連続猟奇殺人事件の真相とは!?「殺人者」

望月諒子さんの「蟻の棲み家」(新潮文庫)を
読んで圧倒され、他の作品も読んでみたくなり、
手に取ったのが「殺人者」(新潮文庫)。
この作品も傑作!
重いテーマでありながら、最後まで読ませる
力量に魅了されました。

大阪のホテルで立て続けに2人の男性が殺害される
事件が起こった。
フリーのルポライター・木部美智子は、
雑誌「フロンティア」の編集長から、
その事件の取材を依頼される。

同じライター仲間たちの情報から、凄惨な
殺害現場だったことを知る。
女性と二人でホテルに入った被害者男性たち。
2人の被害者男性はどちらも全裸でグルグルに
巻かれてバスルームで死んでいた。
そして体の一部を切り取られていた。
女性一人の犯行ではない・・・。

木部美智子は、やがて彼ら二人が神戸の
高校で同級生だったことを掴む。
取材を進めると、彼らのほかに仲間が二人おり、
彼らは小さな事件を起こしては警察に捕まって
いたことがわかる。

美智子は警察に先んじて、殺害された男性の一人に
つきまとっていた女性がいたことも掴む。
木部は、彼女を雇っていたスナックのママから
その女性の情報を引き出し、自宅へと迫る。
しかし、木部はそこで信じられない光景を
見てしまう。
そして、さらに殺人が発覚する。

プロローグで事件の発端が描かれ、
読んでいると早々にこの物語の主軸が
何なのか?
犯人は誰なのかを知ることになる。

15年前に起こったある事件・・・。
その事件がなぜ起こったのか?

木部美智子は丹念に取材を重ね、事件の
全容を推理する。しかし、ライター仲間たち、
そして殺人事件の捜査をしている警察
にも木部の突飛な推理は届かない。

しかし、猟奇殺人に繋がったものは、
15年前に起こった事件が、人間の底知れぬ
「悪意」にあるということを木部は
暴いて見せる。
猟奇的殺人をおかした犯人は、その
「悪意」の犠牲になってしまったのだ。

凄惨な事件を起こしてしまうほどに追いつめられ、
恨みや憎しみを抱えてしまった犯人に
同情してしまった・・・。

読みだすと止まらない、最後まで読まず
にはいられない、そんなミステリーだ。

『殺人者』
著者:望月諒子
出版社:新潮社
価格:¥825(本体\750+税)