乱歩賞作家・下村敦史氏の最新刊「生還者」

[昨年、第60回江戸川乱歩賞を受賞した、下村敦史さんの
受賞後第2作目「生還者」を読みました。
乱歩賞受賞後に続けて2作品を発表!
残念ながら、受賞後1作目の「叛徒」は未読です!
近々読もうと思います。

「生還者」は、冬山を舞台にした山岳ミステリーです。

乱歩賞受賞作「闇に香る嘘」は全盲の老人が主人公で
テーマは中国残留孤児。
「叛徒」は警察小説で通訳捜査官が主人公、家族を巡る贖罪がテーマ。
作品ごとに全く毛色の違う作品を発表される下村さん。
乱歩賞9回挑戦という経歴は、アイディアがたくさんあると
いうことで、次々と斬新なミステリーが発表できるんですね!凄いです。

生還者

世界第3位の標高を誇る、カンチェンジュンガ山で大規模な雪崩が発生した!
4年前に恋人を山で亡くした主人公・直志の兄は、喪失感から
登山が出来なくなっていた。だが、兄は突然この山に登り、
雪崩で命を落としたのだ。
兄と同じ山岳部出身の直志は、兄の遺品のザイルが何者かによって
切断されていたことに気づく!兄は事故死ではなく、
誰かに殺されたのかもしれない・・・?
直志が疑惑を抱いたころ、そのカンチェンジュンガ山から相次いで二人の男が
奇跡の生還を果たす!だが、彼らは全く逆の証言をする。
どちらが真実を語っているのか?
兄の死の真相を突き止めるために、直志はカンチェンジュンガ山に
登ることを決意する!

生還した二人の男の証言が全く食い違ったため、ニュースに発展!
直志は女性記者とともにその謎を探る。

兄に対する直志の微妙な心の動き、女性新聞記者、また疑惑の証言をした
男性の心の葛藤など、緻密な人間描写が活き物語が盛り上がってゆく!

さらにミステリの要ともいえる謎の仕掛けの上手さ!
そして謎の解明とその奥にある真実に驚愕する!
そう、表の真相とさらにその奥に隠れていた人間の本質が
現れた時、この作品の本当の面白さがわかる!

今年のこの夏の暑さ!耐えられない!
けれど、凍てつく冬山の描写がリアル!
さらに、雪崩の描写は圧巻!
暑さが吹っ飛ぶ作品です。

『生還者』
著者:下村敦史
出版社:講談社
価格:¥1,600(税別)