ファンタジーかミステリーか?「烏に単は似合わない」

今井書店で行っている「読書交歓会」で参加者のお一人が
紹介されたファンタジー小説。「烏に単は似合わない」阿部智里著。
しかし、ファンタジーと思って読み進めると意外な展開に驚くと紹介され、
気になっていたのをやっと読みました。

確かに!!凄く面白い!
さらにこの作品、弱冠20歳の女子大学生が描き、第19回松本清張賞を
受賞した作品なのです。それも凄い・・・。

烏に単衣

人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」。
烏が、時と場所また、位に応じて人型と鳥型を使い分けて生活している。
貴族は大衆の前で決して鳥型には変形しない。
八咫烏の世界を舞台に、緻密な設定を行い違和感のないファンタジーの
世界観を作り上げた。

その「山内」では、世継ぎである「若宮」の后選びが始まった。
朝廷で激しく権力を争う、大貴族から4人の后候補が使わされた。
南家からは浜木綿。西家からは真赭の薄(ますほのすすき)。
東家からはあせび。北家からは白珠(しらたま)。
春夏秋冬を司るかのように、それぞれに美しい姫君たちが
后の座をかけて華麗に競い合う。
だが、彼女たちが住まう後宮で不可解な事件が次々と起こる・・・。

読み始めると、緻密に設定された異世界ファンタジーで
4人の姫たちが「若宮」を待つ日常が描かれる。
時に争い時にお互いを思いやる・・若宮とのラブストーリーを
中心に進むのかと思っていたら、全く別のストーリーに
誘われる。
后の座をめぐり、張り巡らされた陰謀と罠・・・。
そして、女性たちの人間関係、微妙な心理描写など
ただの異世界ファンタジーでは終わらない。
完璧なる人物設計で描き分けた、4人の姫君たち。
いつの時代でも変わらない女性の「本質」を見事なまでに
描き切っていて凄い!

優れたファンタジー小説であり、極上のミステリー小説でもある傑作!

『烏に単は似合わない』
著者:阿部智里
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥670(税別)