母性愛あふれる北欧ミステリーに感動!『スーツケースの中の少年』

最近、すっかり「北欧ミステリー」にはまっています。
今まで読んだ作品はほとんどが警察小説でしたが、「スーツケースの中の少年」は、
普通の女性たちが活躍するミステリー作品。
子どもを思う母たちの想いが伝わり、心に響きます。

旧友から頼まれて、コインロッカーからスーツケースを取り出した看護師のニーナは、
あまりの重さに何が入っているのか気になり、人通りが途絶えた場所で開けてみた。
なんと!そこに入っていたのは生きている裸の少年だった。
ニーナは衝撃でパニック!しかし冷静になり自分のすべきこと考えた矢先、
殺気立った大男が自分を見ているのに気づく。
スーツケースが入っていたロッカーを蹴り上げた男を見たニーナは、
本能で逃げなければ!と身体が動き、少年を抱えたまま車に乗り込んだ。
一方、シギータは頭痛で目覚める。
気が付くと今まで何をしていたのか、自分はどこにいるのか?記憶がいっさいない。
さらにわが子、ミカスがいなくなっていることに気が付きパニックになる。
別居中の夫が自分に断りなく連れて行ったのか?シギータはまず夫へ連絡。
しかし夫は息子の行方など知らないと言い張った。
そしてシギータは一人最愛のわが子を探し始める。
また一方、リトアニア人からロッカーに約束のものが入っていないと連絡を受けた、
大富豪のヤンは、自ら立てた計画の狂いに不安をかきたてられた・・・。
それぞれの思惑が蠢く中、スーツケースの中の少年の運命は・・・?

衝撃の幕開けから、手に汗握る逃走劇。
そして殺人事件。苦難がニーナと少年を襲う。このまま警察に行けば少年がどうなるのか・・・?
ニーナは逃走しながら少年の母親を探すことに。

ニーナの責任感の強さが時に頼もしく、時にイライラ。
弱々しいシギータがわが子を取り戻すために、連れ去った者たちの足跡を
たどり必死に探す様子は胸に迫った。
‘少年はなぜスーツケースに入れられていたのか’という謎を軸に物語が展開する。
その謎解きも非常に面白い。しかしこの物語の最大の魅力は、
普通の女性たちが子供を守るために危険を顧みず孤軍奮闘するところ。
母性愛にあふれたハイスピードな展開のミステリー。いっき読みでした!

『スーツケースの中の少年』
著者:レナ・コバブール/アニタ・フリース
出版社:講談社
価格:¥1,000(税別)