慟哭の社会派小説「教誨」

柚月裕子さんの「教誨」(小学館)読了。

女性死刑囚の心に迫った、社会派の犯罪小説。
幼い娘とその友達の命を奪った女性。
なぜ、そうなってしまったのか?

女児二人を殺害し、、死刑になった響子。
彼女は遺品と遺骨の受取人に遠縁の吉沢香純
母娘を指定していた。
香純は、響子の遺品を受け取り、遺骨は
響子の実家の墓におさめてもらうように
連絡をとったが、頑なに拒否される。

響子の実家の菩提寺である寺の住職に
直接会って納骨できるように説得するため、
香純は青森県へと飛んだ。

そして、響子が最期に遺した言葉
「約束は守ったよ、ほめて」という
言葉の真意を探るため、事件を知る
関係者と面会を重ねてゆく。

香純は子どもの頃一度だけ会った響子のことが
忘れられなかった。

響子を知る人たちに会い、話を聞くと
自分が抱いていた響子のイメージとの
ギャップに驚く・・・。
響子が背負っていた辛く悲しい過去を
知るごとに彼女が耐え忍んできた重荷を
香純も感じとり、深い悲しみにとらわれる。

幼女2人を殺害した稀代の悪女・・・。
マスコミで悪しざまに言われ続けた響子。
しかし、本当にそうだったのか?

閉塞的な町、町の権力者への同調圧力。
父親からの精神的虐待・・・。
母親の無関心?
響子の育った環境を鑑みると「絶望」
を植え付けられたのではないかと思ったりする。

現代社会の歪みの犠牲になってしまった
一人の女性の慟哭がリアルに描かれる。
女性死刑囚の心に寄り添った描写に
心が揺れる。
そして、犯罪に奔った「事実」とその裏に
ある「真実」は違うのだと気づかされる。

『教誨』
著者:柚月裕子
出版社:小学館
価格:¥1,760(本体¥1,600+税)