シリーズ三作目はミステリー仕立て!? 「妖しい刀 出直し神社たね銭貸し」

櫻部由美子さんの「出直し神社たね銭貸し」の
シリーズ3作目「妖しい刀」(ハルキ文庫)を読了。

貧乏神に見込まれ、出直し神社でうしろ戸の
婆に仕えるおけい。今度はちょっと大変な
目にあっちゃう・・・!!

出直し神社に、袋物問屋・茜屋のお松が
物騒な願いを訴えた。
「一刻も早く相手の女を呪ってください」と。
婿に入った店主で夫の茂兵衛が、叔父から
相続した家に入り浸るようになり、女を
呼び入れているのではとお松が疑っているのだ。

さらにその家には大黒様のお化けが出るとの
噂が広がり、借り手がつかなくなっていた。

うしろ戸の婆は、お松に夫の浮気を
確かめるため、神社の手伝いをしている
おけいを連れて行くように言った。

そして、茂兵衛の手伝い人として、その家に
潜入したおけいは女の出入りを見張った。
しかし、何日過ぎても、女の出入りなどない。
茂兵衛はまじめに仕事をしている。
働きすぎではないかと疑ってしまうくらいだ。
そして、茂兵衛の夢枕には確かに大黒様が
立つ。そして、茂兵衛は肩こりがひどくなり
仕事が出来なくなってしまう・・・。
夢枕に立つ大黒様の謎とは・・・?

江戸は流行り風邪で大変なことになっていた。
イケメンで弱者の味方、人気の町医者・
諒伯先生の医院にはひっきりなしに患者が
やってくる。

諒伯先生は寝る間を惜しんで、患者のために
働いていた。
しかし、医院内でも風邪で倒れる者が続出。
少しでも手伝いになればと、おけいは今度は
諒伯先生の手伝いに行くことに・・・。

そこへ、大店の娘・おみつがやってきた。
最近は毎日やってきて先生を呼ぶ。
おみつは嘘つきという悪癖で、近所からも
家族からも見放されていた・・・。

名刀には目がない定町廻り同心・依田丑之助は、
刀の柄巻師から「珍しい刀を預かった見に来ないか?」と
誘われ店を訪れたが、柄巻師の具合が悪く
そのまま帰ってしまった。
その翌日、柄巻師が死んでいるのが見つかる。
さらに、あの嘘つきのおみつも何者かに殺される。

茂兵衛を苦しめた、大黒様の謎・・・。
おみつの嘘、柄巻師とおみつ殺害の謎。
解明された真相は、なんとも切なさがこみ上げる。

現代ででいうところの、承認欲求だったり、
名家の想像を絶するプレッシャーに負けそうに
なったり・・・。
人の弱さが事件を起こしてしまう。

おみつが嘘をつかなくてはならない
理由を誰かにわかってもらいたかったのか?
悪癖を治してほしくて、誰かに助けて
欲しかったのかな~。
そう思うと胸に迫る。

江戸っ子の人情話にミステリーの味付け。
とても面白い展開だった!

『妖しい刀 出直し神社たね銭貸し』
著者:櫻部由美子
出版社:角川春樹事務所(文庫)
価格:¥814(本体\740+税)