ドラマ「ハンチョウ」の原作・安積班シリーズ文庫最新刊『烈日』

ドラマ「ハンチョウ」の原作、大人気警察小説シリーズ「東京湾臨海署安積班」の文庫最新刊「烈日」が発売になりました。今回は短編集です。
このシリーズ、長編はもちろん面白いのですが、短編集は長編とはまた違う味があり、読めば読むほど面白さが増す?そんな本なのです。

このシリーズがドラマ化されたとき、原作には女性刑事は登場していませんでした。
しかし刑事もののドラマというと必ず女性刑事が登場します。
だからテレビドラマ用に女性刑事のキャラクターを作ったんだなと思いました。
しかし、ドラマが進むにつれ、女性刑事の活躍が目立ち面白いと思って観ていました。
そしたら、今野先生はちゃっかり?(先生ごめんなさい。)原作にもその女性刑事を登場させちゃったのが、今回の「烈日」なんです。
最初の短編「新顔」は、まさにその女性刑事・水野が新たに安積班に配属されたところから始まるのです。
読んでいるとドラマの女優さんの顔がチラチラと・・。まっいいか。

安積班に新しいメンバーが配属されるらしいとの情報が!班の面々は当然男性だと思っていたが、現れたのがスラっとした、美人刑事で誰もが驚く。その女性刑事・水野は須田と同期らしい。そして元鑑識ということで、品川埠頭で発見された女性の変死事件を的確に推理する。
美人で優秀な女性刑事の登場に戸惑う安積班の面々がちょっと面白い。
『新顔』のほかに7編の短編が収録されている。
どれも面白いが、印象深かったのは表題作『烈日』。
牡蠣にあたったらしい、黒木と桜井が寝込んでしまう中、安積たちは女性が変死した現場に赴く。自殺と思われたが、須田と村雨の珍しいコンビの捜査で他殺の線が出てくる。
捜査本部が自殺説に流れる中、安積班は他殺の線で捜査。
炎天下、さらにメンバーが二人も欠けた中、安積・須田・村雨・水野は、所轄の意地をかけ真相究明に奔走する。そのとき、水野に対し村雨が心の中でつぶやいた言葉が胸に沁みる。
そしてもう一作品はラストの『厳冬』。
安積がとうとう風邪で倒れそうになる。それでも火災事件の捜査に出かけようとして、安積班の面々に疎んじられてしまう。安積がいなくても、村雨中心にやっていけると思うのだが・・・。安積が仲間の大切さを再認識させられる1編。

安積班の一年が連作短編の形で描かれる。
水野という新たなメンバーも加わり、よりいっそうチームの結束が固まる。
安積が、チームになかなかなじめずに悩む水野にかけた言葉がものすごく印象に残った。

安積班シリーズを読んでいると自分もメンバーの一人になったような錯覚に陥る。
ちょっと落ち込んだときこのシリーズを読む。そうするとメンバーに励まされているような気になり復活!ありがたいシリーズなのです。

『烈日 東京湾臨海署安積班』
著者: 今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥629(税別)