第60回江戸川乱歩賞受賞作「闇に香る嘘」が凄い!

毎年楽しみなのが、江戸川乱歩賞受賞作。
今年は60回の記念の年。
この記念の年にふさわしい受賞作ということです。
選考委員満場一致!
著者の下村さんは、2006年から毎年乱歩賞への
応募を続けられ、今年9回目の応募で5回目の
最終選考まで残り受賞!
選考委員の有栖川有栖さんが「絶対評価A」と
絶賛されたそうです。

闇に香る嘘

主人公・村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、
検査の結果、適合しないとわかった。
頼みの綱は実家で母と二人で暮らす兄・竜彦。
和久は兄に移植を頼むため実家へ向かう。
だが、兄は適合検査を頑なに拒んだ。
和久は兄のその態度に違和感を覚える。
中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、
和久はすでに失明していたため、兄の顔を確認できなかった。
27年間、兄だと信じていた男は偽物ではないのか?
疑惑が次々と和久を襲い、居てもたってもいられなく
なった和久は、眼が不自由だというハンデを抱えながら、
兄の正体に迫るべく、真相を追う!

全盲の男性が主人公と言う、かつてない設定に驚いた!
主人公の視点で物語は進むので、眼が見えないという
世界を読んでいて体験することなる。
たとえば、二人きりで話しているつもりなのに、
第3者の息遣いを感じ緊張する場面など、こちらも
引き込まれてしまい、ハッとしてしまう。
随所にそういう緊張を強いられる場面があり、
ハラハラさせられるのだが、その描写が非常に
上手い!
かって中国残留孤児だった人物ら関係者に
話を聴き、次第に兄の正体に迫る。
そしてその真相がわかったとき、
違和感がすっと消える。
完璧な叙述トリックを駆使した、サスペンスミステリーだ!

乱歩賞受賞作では久しぶりにこのような作品を
読んだ。
ミステリー小説の登竜門である乱歩賞!
60年の節目にふさわしい受賞作だと思う。

第2作目を早く読みたくなってきた!

『闇に香る嘘』
著者:下村敦史
出版社:講談社
価格:¥1,550(税別)