杉村三郎シリーズ最新刊『昨日がなければ明日もない』面白過ぎる!

宮部みゆきさんの「昨日がなければ明日もない」を読みました。
「誰か」「名もなき毒」「ペテロの葬列」「希望荘」と続く
杉村三郎シリーズ第5弾の最新作です。
何年か前に小泉孝太郎さん主演でドラマ化された作品。

巨大コンツエルン会長の娘婿・杉村三郎は、
劇的に人生が変わり、探偵事務所を開くことに。

この作品は、杉村が探偵になってすぐに転がりこんで
きた事件を描いた。
「ちょっと困った女たちVS探偵・杉村三郎」。
読み応えたっぷりの中編3作品が収められている。

嫁いだ娘と連絡が取れなくなり杉村に相談してきた初老の婦人。
調べてみると、とんでもなく嫌な事件に繋がってゆく。

杉村が借りている事務所兼住居の大家さん家族につきあって、
結婚式に出席するとそこで信じられない事件が勃発・・・。

大家さんの息子一号のお嫁さんのママ友に、
身勝手なことばり言う女性がいる。
その女性が杉村に困った相談をしてきた。
一号夫人から絶対に相談を受けるなと止めらていたが、
結局話を聞くはめになってしまった・・・・。

ここに登場する「困った女性たち」は身勝手な女性ばかりだ。
自分の利益しか考えない。
責任転嫁ばかりをした末に、次々と悲劇の連鎖を起こす。
自分のやったことがどういうことになるのか
想像すらできない女性たちだ。

自覚のない「悪意」が不幸をまき散らす。
救いようのない女性たち。
そんな女性たちを著者は淡々と描きだす。
読んでいると背筋がす~っと冷たくなってゆくが、
探偵・杉村の優しさと温かさがこのあまりにも悲劇的な
展開の中で唯一の救いとなっている。

面白過ぎていっき読みしてしまった。

『昨日がなければ明日もない』
著者:宮部みゆき
出版社:文藝春秋
価格:¥1,650(税別)