解決篇が袋とじ!?話題のポケミス「死と奇術師」

トム・ミードのデビュー作「死と奇術師」
(早川書房)読了!
解決篇は、なんと!ポケミス史上初の
袋とじ!ワクワクします!

1936年、ロンドン。
舞台女優のデラは、秘密を抱えていた。
彼女はある人物へ相談しようとしていた。

それは、高名な心理学者・リーズ博士だった。
デラは彼の患者Bだ。

その日、リーズ博士は夜遅くに来る客を待っていた。
使用人のミセス・ターナーにも来客の話は通しておいた。
雨の中、その客はやってきた。

リーズ博士から案内は無用と言われていたので、
部屋の説明だけして、ミセス・ターナーは仕事に戻った。

その時、女優のデラが突然やってきた。
ミセス・ターナーは博士は来客中だと言って
デラを追い返そうとしたが、デラは無理やり
家の中に入り、博士の部屋まで押しかけようとした。

博士に呼びかけたが、まったく反応がない。
何か変だと感じたミセス・ターナーとデラは
裏技を使って博士の部屋の鍵を開けると、
喉を掻き切られ、息絶えた博士を発見した。

博士の書斎は密室状態、さらに凶器も見つからず、
死の直前に博士を訪れた謎の男の正体も
不明だった。
外に出るにはミセス・ターナーたちが
いる居間を通らなければならない。
しかし男が通った気配はなかった。
犯人はどうやって逃げたのか?

不可解な事件、いわゆる不可能犯罪に頭を
悩ませた、ジョージ・フリンと警部補は、
元奇術師の私立探偵・ジョセフ・スペクターに
捜査協力を依頼するが・・・。

多重に仕掛けられた不可能犯罪、
練り練られた密室トリック、さらに多数の
妖しい容疑者たち・・・。
登場人物たちの精神病理的な部分にも斬り込んでいて、
興味深い。

古典ミステリへのリスペクトが半端なく、
時代背景や舞台設定など、カーやクイーンの
世界観が好きなミステリファンにはたまらない作品。
おまけに、解決篇が袋とじという読者挑戦もので、
推理する楽しさも味わえる!!
デビュー作とは思えない、完成度の高いミステリ作品。

『死と奇術師』
著者:トム・ミード/中山宥訳
出版社:早川書房(ポケットミステリ)
価格:¥1,980(¥1,800+税)