からは、警察官の昇任試験に使う参考書、さらにウイスキーの空き瓶が発見された。
どうも現役警察官によるひき逃げらしい。
さらにひき逃げの犯人とみられる警察官は、自宅でガス自殺を計り遺体となって発見されたのだ!!
身内の失態を揉み消す記者会見に利用された古今堂は、不信感をぬぐいきれず、自ら捜査に乗り出す。
警察官の飲酒運転によるひき逃げ事件。その責任を負って警察官が自殺し、一応事件の幕は下りた。
しかし古今堂署長の地道な捜査により、事件現場からは不審な点がいくつも出てきた。
これはもしかして計画的な犯行なのか?被害者にはどのような秘密があるのか・・・?
警察組織でのキャリアのあり方や駆け引きなど警察内部のエピソードが満載。
その中で、古今堂航平がキャリアでありながらそれに縛られず、警察官としてどうあるべきか、署長としてどうあるべきかを問い続け、「わしはこれでいくんや!」という思いに溢れている。
さらに古今堂と彼を慕う捜査官が、地道に捜査をして積み上げた事件の真相も実に面白い。
簡単な事件が実は、複雑な人間関係が絡んだ殺人だった・・・・!?
愛嬌のある青年署長の活躍が心に沁みる、渋い系の警察小説です。大阪弁もいい味出しています。
『署長刑事(デカ) 大阪中央署人情捜査録』
著者: 姉小路祐
出版社:講談社
価格:¥743(税別)