悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズ最新刊「殺戮の狂詩曲」

中山七里さんの数多くの作品の中で
一番好きなシリーズ。

弁護士・御子柴礼司シリーズ最新刊
「殺戮の狂詩曲」(講談社)読了。

少女を惨殺した過去を持つ、弁護士・御子柴礼司。
悪名高い弁護士で高額な弁護費用、
裁判に勝つためならどんなあくどい手も使う。
しかし、御子柴は少しずつ変化してゆく。

高級老人ホームで働く忍野は、入念な計画を
たて、ある夜実行に及んだ。
それは、この施設に入所している老人34人全員を
抹殺することだった。

しかし、9人を惨殺したところで、
戦闘不能にしたはずの介護職員に取り抑えられ、
現行犯逮捕された。

取調べで殺害動機を聞かれた忍野は、
「生産性のない上級国民。生きていたって
何の価値もない。消えてもらった方が
世のためだ。」と嘯き、反省の態度すら
見せない。

ニュースでは、「令和最悪の凶悪事件」と
報道され、ワイドショー他メディアを賑わせた。

その凶悪犯・忍野の弁護を名乗り出たのは、
悪評名高い、御子柴礼司だった。
御子柴の過去が公になり、依頼人が減っている
のに、こんなバケモノみたいな被告の
弁護などしたらさら依頼人が減ると心配する
事務員・洋子。
そして、顧問先のヤクザ事務所の山崎も
仕事を選べと言ってきた。

そんな雑音に社会正義で真向対決する御子柴。

御子柴は彼なりに忍野に裁判の厳しさ、遺族の
怨嗟の恐ろしさを説くが、取り調べで供述した
ことを繰り返す。
本当に忍野が自分で考えたことだろうかと
疑い始める。

この裁判、御子柴が勝っても負けても
ダメージは大きい。損害は図りしれない。

それなのに、どこに勝機があるのか?
最後の最後までわらない。
ところが、そんなタイミングでとんでもない
どんでん返しがぶち込まれている!
あまりの衝撃に言葉を失う!

またしても、御子柴の激烈な反撃に
やられてしまう。
御子柴って実在するのではないかと
疑ってしまうくらい、強烈な個性を
放っている。

実際にあった事件を彷彿とさせる物語。
ここまで描いた著者の勇気に脱帽だ。

『殺戮の狂詩曲』
著者:中山七里
出版社:講談社
価格:¥1,760(¥1,600+税)