格調高い医学ミステリー「開かせていただき光栄です」

皆川博子さんの「開かせていただき光栄です」(早川書房)
を読みました。
2012年版「このミステリーがすごい!」国内3位!
第12回本格ミステリー大賞受賞
第16回日本ミステリー文学賞受賞 など
輝かしい記録を樹立した、傑作ミステリーです。

日本人でありながら、18世紀のイギリス・ロンドンを舞台に
登場人物もすべてイギリス人という設定。
海外本格ミステリーにまさるとも劣らない傑作ミステリー。

開かせていただき

18世紀ロンドンが舞台。
死体解剖専門の外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。
四肢を切断された少年と顔を潰された男。
戸惑うダニエルと弟子たちに、盲目の治安判事・フィールディングが
捜査協力を要請する。
捜査過程で遺体の少年は、夢を抱いて田舎から出てきた詩人志望の
ネイサン・カレンではないかと思われた。
そして、フィールディングは、背後に詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる
様々な思惑があったことを知る・・・。
さらに、ダニエルの弟子のエドモンドとナイジェルは、ネイサンと交流が
あったことを打ち明ける・・・。
フィールディングは、二人に疑惑の目を向ける。
解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。
そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。

産業革命さなかの街の喧騒の様子が詳細に描かれ物語に引き込まれていく。
世間知らずで人の好いダニエル医師。彼に助けられた、エドとナイジェル。
そしてほかの弟子たち。ダニエルを思い、弟子たちが奮闘する姿が
切ない・・・。
その中で起こる連続殺人事件に巻き込まれていいく弟子たち。
早いうちから犯人として名乗りを上げた者たち。
しかし、フィールディングは納得しつつも謎多き点を追求する。
いったい真実はどこのあるのか?殺人か?自殺か?事故か?
すべては偽装なのか?様々に入り乱れる憶測・・・
しかし、クライマックスの衝撃と感動は半端ない!

文庫には前日譚を描いた短篇を併録。
表紙の美しさにもノックアウトされます。

『開かせていただき光栄です』
著者:皆川博子
出版社:早川書房
価格:¥1,800(税別)
   文庫版:¥900(税別)