法廷小説の傑作『最後の証人』シリーズ新作『検事の本懐』

日曜日にいっき読みしました。凄く面白かったです。
柚月裕子著『最後の証人』シリーズ(宝島社)最新作、『検事の本懐』(宝島社)です。
『検事の本懐』は、『最後の証人』で、しょぼくれてはいるが事件の本質を見つめ真実を暴き出し、鮮烈な登場を果たした、ヤメ検弁護士・佐方貞人の若き日の新人検事時代を描いた、5編の連作短編集です。

髪はクシャクシャ、スーツはよれよれ・・・・。でも事件に対峙するときは眼光鋭い検事に豹変。無愛想で照れ屋?!の若き検事・佐方貞人があらゆる視点で描かれている。

17件の連続放火魔をいまだ逮捕できない、米崎署の署長・南場は、同期の出世頭・佐野から集中的に苛められていた。
しかし南場はとうとう放火魔を特定する。微罪で逮捕した容疑者の家宅捜査令状をとるために直に地検に赴く南場署長。内々に担当検事に頼むためだ。そうしたのは佐野に横やりを入れられるからだ。
南場はそこで、佐方という若い検事を紹介される。果たして、南場の思い通りになるのか・・?男の嫉妬が連続放火事件の真相を歪める・・・。佐方は改めて連続放火事件を見直す。「樹を見る」。

小さな窃盗事件で刑務所に出たり入った入りしている初老の男。今回も時計を万引きして送検された。またかと担当検事はため息をつく。
その件は佐方に回された。しかし佐方は、男を不起訴にすると言う。何故か・・・。「罪を押す」。

高校の同級生の女性から14年ぶりに連絡を受けた、佐方。ある男から強請られている・・・。助けてほしいと頼まれる。佐方は彼女に恩を返すため、その男と対決することに・・・。佐方の少年時代が描かれいている、「恩を返す」。

ある大きな疑獄事件が発覚。東京地検特捜部に応援要請された、山口地検の加東事務官は、そこで米崎地検から応援にきた、佐方検事とコンビを組んで参考人取り調べをやることに。
しかし特捜部の行き過ぎた捜査に、加藤はだんだんとついてゆけなくなる。
コンビを組んだ佐方検事はどう出るのか?!検事としての仕事を全うしよとする、佐方検事と加東事務官を描く、「拳を握る」。

横領罪で投獄された、佐方貞人の父、佐方陽世。検事として、また恩ある人への最大の恩返しをした、父・陽世の生き方を描く。「本懐を知る」。

5編とも、骨太の人間ドラマと巧緻で秀逸なミステリー的要素が見事に融合した連作。あるべき検事の姿を描き、事件の真相に迫る、リーガル小説です。
とにかくかっこいいんです!佐方検事が!!

『検事の本懐』
著者:柚月裕子
出版社:宝島社
価格:¥657(税別)