骨太の警察小説『刑事の骨』

ずっと以前に永瀬さんの「退職刑事」を読み、
心に残っていました。
そして今回は「刑事の骨」というタイトルに惹かれ、読んでみました。
冒頭から、ハラハラドキドキの圧迫感。凄いです。
冒頭とクライマックスに大きな山があり、読み応えはたっぷりです。

刑事の骨

1993年、連続幼児殺人事件が発生。
捜査本部で指揮を執っている不破は、ノンキャリで、
出世した辣腕刑事だ。
3人目の被害者について、犯人から直接捜査本部に
電話があり、犯人との交渉に指揮官である不破が当たった。
しかし、不破は犯人との交渉で大失態を犯してしまう。
同じとき、不破の同期で、万年ハコバンの田村は警邏中だった。
雨の中、高校生二人連れに職質をかけた後、近くの電話ボックスで
妙な男を発見。田村はその男に職質をかけた。
だが、その男は田村を見るなり電話を放り、脱兎のごとく
駆けだした。田村が職質をかけた男こそ、不破と電話で話していた
連続幼児殺人事件の真犯人だったのだ。
電話口で不破からその旨を聴き、「ぶち殺せ~」と命令された
田村は、射撃の腕前だけは評価されていたので、逃げる
犯人を追いつめた。しかし、射撃を手順通りに踏んだため
真犯人を取り逃がしてしまったのだ。
その後、4人目の犠牲者が出てしまい、警察の信頼は失墜。
不破の命令はそのまま録音されていた上に、犯人との交渉が
酷い有様だったため、不破は捜査の指揮権をはく奪され、
窓際に追いやられてしまう。さらに田村も犯人を取り逃がしたと
して、刑事になるチャンスもすべて失い、ハコバンで通すことになった。
その後、犯人の行方は杳として知れず、17年の歳月が過ぎ去った。
ここが、冒頭の山場。すごい迫力と緊迫感で、忘れられないシーン。

後半は、田村が不破の元を訪ね、その夜に変死を遂げるところから
始まる。田村が何のために自分に会いに来たのか・・・?
時効が成立してしまったが、17年前に不破と田村の失態で
取り逃がした、連続幼児殺人事件の真犯人を追いつめようと
していたと推察。田村の無念を晴らすために、不破は刑事としての
矜持を取り戻し、真犯人をつき止めようと奔走する・・・。

退職した同期の元警察官が、自分の人生を取り戻すために
真相を暴こうとする。その執念と、クライマックスの
激闘がしびれる!!
大興奮の警察小説です。面白かったです。
警察小説好きでも、まだ読んでいない人にぜひ読んで欲しい1冊です。

『刑事の骨』
著者:永瀬隼介
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥750(税別)