今、海外ミステリーの中で人気が急上昇している‘北欧ミステリー’。
その先駆けとなったシリーズがこの『刑事マルティン・ベック』シリーズです。
社会活動家でもあったマイ・シューヴァルとペール・ヴァ―ルー夫妻が、
1960年代後半に国家への批判の意味を込めて描いた、北欧初の本格的な警察ミステリー小説です。
以前、角川文庫で、シリーズ10作品が英訳から日本語に翻訳されて出版されていましたが、
この度、スウエーデン語から直接日本語に翻訳され新訳と言う形で発売されました。
訳者は、非常に読み易く日本語に翻訳してくださる、柳沢由実子さんです。
今人気のある北欧のミステリーは、ほぼこの柳沢さんの翻訳で読めます。
このシリーズがスウエーデンで発売されたとき、‘マルティン・ベック’は英雄視されたほど
スウエーデンの人々の心を掴んだようです。
はまさき、以前の訳でシリーズ全10巻を2回も繰り返して読みました。
ストックホルム警視庁の殺人課に所属する、主任刑事マルティン・ベックとその仲間たちが、
当時のスウェーデンが抱える社会的背景から起こる不可解な事件を地道な捜査で解決してゆく。
チームで事件を解決してゆく、警察ミステリー小説の面白さが際立っている。
複雑な社会的背景の中で、職務に忠実な刑事たちが事件を暴いていく過程はスカッとする。
また、魅力的な登場人物がこのシリーズをさらに面白くしている。
読み進めていくうちに、だんだんと登場人物たちに共感していきます。
平凡だが優秀な刑事たちの活躍が私たちの心をとらえて離しません。
またこのシリーズは、現在の日本の警察小説作家に多大な影響を与えました。
特に佐々木譲先生の「北海道警」シリーズは、この「マルティン・ベック」シリーズに
影響を受けて創作されたそうです。
佐々木先生の描く道警シリーズ第1作「笑う警官」はこのシリーズへのオマージュ(?)
今野敏先生はこのシリーズはお手本と言っておられます。
本書「笑う警官」のストーリーは、反米デモの夜、ストックホルムの市バスで
八人が銃殺されるという大量殺人事件が発生した。
被害者の中には、右手に拳銃を握りしめた殺人捜査課の刑事がいたのだ!
警察本庁殺人捜査課主任捜査官マルティン・ベックは、後輩の死に衝撃を受ける。
若き刑事はなぜバスに乗っていたのか?デスクに残された写真は何を意味するのか?
唯一の生き証人は、謎の言葉を残し亡くなった。捜査官による被害者一人一人をめぐる、
地道な聞き込み捜査が始まる―。
アメリカ探偵作家クラブ賞受賞の北欧ミステリーの最高傑作が新訳で登場!
『笑う警官 刑事マルティン・ベック』
著者:マイ・シューヴァル/ペール・ヴァ―ルー 訳:柳沢由実子
出版社:角川書店
価格:¥819(税別)