心霊探偵八雲シリーズ番外編の最新刊「祈り柩」

心霊探偵八雲シリーズの最新刊は「ANOTHER FILES 祈りの柩」。
このANOTHER FILESのシリーズは本編のとは違う味わいがある。

今回は後藤刑事の苦悩が描かれて、違う一面が
見られて嬉しい。

八雲祈りの柩

八雲のもとに、また幽霊騒動の相談が持ち込まれた。
町の外れにある泉で、水面から這い出てきた幽霊に遭遇して以来、
友人の女の子が謎の歌を歌い続けているというのだ。
早速、八雲と晴香はその女の子が入院している病院へ。
そこで八雲は彼女に霊が憑依していると判断するが、
憑依している霊からは何も感じ取ることが出来なかった。

一方、後藤刑事は警察関係者の孫が、悪霊から殺人予告を受けているという
案件を調べる中、ある人物と運命の邂逅を果たす。
その人物とはかつて後藤の相棒だった元刑事・桐野だった。
そしてそれをきっかけに明らかになる封印された後藤の過去。
さらに、教会で起こる密室殺人。
後藤の過去と事件の真相は、人々に何をもたらすのか!?
八雲に持ち込まれた幽霊騒動は、
語られることのなかった後藤刑事の過去へとつながっていく!

この、ANOTHER FILESは番外編のシリーズ。
前作は、石井刑事の物語がメインだった。
今回は後藤刑事の物語。
本編では誰に対しても怒鳴る!八雲にはバカにされる
ダメダメな暴力刑事の印象が強かったが、
この物語では、元相棒だった桐野との再会で
後藤の封印された過去が明らかになる。
そしてそれは後藤にあらゆる感情の変化をもたらすのだ。
その過程が非常に丁寧に描かれていて、後藤刑事ファンには
たまらない1冊と言える。

また、このシリーズでは脇役に徹する、八雲と晴香。
出会って1年くらいの期間が描かれているが、すでに
八雲が勝手に仮住まいにしている映画研究会の部屋で
安心してくつろぐ晴香の姿が微笑ましい。
さらに、いつもだったら霊の訴えを敏感に感じ取る八雲だが、
今回は霊との交流もままならない八雲の姿が描かれて
ストーリーも複雑。そんな謎解きも楽しめる。

八雲と晴香、後藤と石井、いつものシチュエーションも
読めば何となくホッとする!大好きな八雲ファミリーです。

『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES 祈りの柩』
著者:神永学
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥640(税別)