今年の‘NO1’にしたいくらいに面白い時代小説『謀る理兵衛』

今日はちょっとミステリーをお休みして、先日読んだ時代小説があまりに面白かったので、紹介したいと思います。
タイトルは『謀る(たばかる)理兵衛』松本薫著(ポプラ社)。著者は米子出身の方です。
この作品は、元禄時代に日本一の豪商と謳われた「淀屋」(淀屋橋で有名)をモデルに描かれた、痛快時代小説。
実はこの「淀屋」さんは、われらが山陰の鳥取県倉吉市にも縁があるのです。
淀屋の五代目辰五郎は、17歳で家督を継ぎましたが、その商勢の凄さと贅沢な暮らしぶりで幕府に目をつけられ、財産没収の処分を受けました。
この「謀る理兵衛」は、その「淀屋」がなぜ幕府からそのような仕置きを受けたのかを虚実織り交ぜながらドラマティックに描かれています。
私は、倉吉にゆかりのあることもこの小説を読んで初めて知ったのです。

小説では「淀屋」は「丹生屋(にぶや)」という屋号で登場します。

元禄時代の大坂。丹生屋四代目・重兵衛は、放蕩の限りを尽くしていた。
しかし、重兵衛の散財には理由があった。
当時、莫大な資産から数多の大名に大金を融通し、隠然たる力を持つに至った丹生屋を疎ましく思っていた幕府は、丹生屋を取つぶしその血を根絶やしにするため、様々な策を弄していたのだ。
重兵衛は、丹生屋を守るためにある壮大な計画を立てていた。
やがて、五代目を継いだ理兵衛は、父の計画を実行すべく幕府に対し、一世一代の大勝負に出る。
そんな大坂の丹生屋を陰で支えたのが、倉吉の丹生屋だった。
倉吉では普通の米問屋として商売をする一方、幕府に感づかれないように秘かに稲こき千歯を作り、全国に広めつつあったのだ・・・・。

幕府から命を狙われる重兵衛の家族を守るために、丹生屋に使える忍集団が犠牲になったり、理兵衛の大切な人が命の危機にさらされたり、幕府とはまさに命がけの死闘を繰り広げていたのだ。大坂商人の意地をかけ、幕府を欺く重兵衛・理兵衛親子・・・。
そして、その子孫たちが丹生屋を復興させる・・・・。やがて幕末へ・・・・。
丹生屋と幕府の勝負!勝利の女神はどちらに微笑んだのか・・?

幕府との壮絶な闘いに疲れ果てる理兵衛。しかし彼は決して挫けない。丹生屋のために命を散らした者たちの想いがあるからだ・・・・。

丹生屋を思う人たちの気持ちが熱く、読んでいて何度も涙ぐんでしまいました。
心が震える感涙の時代小説!

また、歴史上の数々の秘話がとても興味深いです!
はまさき的に、今年のNO1にしたい、時代小説です。

『謀る理兵衛』
著者:松本薫
出版社:ポプラ社
価格:¥1,700(税別)